- 近頃、寝付きが悪くなった。
- しっかり眠っているはずなのに、日中に眠気を感じる。
- 夜中に目が覚めることが増えた。
このような悩みから「睡眠の質を高めるにはどうすればいいの?」という質問をいただくことがあります。が、そのような人に睡眠のメカニズムを説明すると、意外にも睡眠の質を高める方法論自体はテレビやネットを通して知っていることが多いのです。
しかし、情報として知っているだけで実践をしていないため、睡眠の質が低いままになっています。
そこで本日は、「睡眠の質を高める行動を起こすための生活習慣チェックシート」をご紹介します。
Contents
1. 睡眠の質を高めるチェックシート
今回ご紹介する生活習慣チェックシートは、広島国際大学の田中秀樹教授が考案したものをベースに、主に20~50代の人が睡眠の質を高められる内容だけを絞り込みました。
まずは以下の17つの項目を読みながら、現状できていることに◯、現状できていないけど頑張れば出来そうなことに△、現状できていないけど頑張っても出来さなそうなことに✕、の印をそれぞれ付けてください。
- ( )朝食はよく噛みながら食べる。
- ( )午前中に太陽の光をしっかり浴びる。
- ( )夜間、室内の明かりを暗めにする。
- ( )生活に運動を取り入れる。
- ( )夕食は就寝時刻の3時間前までに済ます。
- ( )夕食以降、コーヒー、お茶を飲まない。
- ( )お風呂は就寝2時間前に済ます。
- ( )寝床でテレビを見たり、仕事をしない、スマホを使わない。
- ( )就寝1時間前はタバコを吸わない。
- ( )寝床の温湿度は適切に調整する。
- ( )静かな環境で眠る。
- ( )寝るためにお酒を飲まない。
- ( )眠くなってから寝床に入る。
- ( )寝床で悩み事をしない。
- ( )昼寝は20分以内、15時までに済ます。
- ( )週末に寝だめをしない。
- ( )適切な寝具を使う。
そして次に、あなたの現在の睡眠の満足度を100点満点で点数付けしましょう。
- ( 点)寝付きの満足度は?
- ( 点)熟睡の満足度は?
- ( 点)寝起きの満足度は?
- ( 点)日中のスッキリ感は?
1−1. チェックシートの進め方
まずは、17項目のチェックリストで△だった頑張ればできそうなことの中から3つ、改善しようと努力する目標を決めましょう。
頑張りすぎると心が折れてしまうので、✕の出来そうにないことは一先ず出来ないままで良いです。なので、◯と✕しかなければ、◯を◎にすることを目標に生活改善をしましょう。また同じく理由から、目標を3つ設定するのが難しそうであれば、2つでも良いです。
とにかく、「睡眠の質を高める方法を知っている」という状態から「睡眠の質を高める方法を実践している」という状態になれるよう、たった1つの目標でもいいので出来ることから始めてみることが大切です。
そして生活改善を2週間続けてみた後、もう一度、睡眠の満足度の点数付けをしてあなたの睡眠の質がどう変わったかチェックしましょう。睡眠の質が上がっていることを実感できていることと思います。さらに、睡眠を改善するならば残っている△を◯に(もしくは◯を◎に)できるように、新しい目標を立てて生活を改善していきましょう。
1−2. 各項目と「睡眠の質」の関係
とはいえ、各項目がなぜ睡眠の質を上げるために大切なのか納得できていないと、目標を立てて頑張るモチベーションが出てきにくいかと思います。
1から順番に説明していくのでご参考にしてください。
①朝食はよく噛みながら食べる
空腹を満たすためだけでなく、たんぱく質に含まれる「トリプトファン」という栄養素が夜になると、眠りを知らせる「メラトニン」という睡眠ホルモンになるため、朝ごはんは夜の熟睡にとっても大切なのです。
メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。メラトニンは直接的に睡眠作用を持つほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、深部体温を低くする作用があり、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
おすすめの朝ごはんはバナナです。
というのも、トリプトファンが多く含まれるだけでなく、トリプトファンがメラトニンに合成されるために必要なビタミンB6も多く含んでいるので、快眠を重視した朝ごはんに適しているからです。
栄養素 | 多く含む食材 |
トリプトファン | 乳製品(ヨーグルト)、バナナ、納豆 |
ビタミンB6 | バナナ、のり、魚類、肉類 |
②午前中に太陽の光をしっかり浴びる
「午前中に浴びる日光は僅か30分の量で、睡眠薬1錠分に当たる」と睡眠学者に言わせしめるほど、太陽の光は睡眠の質を高める効果があります。
というのも、太陽の光には、上記の「トリプトファン」→「セロトニン」→「メラトニン」の一連の合成を助ける作用があるからです。
メラトニンが熟睡に重要なのは先に述べた通りですが、セロトニンは幸せホルモンとして知られるほど交感神経を活発にする作用があるので、光を浴びることで睡眠の質を高めると同時に日中の眠気を押さえてスッキリ感を高めることも期待できるのです。
太陽の光を浴びると言っても、日焼けをする必要はありません。2,500lx以上の光を目が感じればいいので、窓際で明るい空を眺めるだけで十分効果が見込めます。
そのため、日中(特に午前中)は、日差しが入りやすい明るいところにいるよう心掛けましょう。
③夜間、室内の明かりを暗めにする
しかし反対に、夜間は光を避けて行動するようにしましょう。
夜間に光を浴びることでメラトニンの分泌が抑制されるので、寝付きが悪くなったり、眠りを浅くする恐れがあります。
- 夕食後は部屋の明かりを暗くする
- 夜はスマホなどの画面輝度を下げる
- 夜中にスーパーなどに行かない
④生活に運動を取り入れる
運動などのエクササイズや筋肉トレーニングをすることで熟睡感を高めて、翌日のスッキリ感を高めることができると多くの実験により報告されています。
足利工業大学の吉田弘法教授が行った実験によると、夜にエクササイズをすることで深い睡眠が増えたことが観測され、さらに、寝付きもよくなり熟眠感も良くなる実感があったと報告されています。
・実験内容 運動習慣のない男子大学生5名が60分の辛くない程度の有酸素運動(50分のエアロビクスと前後に5分のストレッチ)を行う。朝(07:40 – 08:40)に運動を行う週、夕方(16:30 – 17:30)に行う週、夜間(20:30 – 21:30)に行う週、の3パターンで睡眠にどのような違いが現れるかを実験。実験の間、学生は大体23時30分に就寝し7時30分に起床。 |
私の経験上、運動を始めた当初は、体が疲れて朝起きるのが辛くなります。なので、平日は軽い運動、週末はややハードの運動、と次の日の予定に合わせてメニュー(負荷)を調整し、体を徐々に慣らしていくことをおすすめします。
熟睡できても寝坊してしまっては元も子もないです。
⑤夕食は就寝時刻の3時間前までに済ます
これは感覚的に理解されている人も多いと思いますが、胃で食べ物が消化されたまま眠ると、脳が休まりにくくなり睡眠が浅くなってしまいます。
食後から3時間ほど経過すれば消化も大分落ち着きますので、それ以降に眠るようにしましょう。
⑥夕食以降、コーヒー、お茶を飲まない
カフェインは1度摂取すると、長く体内に残り続けます。
健康な成人でのカフェインの半減期は2.5~4.5時間なので、人によっては6~8時間ほどカフェインの作用が残り続けることがあります。
カフェインの作用があるままだと寝付きが悪くなりますし、睡眠が浅くなる恐れがあるので、夕食以降は摂取を控えるようにしましょう。
どうしてもお茶を飲みたいのなら、カフェインの入っていない麦茶、そば茶、黒豆茶、ハーブティーなどがおすすめです。
⑦お風呂は就寝2時間前に済ます
人には「眠りに入るために体温を下げる」というメカニズムがあります。
眠る直前に熱いシャワーやお風呂に浸かってしまうと、体温が上がってしまい、その後一定時間下がりにくくなるため、寝付きが悪くなりますし、眠れたとしても深い睡眠に入りにくくなってしまいます。
なので、お風呂は就寝2時間前までに済ますようにしましょう。(※夜間の運動も同じです)
⑧寝床でテレビを見たり、仕事をしない、スマホを使わない
頭が覚醒するため寝付きを悪くします。
また、テレビやスマホの画面は明るいため、光によって眠りを妨げることにもなります。
私の経験上、スマホのゲームは脳が興奮してハマりやすいように設計されているので、頭が冴えて眠気が飛んでしまい眠れなくなってしまうので、就寝1時間前は控えることをおすすめします。
⑨就寝1時間前はタバコを吸わない
タバコには覚醒作用があります。
そのため、就寝前に一服すると眠気を遠ざけたり、寝付きを悪くしてしまうので、控えるようにしましょう。
⑩寝床の温湿度は適切に調整する
寝室の温湿度は26℃/50%前後だと快適なのですが、布団内の温湿度(寝床内気象:シンショウナイキショウ)も同時に快適になるように調整することで睡眠の質をさらに高められます。
とはいえ、部屋の温湿度がエアコンなどで管理できていたら、問題となるのはシーツ・カバーの素材が原因で布団内が蒸れてしまうことくらいです。
綿、麻、テンセル®などの素材がおすすめです。熟睡のためのシーツ・カバーの選び方はこちらのページ『布団カバー・ベッドシーツを上手に選ぶ/扱うための体系的知識』をご参考にしてください。
⑪静かな環境で眠る
騒音(40デジベル以上)で睡眠の質が下がることもあります。道路沿いに住んでいたりなどで騒音が気になる人は対策をしましょう。
よくある誤解に、安眠ミュージックを聞きながら眠る、というものがあります。安眠ミュージックを聞いてリラックスをして眠りに落ちるまではいいのですが、眠りに入ったら音は騒音でしかなくなってしまうので、オフタイマーを設定して睡眠を妨害しないようにしましょう。
⑫眠るためにお酒を飲まない
アルコールは緊張をほぐし、体温を一時的に上げた後に下げるので、入眠効果は非常にあります。
しかし、摂取から2~3時間後に交感神経を優位にし、脳と体が興奮状態になる作用があるので、睡眠の質を大きく下げてしまいます。さらにひどいことに私の経験上、就寝前にお酒を飲む習慣ができると、酩酊感(酔っ払った感覚)がないと眠りにくくなりますし、癖になる恐れもあるので控えることをおすすめします。
⑬眠くなってから寝床に入る
この項目は特に寝付きが悪い人に注意してほしいのですが、あまり眠くないのに寝床に入り「なかなか眠れないなぁ」と感じてしまうことは、認知的に眠りを妨げることに繋がるので控えるようにしましょう。
「ベッド」と「眠れない」という認識のつながりを強めてはいけないのです。なので、眠くなってからベッドに入りように心掛けましょう。
⑭寝床で悩み事をしない
この項目も特に寝付きの悪い人に注意してほしいのですが、寝床で悩みについたり考えたりすることで頭が興奮して寝付きを悪くします。
また、「ベッド」「悩み事」「眠れない」という認識が強まってしまうことからも、睡眠の質を下げてしまいます。悩み事はベッドに持ち込まないようにしましょう。
⑮昼寝は20分以内、15時までに済ます
人が眠るメカニズムは極論すると、①夜になると眠くなることと、②疲れたから眠る、の2つしかありません。
仮眠により疲れをとりすぎてしまうと、夜間の眠りを浅くすることになります。
そのため、仮眠は20分以内、そして、就寝時刻の9時間前までに終わらせることにしましょう。
⑯週末に寝だめをしない
週末に寝だめをしても、睡眠は貯蓄できないので無意味になってしまいます。
むしろ、生活のリズムが崩れることで、次の週の体調を悪くする恐れがあります。
例えば、平日、朝7時に起きて光を浴びている人は、その約16時間後にメラトニンの分泌量が増えて眠くなります。
しかし、休日、寝だめをして10時に起床した場合、その約16時間後の真夜中に眠くなることになります。
寝だめをすると、このようにして週末の就寝時刻が遅くなるにもかかわらず、月曜日に朝早く起きなければならなくなるので量的な意味での睡眠の質が下がってしまい、いわゆるブルーマンデーという状態になってしまいます。
⑰適切な寝具を使う
睡眠をサポートする寝具の質が悪ければ、睡眠の質が下がってしまうのは至極当然です。
枕は理想的な寝姿勢で眠るために適切な高さ、首と後頭部にフィットするために硬さ、そして、あなたの体質や好みに合う素材感にこだわって選ぶことが大切です。以下のページで詳しく解説しているのでご参考にしてください。
関連記事マットレスも理想的な寝姿勢で寝るために適切な硬さ、必要十分な厚み、住まいの環境や生活スタイルに合った種類などをベースに選ぶことが大切です。以下のページでご説明しているのであわせてご参考にしてください。
関連記事最後に
睡眠が充実すれば人生も充実すると私は信じています。是非今日から、チェックシートを元に快眠のための生活改善を始めてください。あなたのよりよい生活の一助になれば幸いです。
また、そもそも根本的に、睡眠時間が足りていないということはないでしょうか。以下のページであなたにとって理想的な睡眠時間を判断する方法をご紹介しているのであわせてご参考にしてください。
関連記事