※自分に合ったマットレスを選ぶ手順(型→素材→個別商品)と値段、体質、好み別におすすめできるマットレスについてこちらのページ「マットレスのおすすめ11選|専門家が教える自分に合うものを絞り込む手順」で徹底解説しています。TPEだけでなくその他の素材から網羅的にマットレス選びを進めたい方は是非ご参考にどうぞ。 |
こんにちは、加賀照虎です。
日本では2020年頃から広がり始めたTPEマットレス。
新しい素材のため「どんな寝心地なんだろう?」と気になってはいないでしょうか。
正直、かなり独特な素材です。
種類 | イメージ | 体圧分散 | 反発弾性 | 横揺れ | 通気性 | お手入れ | ||
ノ ン コ イ ル | 高 反 発 ・ 高 弾 性 | 高反発ウレタン フォーム | ◯ | ◎ | ◯ | △ | ◯ | |
ラテックス | ◯ | ◎ | ◯ | △ | ◯ | |||
TPEポリマー | ◯ | ◎ | ◯ | ◎ | ◯ | |||
中 間 | 一般ウレタン フォーム | △ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | ||
ファイバー | × | ◯ | △ | ◎ | ◎ | |||
低 反 発 | 低反発ウレタン フォーム | ◎ | △ | ◎ | △ | △ | ||
繊維わた | ◯ | △ | ◎ | ◯ | ◯ | |||
詰 め 物 次 第 | ハイブリッド | – | – | – | – | – | ||
コ イ ル | ボンネルコイル | – | ◯ | △ | ◯ | △ | ||
ポケットコイル | – | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
実のところ、新しい物好きの私は協力工場にTPEマットレスのサンプルを送ってもらい、ここ数ヶ月いろいろな寝方を楽しんできました。
かなり味わいました。
ということで本日はその知見の共有として「TPEマットレスとは?特徴の比較とおすすめの選び方」について解説していきます。
Contents
1. TPE素材とは?
TPEとはThermoPlastic Elastomerの略語で、日本語では熱可塑性(ねつかそせい)エラストマーと呼びます。
熱で溶けて冷やすと固まる性質を持った、ゴムのような柔らかさと弾力性を持つプラスチックです。これを格子状に加工したものがマットレスのTPE素材として使われます。
とはいえ、マットレス素材としての名称が決まっているわけでなく、ハイパーエラスティックポリマー(高弾性ポリマー)などと呼ばれることもあります。
2. TPEマットレスの特徴
TPE素材の特徴を一言でまとめると、
- ラテックスのように柔らかさと弾力性がありながら抜群の通気性に優れるものの非常に重たいため選び方・使い方に難がある
と、言えます(下記、各マットレス素材の特徴)。
種類 | 特徴 |
高弾性ウレタン | 柔軟性がありフィット感が高いながらも反発弾性も高いので寝姿勢が崩れにくく、 寝返りがしやすい。通気性はそこそこ。高反発ウレタンよりやや重くやや高価。 |
ラテックス | 高弾性ウレタンと似ていてフィット・サポートのバランスが良い。 天然素材のためエコだが高価。密度が高くかなり重いがその分耐久性に優れる。 |
TPEポリマー | 上記2つよりはやや劣るものの体圧分散性と弾力性がそれぞれバランスよく高い。 通気性が圧倒的に高いため蒸れづらい。非常に重いのがやや難点。 |
高反発ウレタン | やや硬めでしっかりした寝心地。サポート性十分で寝姿勢が崩れにくい。 通気性は良くないのでパッドの併用必須。軽くて扱いやすい。安価。 |
高反発ファイバー | 硬めの寝心地。サポート性は十分。通気性抜群で洗えるため、ダニ・カビなどの 衛生面を気にする人にぴったり。高反発ウレタンよりはやや重く、値段が高め。 |
低反発ウレタン | 体圧分散性はピカイチで最高のフィット感だが反発弾性が低いので寝姿勢が崩れたり、 寝返りがしにくい。通気性はあまり良くない。表面に薄く使用するのに向いている。 |
ハイブリッド | 素材の組み合わせ次第で寝心地が変わるが、基本的には長所を引き立たせて 短所を抑える設計のため寝心地・使い勝手のバランスが良いものが多い。 |
ボンネルコイル | 頑丈な作りではあるが面で支える寝心地であることや、コイル同士が繋がっていて 横揺れしやすかったり、軋み音がしやすかったりなど欠点が多いので非推奨。 |
ポケットコイル | ノンコイル素材が受け止めた体をバネの力で柔軟にサポートする寝心地。 点で支える構造のため横揺れしにくく、軋み音も少ないのでコイルならポケット一択。 |
さらに、他の素材とは異なりTPE素材は高重量かつ高価なことから、マットレスの上層部に数cmしか使われることがありません。
これらの点を踏まえて、寝心地、通気性、重量などの点についてそれぞれ分かりやすく解説していきます。
2-1. 厚みで変わる寝心地
マットレスのTPE素材は、その厚みで硬さが変わります。
- 2~3cm:やや硬め
- 3~4cm:ふつう
- 4~5cm:やや柔らかめ
例えば、ウレタンフォームでは発泡時に物性(ニュートン値)で硬さが設定されたり、ラテックスフォームでは穴の空き具合で硬さを部分ごとに調整されたりしますが、それとはやや異なります。
2-2. 寝心地(体圧分散性と反発弾性)
TPE素材は体圧分散性と反発弾性のバランスがよく快適な寝心地です。
厚さにより若干変わるものの程よく体が沈み込みますし、高い弾力性により体をグッと押し返すので、圧迫を感じずになおかつ寝返りがしやすく理想的な寝心地です。
2-3. 最上級の通気性
TPE素材の最大の長所が、通気性の高さです。
高反発ファイバー素材と同じく空気をそのまま通すほどの通気性です。
さらに、高反発ファイバーは硬めの素材のため下層部での使用に向いているのに対して、TPE素材は柔らかさがあるため上層部での使用に向いています。そのため、新陳代謝の高い暑がりな人の使用に非常に向いています。
2-4. 横揺れはほぼなし
素材同士に横のつながりこそありますが柔らかさがあるため揺れが横に伝わることはほとんどありません。
2-5. お手入れ(重量)
TPE素材はかなり重たいです。
TPE素材のみで10cm厚のマットレスを作るとなると、その重量は推計で35kg前後になります。
敷寝具種類 | イメージ | 厚さ | 重量 | |
敷布団 | 木綿 | 10cm | 6kg | |
ノン コイル | 高反発ウレタン | 7kg | ||
高反発ファイバー | 10kg | |||
高弾性ウレタン | 10kg | |||
TPEポリマー | 35kg | |||
ラテックス | 15kg | |||
低反発ウレタン | 11kg | |||
ハイブリッド | – | |||
コイル | ボンネルコイル | 20cm (仮定) | 18kg | |
ポケットコイル | 20kg |
もちろん、このようなマットレスは使いづらいですし、素材の特徴を活かしきることができません。
そのため、TPE素材はマットレスの表面でしか使われないのです。
国内外のブランドを見ると下記のような構造になっています。
ブランド | 上層 | 下層 | 重量 | リンク |
羊のいらない マットレス | TPE3cm | 高密度ファイバー4cm | 17kg | 商品ページ |
G-Oneグリッド マットレス | TPE3cm | ウレタンフォーム3cm | 17kg | 商品ページ |
Purple mattress | TPE約5cm | ウレタンフォーム約19cm | 約32kg | 商品ページ |
とはいえ、それでも重いです。
一般的に、厚さ7cmの薄型マットレスは6kg前後で、厚さ24cmのノンコイルマットレスが20kg弱くらいであることを比較して考えると、かなり重たいことが分かるかと思います。
3. TPEマットレスのおすすめの選び方
「TPEマットレスを買ってみようかな」と考えられている方は、下記のポイントを避けるようにしましょう。
3-1. 床置き仕様のものは扱いが大変なため避けること
2章でお話ししたようにTPE素材は重いです。
7cm厚の薄型マットレスのシングルサイズが17kg前後にもなるのは絶望的な使い勝手の悪さです。私が持っているサンプルはダブルサイズ(135cm幅)のもので24kgほどしますが、開封と設置のために少し運んだだけでかなり腰に響きました。床に置いて使うとなると起床後に押し入れにしまったり、部屋の隅に動かしたりするかと思いますが、このような作業を毎日するには重すぎます。
そのため、TPE素材のマットレスを購入するなら厚みのあるマットレスタイプのものをベッドの上で使うか、既存のマットレスの上に薄型TPEマットレスを重ねるような使い方をすることをおすすめします。
3-2. 側生地が薄いものはグリット感があるため気をつけること
TPE素材は縦と横の線が交差する格子状(グリット)の構造になっていますが、良くも悪くもこの格子が大きいため、側生地が薄いと格子の感覚(グリット感)を背中で感じやすくなります。
もちろん、このグリット感が気になるかならないかは人によりますが、事前に知っておくに越したことはないでしょう。側生地はジャカード織のようなもので300~400g/m2以上の厚さがあるものを目安にしていただけると良いかと思います。
3-3. 側生地がポリエステル100%のものはやはり蒸れやすいので気をつけること
いかにTPE素材の通気性が良いとは言っても、体のもっとも近くにある側生地の素材が悪ければ蒸れてしまいます。
そのため、吸水性・吸湿性のある素材が使用されている側生地かどうか確認した上でTPEマットレス選びをするようにしましょう。
素材 | イメージ | 柔らかさ | 滑らかさ | 吸湿性 | 放湿性 | 耐久性 | 洗濯性 | ||
天 然 繊 維 | 植 物 性 | 綿 (コットン) | ◯ | ◯ | ◎ | △ | ◯ | ◯ | |
麻 (リネン) | △ | △ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | |||
動 物 性 | 絹 (シルク) | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | △ | △ | ||
羊毛 (ウール) | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ | △ | △ | |||
化 学 繊 維 | 再 生 | レーヨン | ◎ | ◯ | ◎ | ◎ | △ | △ | |
合 成 | ポリエステル | △ | ◯ | △ | – | ◯ | ◎ |
最後に
TPEマットレスへの理解を深める参考になっていればと思います。
なお、マットレスにはその他の素材のものももちろんあり、そのような選択肢も網羅的に検討していただけると、よりあなたに合ったものを選ぶことができます。下記のページでマットレスの選び方について網羅的に解説していますので是非あわせてご覧になってください。あなたに合ったものを選ぶのにお役立ていただけるはずです。
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