床で寝るのは身体に良い?睡眠の質は?メリット・デメリットを解説

  更新日:

床で寝るのは身体に良い?睡眠の質は?メリット・デメリットを解説

こんにちは、加賀照虎です。

「マットレスって本当に必要なの?」
「原始人は地面に直接寝ていたって聞くし、実際どうなんでしょうか?」

こういった質問をよくいただきます。

確かに、過去の環境から考えると、マットレスは現代の贅沢品のように思えるかもしれません。

そこで今回は、「マットレスなしで床に寝ると睡眠の質にどう影響するのか?」について研究データをもとに詳しくお伝えします。

※自分に合ったマットレスを選ぶ手順(型→素材→個別商品)と値段別におすすめできるマットレスについてこちらのページ「【2025年最新】快眠マットレスおすすめ17選&専門家が選ぶおすすめと失敗しないポイント」で徹底解説しています。良いマットレスを選ぶための情報収集をしているなら是非ご参考にしてください。

0. 床で寝ると気持ちいい?床寝健康法は本当に体に良いのか

「床で寝ると気持ちいい」「固い床のほうが体が整う」といった“床寝健康法”は一時的な爽快感がある一方、科学的にはメリットとリスクが混在しています。床は体圧をほとんど吸収しないため、背中・肩甲骨・お尻・かかとなどの突出部に負荷が集中しやすく、長期間続けると筋肉の緊張や血流の低下につながります。

ただし、

  • 猫背が気になる人
  • 一時的に背すじを伸ばしたい人
  • 柔らかすぎるソファで寝ている人

などの場合、1~2日の床寝は姿勢リセットとして一定の効果があることも事実です。

つまり、床寝=健康に良いのではなく、“短期ならメリット・長期ならデメリットが大きい”というのが最新の睡眠科学に近い結論です。

1. 高級マットレスvs床、睡眠の質を比べた実験

興味深い実験があります。

マットレスとコンクリート床でそれぞれ寝比べて、睡眠の質にどのような違いが出るかを調べた実験が非公式ながらも存在するのです。

この研究はウィリアム・デメント教授(睡眠界の世界的権威。1970年にスタンフォード大学に世界初の睡眠障害センターを設立した人)により行われました。

sleep-watcher-by-william-c-dement
>>デメント教授の本。研究前後のエピソードや時代背景を知れるおすすめの一冊です。

アメリカのあるマットレスメーカーから依頼を受けて、そのメーカーが作っている(1960年代当時の)ハイテク高級マットレスと一般的なマットレスで睡眠の質にどのような違いが現れるかを調べることとなったとのこと。

しかし、デメント教授はマットレス同士を比べても結果に大きな差がでないのではと思い、コンクリートの上で寝る条件も加えて実験を行ったそうです。

  • ハイテク高級マットレス
  • 普通のマットレス
  • コンクリート床

そして、この3つの比較実験がどうなったかと言うと、3つとも睡眠の質(睡眠の長さと持続性)においてまったく差がなかったと報告されています。

高級マットレスとコンクリートで寝るのが同じ睡眠の質(睡眠の長さと持続性)だったなんて、寝具製造をしている私としては、当初とても受け入れ難い事実でした(ちなみに、実験の依頼元であるメーカーにこの結果を伝えたところ、早々に研究が打ち切られたとのことです)。

ただ、悔しい思いもあり、この実験について調べていくにつれ、実験を行ったデメント教授本人が後日談として下記のように伝えていることを知りました。

しかしいま考えれば、おかしな話ではないことがわかる。手がかりは、被験者が大学生だったことだ。しかも時期は最終試験が終わったばかりの春休みで、学生たちは睡眠不足が最高潮に達していた。若い彼らは、どこだろうとぐっすり眠れる状態だったのだ。もし被験者が中年で、睡眠負債がもっと少なかったら、全く違う結果が出ただろう。

(引用:『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?』 ウィリアム・C・デメント 著)

どういうことかというと、睡眠不足の20歳くらいの若い人だったからこのような実験の結果になったのだろうということです。

つまり、若さと疲れがあれば、寝具環境が悪くても(良い眠りなのかは別として)眠ることは出来るのです。

1-1. マットレスなしで寝た私の体験談

私自身、同じような経験があるので納得できます。

というのも、遡ること10年ほど前、大学入学のために上京した当初数日ほど、私はマットレスがないワンルームで寝ていたことがあるからです。

タオル枕だけ作ってそのまま床(フローリング)の上に寝ていました。確かに、腰や肩甲骨がフローリングにゴリゴリ当たって寝心地は悪いし、眠りにくかった覚えはありますが、夜中に目覚めることなく朝まで眠れていました。

若さと引越し疲れがあったからこそのことでしょう。

ただ、だからと言って、フローリングで寝るのをおすすめ出来るかといえば、まったくおすすめできません。というのも、毎朝起きると背中が痛かったからです。これは個々人の背中の筋肉量にもよると思いますが、ほとんど大半の方に当てはまることかと思います。

なので、寝具メーカーとしてのポジショントークにもなりますが、マットレスや敷布団の上で寝られることをおすすめします。

1-2. 原始人はマットレスなしでも快眠していた説について

ちなみに、原始人は地面で寝ていても活発に狩りをするなどしていたことがありますが、これについて私は以下のように考えています。

  • 草などを敷いて寝ていた
    そもそも硬い地面の上に直接寝ていたのかが疑問です。というのも、地面に草などを敷いて寝ていたという痕跡が考古学者により報告されているからです。原始人にとっても地面に直接寝るのは硬すぎて寝心地が悪かったのだろうと思います。
  • 筋肉量が多かった
    原始人は現代人よりも筋肉力が多いとされているため、地面の上でもある程度は快適に眠れていたと考えられます(筋肉量が多い人ほどマットレスが硬くても問題ないのは現代でも同じこと)。
  • 常にやや飢餓気味だった
    狩猟採集時代の人類は、飽食の時代に生きる現代人とは違い、常にやや飢餓状態で生きていたため睡眠時間が短かったと考えられます(空腹だと睡眠時間は短くなりがち)。現代人よりは活動的でパワフルなイメージですが、寿命は短いですし健康的なのかは疑問です。

ちなみに、日本でもつい200年くらい前までは農民はわらに潜って眠っていたと言われています。

2. 床で寝るメリット・デメリット

床で寝ると「姿勢が伸びる」「気持ちいい」と感じる人がいる一方で、腰痛や肩の痛みを訴える人もいます。この違いは、床の硬さと体圧分散の関係にあり、体型・筋力・寝姿勢などによって体への影響が大きく変わります。ここではメリットとデメリットを紹介します。

■ メリット

  • 一時的に背筋が伸び、姿勢が整う感覚がある
  • 体が沈まないため、寝起きのダルさが少ない
  • 敷寝具を使わないため温度変化を感じやすい

■ デメリット

  • 圧力が逃げないため「背中・腰・肩」に強い負荷
  • 筋肉が固まり、朝の痛みやしびれが出やすい
  • フローリングは湿気がこもり、カビ・ダニ増殖の原因
  • 低温環境だと体温が奪われ、浅い睡眠になりやすい

特に、40代以降・痩せ型の人・肉付きの少ない女性などは、床寝で痛みが出やすいため注意が必要です。

3. 「固い床寝が気持ちいい」と感じる理由

一部の人が「固い床で寝ると気持ちいい」と感じる理由には、生理的なメカニズムがあります。

3-1. 姿勢がリセットされたように感じる

柔らかい寝具では体が沈み込み、背骨が湾曲しがちです。固い床では沈まないため、一時的に姿勢が改善したように感じることがあります。

3-2. 深部体温が下がり、リラックス感が出る

床は熱伝導率が高く、体温がスッと奪われるため、初期段階では“気持ちいい冷たさ”として感じられることがあります。

3-3. ジメっとした寝具の不快感がなくなる

湿気の多いマットレスより、床は表面が乾いているため快適に感じやすいケースがあります。

3-4. 中の疲労で身体の感覚がマヒしている

疲れ切った日に硬い床で“落ちるように寝てしまう”のはよくあることです。ただし、これは本来の快適さとは別物です。しかし、こうした感覚は「短期的なメリット」に過ぎず、数日以上床寝を続けると体が硬く痛みが出やすいことがほとんどです。

4. 床で寝たい人向け|健康を守る“正しい床寝のやり方”

「どうしても床で寝たい」「床寝の気持ちよさを生かしたい」という場合は、次のポイントを守ると身体への負担を最低限にできます。

バスタオル・薄い敷パッドを1~2枚敷く

圧迫感を軽減し、冷えのリスクを下げます。

仰向けで寝る

横向きは肩が強く圧迫され、痛みが出やすいです。

冬場の床暖房の直上は避ける

低温やけど・脱水のリスクがあります。

湿気がこもる環境ではNG

床は結露しやすく、カビ・ダニの温床になりやすいです。

翌朝痛みが出るなら中止する

床寝は“合う人・合わない人”と、極端に分かれます。

5. 床寝の代わりにおすすめの寝具

床寝の“気持ちいい硬さ”だけを残し、身体への負担を取り除きたいなら、次の寝具が特におすすめです。

5-1. 高反発マットレス

体を沈ませないため、床寝のような安定感がありつつ、圧力を逃がす機能があります。腰痛対策にも相性が良いです。

5-2. 薄型マットレス(3〜6cm)

床の硬さに近い寝心地を保ちつつ、痛みを防げる。床派の人に最も人気を集めています。

5-3. 畳 × 敷布団

適度な硬さと吸湿性があり、床寝よりはるかに睡眠環境が安定しやすいです。

5-4. マットレストッパー

今ある寝具が柔らかすぎる場合の“硬さ調整”に最適です。床寝のメリットである「体が沈まない感覚」を保ちながら、冷え・痛み・湿気などのデメリットをすべて解消できるのが大きな強みです。

最後に

正直、どのような敷寝具環境で寝るのがベストかはまだ解明されていませんが、少なくとも背中が痛くなることがあるため、床の上に直接寝るのは良くないかと思います。

また、寝心地が素晴らしいマットレスを選ぶためのポイント(体圧分散性、弾力性、耐久性など)とおすすめのブランドについて解説しています。「床じゃなくてマットレスの上で寝よう」と思い直していただけていれば、是非あわせてご参考にしてください。

関連記事:【2025年最新】快眠マットレスおすすめ17選&専門家が選ぶおすすめと失敗しないポイント

なお、マットレスに関するページを以下にまとめましたので、気になるトピックがあればあわせてご参考にしてください。

■あわせて読んでおきたい「マットレス」の記事一覧
- 選び方編
○【2025年最新】快眠マットレスおすすめ17選&専門家が選ぶおすすめと失敗しないポイント
○敷布団とマットレスの違いと選び方|併用・重ね使いも徹底比較
○【保存版】マットレスの選び方|寝方・体型・硬さ・素材から最適な1枚を見つける
○マットレスの種類完全ガイド|特徴、構造、向き不向きを徹底解説
○低反発 高反発マットレスの違いを徹底比較|あなたに合うのはどっち?
○【快眠の方程式】マットレスの理想の硬さ=理想の寝姿勢
○マットレスの正しい厚み(高さ)は「用途と目的」を軸に考える
○通気性の良いマットレスの選び方|素材・構造・加工別に徹底比較
- 使い方編
○【マットレスの正しい使い方】敷き方・パットの順番・必要アイテムとは?
○マットレスの上に布団はNG?理由と代替策を専門家が解説
○マットレスのダニ対策完全ガイド|退治・除去・予防まで徹底解説
○マットレスにカビが生えた時の対処法と予防法|健康被害や買い替え判断も解説
○ベッド・マットレスがずれる?それなら滑り止め対策を
○マットレスの寿命と買い替え時の見極め方|長持ちさせるコツも解説
○マットレスの処分方法7選|スプリング入りやノンコイルも対応

よくある質問

Q1. 床で寝ると健康になるって本当?

A. 「床で寝ると背筋が伸びて健康に良い」「床寝健康法で体が整う」といった情報もありますが、長期的な健康効果が科学的に十分証明されているわけではありません。

たしかに、柔らかすぎるベッドや沈み込みの大きいマットレスから一時的に床に変えると、

  • 体が沈まず、背筋が伸びたように感じる
  • 寝起きのだるさが軽くなったように感じる

といった“主観的な気持ちよさ”が出ることがあります。しかし、床は体圧をほとんど分散しないため、背中・腰・肩・お尻・かかとなどに負担が集中しやすく、長期間続けると痛みやこわばりの原因になることもあります。

つまり、床寝は「合う人には一時的に心地よく感じることもあるが、“健康法”として誰にでも勧められるものではない」というのが現実的な答えです。

Q2. 冬に床で寝るのは危険?

A. 冬のフローリングやコンクリート床の上で直接寝ることは、体温調節の面でかなりリスクが高いと考えてください。床は空気よりも熱を奪いやすく、体の熱がどんどん逃げていくため、

  • 手足の冷え
  • 筋肉のこわばり
  • 深部体温の低下による浅い睡眠

を招きやすくなります。特に、暖房を切った寝室や、断熱性の低い住宅では、一晩中じわじわと冷えが蓄積し、朝起きたときの不調につながることもあります。

どうしても床に近い感覚で寝たい場合でも、冬は薄手のマットレスや敷布団を1枚はさむ、ラグ・断熱シート・すのこなどで床からの冷気を遮るなど、「床の冷えを直接受けない工夫」が必須です。

Q3. 畳とフローリングではどっちが良い?

A. 「床で寝る」という同じ条件でも、畳とフローリングでは体への負担がまったく違います。畳はわずかに沈み込むクッション性と、い草や建材の層による断熱性があるため、圧力が分散されやすい・床からの冷えが伝わりにくいといったメリットがあります。

一方、フローリングは非常に硬く、体圧が集中しやすい・冬は冷えがダイレクトに伝わる・結露・湿気がたまりやすく、カビやダニの温床になりやすいという点で、「直寝するには最も条件が厳しい床」です。

そのため、同じ“床で寝る”なら、フローリング直寝よりも、畳+敷布団/マットレスのほうが圧倒的に体に優しく、衛生面でも有利と考えてよいでしょう。

Q4. 床で寝ると腰痛は治る?

A. 「柔らかいベッドで腰が沈みすぎている人」が一時的に硬い面で寝ることで、腰の違和感が軽くなるケースはありますが、腰痛が根本的に“治る”ことを期待するのはおすすめできません。

床はほとんど沈まないため、もともと反り腰・猫背が強い人・腰まわりの筋肉が硬い人・椎間板や関節に問題がある人にとっては、かえって負担が集中し、腰痛が悪化する例のほうが多いのが実情です。

腰痛対策としては、

  • 体圧分散性の高いマットレスや敷布団を選ぶ
  • 自分の体型に合った「硬さ」を見つける
  • ストレッチや筋力トレーニングで姿勢を整える

といった「寝具+体のケア」を組み合わせることが重要で、床で寝ること自体を“治療法”として位置づけるのはリスクが高いと考えたほうが安心です。

商品を絞り込む
種類
お悩み
機能性
季節
シーン
素材
価格
-
絞り込み結果:
絞り込む