「起床時に寝足りなさを感じる」
「夜中に目が覚めてしまう」
「もっと眠りたいのに早朝に目が覚めてしまう」
このような症状でお悩みではないでしょうか?
また同時に、日中の眠気にも悩まされていると思います。
そこで本日は、「眠りが浅い原因と対策」そして「不眠症状別の特別改善策」をご紹介します。ひどくなる前に眠りを改善させましょう。
※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。 |
1. 眠りが浅いとはどういう睡眠状況なのか?
まずは眠りが浅い時の睡眠状況をおさらいしましょう。眠りが浅い原因と対策への理解を深められます。
一夜の睡眠の深さの変化を表したグラフで、通常の睡眠と浅い睡眠を比較してみましょう。通常、下のグラフのように、人の眠りは深くなったり浅くなったり、一晩のうちに変化します。
(参考:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
既にご存知かもしれませんが、各用語の説明をします。
このように、レム睡眠が全睡眠の内20%程度あり、ノンレム睡眠の第3・4段階の深い睡眠が20~30%程度あり、第1・2段階の浅い睡眠のときも目覚めることなく眠り続けられれば、理想の睡眠です。
しかし、「眠りが浅い」と感じるときの睡眠は、下のグラフのようになっています。
つまりは、眠りが浅い睡眠状況を大きく分けると2通りあり、
- 深い睡眠が少なく、浅い睡眠が多くなっている状況。このような睡眠だと、朝起きたときに「熟睡感がない」と感じられます。
- 浅い睡眠のときに目が覚めやすくなっている状況。夜間や早朝に目が覚めるタイプの不眠に繋がります。
あなたが眠りが浅いと感じる状況がどちらか認識しながら読み進めていただければ、対策がより明確に分かると思います。
2. 眠りが浅い4つの原因と対策
それでは、睡眠を浅くする原因と、その対策を併せてご紹介します。
①過剰なストレス
適度なストレスは生活に刺激とハリをもたらすスパイスです。張り合いのある生活、達成感のある日常は、快眠に重要な要素です。
しかし、ストレスが過度になると、眠りを浅くする2つの原因を生み出します。
自律神経を乱し、交感神経を優位にする
自律神経とは何か?簡単に説明すると、
・自律神経とは 身体全体に張り巡らされている神経。あなたが「意識しなくても活動している身体の器官」をコントロールしています。例えば、心臓が身体中に血液を送っていたり、ご飯を食べたら胃が消化してくれたり、これらは全て自立神経がコントロールしています。 |
そしてこの自立神経は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経から成り立っています。この2つの神経は表裏一体の関係で、正反対の働きをします。
・交感神経とは 活動時や興奮・緊張しているとき、ストレス下で働く。瞳孔が広がる、心拍数が増える、覚醒度が上がる、という反応が身体に現れます。 ・副交感神経とは 休息、リラックス時に働く。脈拍を抑える、消化を促す、覚醒度を下げる、という反応が身体に現れます。 |
通常、夜に眠るとき「副交感神経」が優位になり、脳と身体が休息します。しかし、ストレスが過度の状況下では、夜も交感神経が優位になります。そのため、寝つきが悪くなり、睡眠も浅くなってしまいます。
コルチゾールの分泌を促す
さらに、脳がストレスを感じると、ストレスホルモンとして知られる、コルチゾールの量が増加します。
・コルチゾールとは 副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン。血糖値を上昇させ、代謝を促進する作用がある。通常、朝方に分泌量が最大になり、午後には下がり睡眠中は抑制される。脳と身体を覚醒させる目的と考えられている。 |
少し難しいですね。
身近な例で言うと、家の中で害虫を発見したときです。身体が震え上がり、一気に高まった心拍数を抑えながら、なんとか退治した経験はありませんか?これは過度なストレス(害虫)により、コルチゾールが分泌され、一気に身体が覚醒した状況と言えます。
通常、コルチゾールの分泌量は、下のイラストのように、1日の内で夜間に最も少なくなります。
しかし、ストレスが過度の状況下では、コルチゾールの分泌量が増大するため、寝つきを悪くし、睡眠も浅くなります。
ストレスにより眠りが浅くなっている場合、効果的な対策は以下の4つです。
- ストレスを発散させる。
- 睡眠環境を整える。
- 睡眠指導に使われる認知行動療法を行う。
- ストレス自体を解消する。
具体的な対策を、こちらの記事「ストレスで眠れない人を快眠に導く4つのステップ!」で紹介しているので、眠れない1番の原因がストレスだ、という方はご一読ください。
②加齢
加齢に伴って睡眠は浅くなります。これは避けられない傾向です。
下のグラフをご覧ください。子供と成人、高齢者の「一夜の睡眠の深さの変化と経過グラフ」を比較したものです。
加齢に伴い、深い睡眠がどんどん少なくなっています。また、高齢者の睡眠には分断が見られます。睡眠が浅いため、夜間に目覚めることを表しています。
加齢により睡眠が浅くなることに対しては、対策のしようがありません。しかし一方で、睡眠の質が良い高齢者がいるのも事実です。そのような高齢者は、日中の活動にメリハリがあり、夕方に昼寝をしない、など夜の眠りを浅くする習慣を行っていないことが典型的です。
そのため、「年齢が原因で眠りが浅くなっている」と考えている方は、次に紹介する眠りを浅くする習慣を行わないようにすることを対策としてください。
③眠りを浅くする7つの習慣
間違った睡眠の知識や誤解によって、このような生活習慣を行っていませんか?
これらの習慣があれば、ただ止めるだけで、睡眠の質が大きく改善されます。
(1)体と頭が十分疲れていない
ヒトが眠るメカニズムはたった2つだけです。
- 疲れたから眠くなる(恒常性維持機構)
- 夜になると眠くなる(生体時計機構)
そのため、オフィスワーク、ルーティンワーク、家事(特に子供が巣立った後)など、そこまで疲労(特に肉体的疲労)を感じない活動が生活の大半を占めると、眠りが浅くなりやすいです。
対策はシンプルに、体を動かすことです。ウォーキングやジョギング、ながらエクササイズを生活に取り入れてみましょう。他のも頭を疲れさせる方法として、新しい習慣を始める、不慣れな環境に身を投じる、などが有効です。
例えば、知らない人が集まる交流会に参加してみる、参加したことのないイベントに足を運んでみる、などです。
(2)長い昼寝・夕方の仮眠
深く眠るにはその分、眠気が溜まっている必要があります。長過ぎる昼寝、夕方の仮眠は眠気を取りすぎてしまい、夜間の睡眠を浅くします。
・・・長い間覚醒していればいるほど、その後の深いノンレム睡眠である徐波睡眠が増加することがわかっている。
(引用:『睡眠の話』内山真 著)
長く覚醒していればいるほど、つまり、疲れが溜まっているほど、眠気が強くなり熟睡できるのです。そのため、長い昼寝や夕方の仮眠をとってしまうと眠気が弱くなり、夜間の眠りが浅くなります。
とはいえ、日中に眠くなったときに、眠たいまま仕事や家事をするのは非効率的ですね。仮眠には2つコツがあります。このコツを守れば、夜の眠りを浅くすることなく、昼の眠気をスッキリとれます。
①仮眠は20分以内にする。
20分以上眠ると疲れを取りすぎてしまい、夜の眠りを浅くします。さらに、睡眠が深くなりスッキリと起きるのが困難になります。あなたが寝入りに時間がかかるのなら、30分を目安に仮眠をとるのも良いでしょう。
②就寝の9時間前までに仮眠を済ます。
例えば、あなたの就寝時間が0時の場合、15時以降は仮眠を控えましょう。疲れが溜まっていない状態では、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠が浅くなります。
あなたは会社帰りの電車の中でウトウトしたり、眠ったりしていませんか?夜間にちょっとウトウトするだけで、眠りを浅くする要因になるので気をつけましょう。
(3)寝酒
「眠る前にお酒を飲むとよく眠れる」という方がたまにいますが、それは誤解です。
たしかに、アルコールは入眠にとても効果があります。緊張をほぐし、体温を一時的に上げた後に下げるので、身体が素晴らしいほどに睡眠モードになります。
しかし、気持ち良く眠りに入れても、その後が問題です。眠りを浅くします。
・寝酒が眠りを浅くするメカニズム アルコール摂取の2〜3時間後、体内でアルコールが分解されるとアセトアルデヒドという物質になります。この物質は交感神経を優位にします。例えば、眠る30分前にお酒を飲むと仮定します。そうすると、眠り始めてから2時間前後に体内でアセトアルデヒドが発生します。つまり、休息に入ったとたん、脳と身体が興奮状態になるのです。その結果、眠りが浅くなります。 |
また、24,686人の日本人を対象にした調査によると、週1回以上のペースで眠るために飲酒をするのは、男性では48.3%、女性では18.3%もいたそうです。さらに、寝酒の習慣があると睡眠が浅くなり、夜中に目が覚める(中途覚醒)ことが多いと報告されています。
ご安心ください。夜のお酒は禁止!ということではありません。
就寝の3時間前の晩酌であれば睡眠への悪影響は少なくなります。そのため、浅い眠りを気にしているのなら、お酒は就寝の3時間前には飲み終えるようにしましょう。
(4)夜食
夜食も寝酒と同様、寝入りをスムーズにしますが、結果的に睡眠を浅くします。身に覚えがある方もいると思います。夜食は以下の理由により、眠りを浅くします。
・夜食が睡眠を浅くするメカニズム 食事により上がった血糖値を下げるために、インシュリン(休息ホルモン)が分泌されます。そのため、眠気を感じます。しかし、この状態で寝てしまうと、体内の臓器は食べ物を消化するため活発になっているため、脳が休まりにくくなり睡眠の質が大きく低下してしまいます。 |
そのため、眠りが浅いと感じる人は、夜食を控えましょう。また、夕食は遅くとも、就寝の3時間前に済ませると理想的です。これ以降の夕食は、眠りに少なからず悪影響を与えてしまいます。
(5)夕食以降のカフェインの摂取
カフェインに覚醒効果があることはご存知と思います。どのように作用するかと言うと、
・カフェインの作用 アデノシンという鎮静効果のある神経伝達物質が脳内で伝達される前に、カフェインがブロックすることにより鎮静を妨げ覚醒効果をもたらします。カフェインを摂取すると、30~60分後に血中濃度が最高になります。つまり、この間に覚醒効果が最高になります。そして健康な成人での半減期は2.5~4.5時間。この間に効果が無くなっていきます。 |
一般的にカフェインの作用時間は4時間前後ですが、人によっては効果が8時間も続くことがあります。そのため夕食後に、カフェイン飲料を摂取すると、眠りを浅くする可能性があります。
カフェインといえばコーヒーですが、コーヒー以外にもカフェインを含む飲食物があります。一例として、以下のようなものがあります。
- 栄養ドリンク、エナジードリンク
- コーラ、ココア
- お茶(煎茶・烏龍茶・ほうじ茶・玄米茶)
- チョコレート
もしこれらを夕食以降に摂取していたなら、今日から(一時的で良いので)中断してみましょう。眠りに変化を感じられると思います。
(6)日光を浴びない生活
生活の中で日光を浴びないことも、眠りを浅くします。
というのも、日中に日光を浴びることで「睡眠ホルモンのメラトニン」が合成され、夜中にぐっすり眠れるからです。メラトニンは以下の2つの働きにより、眠りを深くします。
メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。①メラトニンは直接的に睡眠作用を持つ ほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、②深部体温を低くする作用があり 、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
光を浴びてから14~16時間後に、体内でメラトニンの分泌量が増え始めます。つまり、朝の7時頃に太陽の光を浴びると、21~23時ごろにメラトニン量が増え眠気を催します。
日中、特に午前中に日光を浴びない生活を送ると、睡眠の質が下がってしまうことが、アメリカのノースウェスタン大学とイリノイ大学の共同研究により、報告されています。
窓から日光が入る職場で働く人(Aグループ)は、窓がなく日光が入らない部屋で働く人(Bグループ)より173%多くの光を勤務中に浴びます。それぞれの生活や睡眠を比較したところ、下記のことがわかりました。
・Aグループの睡眠はBグループより46分間長い。
・Aグループの方が活発に行動する傾向がある。
・Aグループと比較してBグループは全体として、睡眠の質や睡眠障害のスコアが低いだけでなく、身体的問題や活力のスコアも悪い。
午前中に日光を浴びているグループの方が、睡眠の質が高く、睡眠障害のスコアも低いと報告されています。
そのため、もしあなたが生活の中で日光を浴びないのなら、午前中は日光を浴びる機会をつくりましょう。これだけでも、とても効果的な対策になります。
(7)夜間の家庭の明るい光
日中に光を浴びることで、夜間の眠りが深くなります。
しかし、夜間は逆です。
「夜間の光は眠りを浅くする」と覚えてください。なぜなら、夜間の光はメラトニンの分泌を抑制する働きがあるためです。下の表をご覧ください。
日本の一般的な家庭の照度は300~500ルクスですが、この程度の明るさでもメラトニンの分泌を抑制してしまいます。そのため夕食後は、室内の照明を暗めにしましょう。
④睡眠環境
睡眠環境が悪いと、眠りが浅くなる原因になります。とはいえ、どのような環境が睡眠に適切か心得ている人は少ないと思います。
簡単に解説しましたので、ご一読ください。
寝室と寝床の温湿度
あなたの寝室の環境は暑すぎたり、寒すぎたり、湿気でジメジメしてはいないですか?
睡眠現場の温湿度が適切だと、スムーズに深い眠りに入っていけます。睡眠に最適な温湿度を具体的な数値で表すと、下記のようになります。
1. 夏に最適な室温は26℃前後、冬は17.5℃前後
2. 布団の中の最適な温度は33℃度前後
3. 理想的な湿度は、寝室・布団の中共に50%前後(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
体感具合で表現すると、以下のようになります。
- 夏は「涼しくて、汗をかいてもサラッと乾く環境」
- 冬は「少し暖かいが、熱がこもらず、ベタベタしない環境」
布団の中の温度の調整の仕方については、寝室の温湿度を最適化した上で通気性・吸放湿性の良い寝具素材を使えば自動的に最適化されると認識してくだされば結構です。
是非、これを参考に、あなたの睡眠環境を見直してみてください。
寝具
寝具はあなたが眠っている間、1番近くにいる存在です。寝心地の良くないもの、身体に合わないものを使っていると、眠りを浅くし、夜間に目覚める原因にもなります。
あなたに合った枕を使う
あなたに合った枕を選ぶ方法は、簡単にまとめると以下の3点です。
- 自分に合った素材であること
寝心地があなた好みで、体質(アレルギーなど)にも合っていることが大前提です。 - 首〜後頭部へのフィット性(適度な硬さ)
硬さ/柔らかさが適度でないと首の痛み、後頭部の圧迫感の原因になります。 - 理想的な高さ(理想的な寝姿勢)
首と肩のリラックスや快適な呼吸を可能にするのが適切な枕の高さです。
詳細な説明は以下のページを参考にしてください。
関連記事快眠できるマットレスを使う
しっかりと快眠できるマットレスを選ぶポイントも同じく3つです。
- マットレスの適切な硬さ/柔らかさを知る
いくら好みであっても、硬さ/柔らかさの度が過ぎてはいけません。正しい寝姿勢のとれる適切な硬さを知りましょう。 - マットレスの適切な厚みを知る
適切な厚みがなければ寝心地に満足できません。あなたの生活環境に合わせた上で、必要最低限の厚みを知りましょう。 - 各マットレスの違いを知る
代表格なマットレスには7つの種類があります。寝心地だけでなく使い勝手も異なるので、特徴を吟味して選びましょう。
具体的な内容は以下のページをご参考にしてください。
関連記事3. 眠りが浅いタイプ別の特別改善策
眠りが浅い場合の不眠症状は、大きく3つに分けられます。
1. 眠りに満足できない「熟眠障害」
2. 夜中に目覚めてしまう「中途覚醒」
3. 予定よりも早く目が覚める「早朝覚醒」
症状別に特化した対策があるので、あなたの症状に相応しい箇所をご覧ください。
3−1.熟眠障害タイプの改善策
まずはあなたの生活の中で、先にご紹介した「眠りを浅くする原因」があるか確認しましょう。原因への対策をきちんとすれば、しっかりと眠れるはずです。
それでも、熟睡感が得られないときに以下の方法をお試しください。
睡眠時間制限法
目覚めたとき、「満足感がないから、もうちょっとだけ」とベッドにいる時間を延ばしていませんか?
そのようなとき、眠れないことが多いと思います。眠れたとしても、一度目覚めた後は、浅い眠りになりがちなので、結局、熟睡感は得られていないことが大半です。このような習慣がある方には、睡眠時間を制限することで改善を目指す、睡眠時間制限法(睡眠制限療法)への取り組みが効果的です。
・睡眠時間制限法とは ベッドの中にいる時間を制限することにより、軽い断眠効果を起こし、不眠の改善を目指す方法です。睡眠への欲求と睡眠圧を高めるため、熟睡効果をもたらします。(※睡眠圧とは、起きている時間が長いほど、その後の眠りが深くなる現象のこと。) |
睡眠時間制限法は以下のように行います。
1. ここ1週間の平均睡眠時間を計算する。
(※ベッドの中にいる時間ではなく、眠った時間の平均。)
2. 平均睡眠時間+15分をベッドの中にいる時間に設定する。
(※5時間未満になる場合は、5時間に設定する。)
3. 日中に仮眠をとらない。
4. 起きる時刻を、休日を含めて一定にする。
5. 起きたとき、何時間眠れたか記録する。
6. 睡眠効率が90%以上の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を15分増やす。
(※睡眠効率とは、ベッドの中にいる時間の内、眠っていた時間の割合)
7. 反対に、睡眠効率が85%未満の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を短く設定する。(参考:『睡眠学II』 宮崎総一郎・大川匡子・山田尚登 編著)
例えば、あなたが以下のような睡眠状況だとします。
22時30分にベッドに入り、目が覚めるのは朝の5時半頃。熟睡感があまりなく、活動をするにも早すぎるので、あと1時間ほど眠りたいが眠れずにベッドの中でぼーっとしている。そして、6時30分ごろにベッドから出て1日の準備を始める。ベッドの中には8時間(480分)入っていて、実際に眠った時間は6時間半(390分)くらい。
このような睡眠状況が1週間続いていたら、ベッドの中にいる時間を6時間45分に設定します。そして、6時30分にベッドから出て1日を始めるなら、ベッドに入る時刻を23時45分に設定します。この睡眠スケジュールで5日間、生活をします。そして5日間の睡眠状況をもとに、次の睡眠スケジュールを設定します。当初は日中の眠気を感じ、つらいと思います。しかし、仮眠は極力避けましょう。夜間の睡眠が浅くなりやすくなります。
最終的に、睡眠効率が85%から90%の間で安定して、熟睡感を以前よりも感じられるようになれば、症状が改善していると言えます。
睡眠に対するこだわりを捨てる
「8時間睡眠が健康に良い」「眠れなくてもベッドで横になるだけで、睡眠と同じ効果がある」など、睡眠に関して多くの情報が発信されてきました。
しかし、あなたはこのような内容に、こだわり過ぎてはいないでしょうか。
身体が必要としている時間以上の睡眠をとることは不可能であり、睡眠時間にこだわりすぎるとかえって睡眠が浅くなったり、不眠に陥ること多い。
(引用:『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』 内山真 著)
つまり、あなたに必要な時間だけ眠ることが大切なのです。
あなたの身体は9時間の睡眠を必要としているかもしれません。また、たとえ夜間に5時間しか眠れず、もっと眠りたいと考えていても、日中に眠気を感じなければ、その睡眠時間は適切なのです。
一旦、こだわりを排除して、あなたに必要な睡眠時間を見極めてみましょう。
3−2.中途覚醒タイプの改善策
まずはもちろん、「眠りを浅くする原因」への対策をしっかりと行いましょう。
それでも、夜間に目が覚める場合に以下の方法をお試しください。
睡眠時間制限法
「睡眠圧」を高めることで、夜間の目覚めを抑えられるので、この方法は中途覚醒対策にも効果的です。
上記の睡眠時間制限法で紹介した方法論を元に、以下のような睡眠状況が、あなたの生活に続いていると仮定します。
23時にベッドに入り、7時に起床予定の睡眠スケジュール。寝つきは悪くないが、眠りに入ってから、2、3時間おきに目が覚める。ベッドの中には8時間(480分)入っていて、実際に眠った時間は5時間半(330分)くらい。
この場合、ベッドの中にいる時間を5時間45分に設定します。そして、7時にベッドから出るスケジュールなら、ベッドに入る時刻を1時15分に設定します。この睡眠スケジュールで5日間、生活をします。そして5日間の睡眠状況をもとに、次の睡眠スケジュールを設定します。当初は日中に眠気を感じ、つらいと思います。しかし、仮眠は極力厳禁です。夜間の睡眠が浅くなり、中途覚醒につながります。
最終的に、夜間の目覚めが減り、日中に眠気を感じることも減れば、症状が改善したと言えます。
いつもより遅い時刻に眠る
「ここ一週間、何時間眠ったか把握できない。考えるのが面倒だ。」という場合、就寝時刻を遅くしてみましょう。
例えば、あなたの睡眠が、「0時にベッドに入り7時に起床予定。その間に何度か目覚める。」と仮定します。起床予定時刻をそのままにし、猛烈な眠気を感じない限りは、1時以降に眠るようにしましょう。
睡眠時間が1時間減ることで、睡眠圧が高まります。これにより、夜間の目覚めが減ることを期待できます。
※注:「眠りが浅い原因への対策」をしていないのにこれらの方法を行うと、睡眠不足になり健康を害する可能性があるのでくれぐれもお控えください。 |
3−3. 早朝覚醒タイプの改善策
中途覚醒と同じ改善策をおすすめしますが、さらにもう一点、簡単に大きな効果の見込める方法があるのでご紹介します。
寝室のカーテンを遮光性の高いものに変える
あなたの眠りが早朝にかけて浅くなっており、その上、早朝の日光が入りやすい状況の場合、大きな効果が見込めます。
ほぼ完全に遮光するカーテンが備えられているホテルに宿泊した経験はありませんか?私の経験上ですが、遮光カーテンで朝の日光を遮った部屋で眠ると、いつもより長く眠れます。寝坊の恐れがある程です。
出費がかかりますが簡単にできる対策なので、朝早く目覚めてしまう人にはオススメの方法です。
4. 「眠りが浅い」と感じるよくある誤解
「眠りが浅くて困っている」という人の症状を伺うと、必ずしも眠りが浅い、とは言い切れない場合もあります。
そのような睡眠に対する誤解について、解説します。
4−1. 夢をよく見る
よく夢を見るのは深く眠れていないから、と考える人がいます。これはよくある誤解です。
結論から言うと、「夢をよく見る」のではなくて、「夢を覚えていやすいタイミングで目覚めている」のです。
夢を見るメカニズムや理由は完全に解明されているわけではありませんが、夢とはレム睡眠中に大脳が活動し、脳の視覚系の部位が刺激されることにより現れた映像、と考えられています。
人が眠るとき、レム睡眠は約90分周期で現れます。つまり、7時間眠れば、少なくとも4、5回は夢を見るチャンスがあります。それでも、夢をほとんど見ない人がいます。しかし、そのような人でも、レム睡眠のときの脳波を見ると、活動状態になっています。そして、レム睡眠のときに起こすと、夢の内容を覚えていることが多いのです。
このことから、夢をよく見るという人は、レム睡眠の夢を覚えていやすいタイミングで起床していることが多い、と考えられます。
4−2. 起きたときに頭がぼーっとする
朝起きるのが辛いが、日中に眠気を感じなければ、睡眠が浅いとは言い切れません。朝の目覚めは、目覚めるタイミングの眠りの深さに左右されます。
簡単に言うと、レム睡眠のときは、脳が活動しているからスッキリと目覚めやすく、ノンレム睡眠のときは、脳を休めて修復しているため、起きたときにぼーっとしやすくなる、ということです。
日中に強い眠気を感じない限りは、起きたタイミングが悪かった、と考えて良いでしょう。
4−3. 他の睡眠障害による刺激
眠っていたのに足がむずむずして目が覚めた、トイレに行きたくなり目が覚めた。
このようなとき、「睡眠が浅くなったな」と考えてしまいませんか?実際には、眠りの浅さが原因ではなく、他の睡眠障害が生み出した不快な刺激により、目を覚ましていることがあります。
睡眠障害を患っている場合、睡眠障害自体を解消する必要があります。以下のような症状に心当たりがあれば、睡眠障害の疑いがあります。
・睡眠中に呼吸が止まる、乱れる「睡眠時無呼吸症候群」
・腕や脚がビクビク動く、脚がむずむずする「睡眠関連運動障害」(「周期性四肢運動障害」や「むずむず脚症候群」)
・睡眠中に相応しくない行動を起こす「睡眠時随伴症」
a. 夢の中の行動を現実にしてしまう「レム睡眠行動障害」
b. 寝ぼけて動き回る「睡眠時遊行症」や「夢遊病」
c. 睡眠中に尿意を催し、目覚める「夜間頻尿」
症状が頻繁に現れるのなら、専門医への問診をオススメします。私の方でも今後順次、各睡眠障害の原因や対策をご紹介していきます。
追記:むずむず脚症候群の対策にご紹介する記事『90%は症状が改善!続々と解明中のむずむず脚症候群の原因』を執筆しましたので、症状に心当たりがある方はご一読ください。
まとめ
まずは眠りが浅い原因への対策を行っていきましょう。それでも睡眠に満足できないようでしたら、タイプ別の改善策を行ってみてください。
原因を踏まえた適切な対策をとればきっと睡眠の質を改善できるので、できる対策を今日から早速始めてみましょう。
なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
関連記事