足がムズムズするような妙な感覚。「たまに感じるだけだから」とほったらかしにしていませんか?
その症状はもしかすると、むずむず脚症候群という睡眠障害の可能性があります。不眠症の原因にもなるので、早急の確認と対策が必要です。
そこで本日は、
- むずむず脚症候群の原因
- Q&Aチェックシートによる症状の程度の確認方法
- あなた自身ができる対策と適切な医療機関の受診先
をご紹介します。
※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。 |
Contents
1. むずむず脚症候群とは?
脚にムズムズ感を催す症状というと珍しい病気と思われるかもしれませんが、日本での有病率は2~5%で、数100万人が患っていると言われています。
英語ではレストレスレッグス・シンドローム(Restless Legs Syndrome: RLS)として知られていましたが、症状が軽そうという誤解を受けやすかったため、2011年に、ウィリス・エクボム病と改名されています。
むずむず脚症候群の症状
むずむず脚症候群では、以下のような症状を感じられます。
- 脚がむずむずして落ち着かない。
- 脚の内部で虫がはっているように感じる。
- ちくちく、ひりひりするような感じ。
このような症状の大半は脚(ふくらはぎが最多で、次に太もも、足首の順。)に現れますが、お腹やお尻、肩、腕など他の部位に症状が現れる方も少数ながらいます。
むずむず脚症候群の4大特徴
他の疾患の症状と区別するため、以下の4つの特徴が診断の基準にされています。あなた自身の症状と見比べてみてどうでしょうか?
1. 下肢を動かしたいという強い欲求が、不快な下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起こる。
2. その異常感覚が、安静にして静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、あるいは増悪する。
3. その異常感覚は運動によって改善する。
4. その異常感覚が、日中より夕方や夜間に増悪する。(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
これら4つの特徴に当てはまっていると、むずむず脚症候群の可能性が非常に高いです。
夜間眠ろうとするときに症状が多く現れるため、入眠を妨害する大きな原因になります。また、不眠症の要因にもなるので、睡眠不足から日中の生活に支障をきたすことにもなります。
さらに、もう一つの特徴として、睡眠中に脚が無意識的にビクつく「周期性四肢運動」を伴うことが50~80%の患者に見られることです。こちらは睡眠中に起こることが多く、睡眠中に目を覚ましてしまうことになります。睡眠の質が大きく下がり、日中の強い眠気や倦怠感につながります。
症状の出やすい人
むずむず脚症候群の症状は老若男女に現れますが、米国ジョンズ・ホプキンス大学のアレン教授率いる研究チームの報告により、以下の人がこの病気にかかりやすい傾向があると明らかになりました。
- 高齢者:別の病気の症状や処方薬によりむずむず脚症候群が引き起こされることがあるため。(二次性むずむず脚症候群のこと。詳細は2章で。)
- 女性:鉄分が不足しやすく、ホルモンバランスの変化もあるため。特に妊娠時には発症率が上がり、約10%の妊婦にむずむず脚症候群が発症すると報告されています。
1点付け加えると、この研究では対象になっていませんが、むずむず脚症候群は20歳以下の子供にも発症します。10歳以下の低年齢の子供に目立ち、発症は遺伝による要素が大きいです。
2. むずむず脚症候群の原因と2つの分類
むずむず脚症候群の発症メカニズムはまだ解明されていませんが、有力な仮説が「ドパミン(ドーパミン)の異常」です。
ドパミンの働きの1つに「感覚の信号の伝達」があるのですが、障害により誤った信号が脳に伝えられた結果が「ムズムズ感」として現れているのではないか、と考えられています。
そして、「ドパミン異常」の原因になりうるのが「中枢神経内の鉄の欠乏」です。またさらに、「中枢神経内で鉄が欠乏」しうる原因が大きく2つに分けられており、その原因によりむずむず脚症候群は2つのタイプに分類にされます。
- 一次性(突発性):特定の原因がない。若年(45歳前)で症状が現れる。症状の進行は遅い。遺伝子的要因が高い。
- 二次性(続発性):他の病気(その服用薬)が原因となっている。高齢で症状が現れる。症状の進行は早い。
(引用:『 脚がむずむずしたら読む本』井上雄一 著)
高齢者に症状が多く見られるのは、加齢により患った病気や、その処方薬の服用が原因となり、二次性のむずむず脚症候群を発症する人が増えるためです。
発症の原因となる病気・薬剤
二次性のむずむず脚症候群の発症原因となると考えられている病気・薬剤は以下のものです。
・鉄欠乏症:鉄分が体内で不足している状態のことです。若い女性がむずむず脚症候群を患う場合は、比較的多くの方がこの原因に該当します。
- 腎機能障害:腎臓の働きが低下することにより鉄が不足するため要因となります。透析を受けている方の20%以上にむずむず脚症候群が発症するとも報告されています。
- 末梢神経障害:末梢神経の内の感覚神経に障害が現れることにより、誤った感覚信号が「ムズムズ感」として脳に伝えられます。
- パーキンソン病:詳細は明らかになっていませんが、パーキンソン病によってもドパミンの機能が損なわれるなど症状が類似しています。約10%のパーキンソン病患者にむずむず脚症候群が発症すると報告されています。
- ドパミン阻害薬(ドパミン拮抗薬):ドパミンが伝達されなくなるためにむずむず脚症候群の原因となることがあります。
- 抗精神病薬:脳内でドパミン受容体がブロックされることで、ドパミンが伝達されなくなるので、むずむず脚症候群の原因となることがあります。
- 抗うつ薬:神経伝達物質(セロトニン)への作用があるために、むずむず脚症候群の原因となることがあります。
- 抗ヒスタミン薬:神経伝達をブロックする働きがあるために、ドパミンを阻害し、むずむず脚症候群の原因となることがあります。
また、妊娠が発症のきっかけとなることもあり、その場合の原因は鉄欠乏、ホルモンバランスの変化などと考えられています。
3. 症状の程度をセルフチェック
自分自身の症状が軽度なのか、中度なのか、重度なのか分からないと不安になりますね。そこで、世界中の医療機関で使用されている国際レストレスレッグス症候群評価尺度(IRLS)をご紹介します。
下記の10個の質問に対して、症状の程度に当てはまる点数(0~4)をお答えください。合計点数を元に評価します。
①:ここ1週間、むずむず脚症候群(以下RLS)による脚や腕の不快感はどの程度でしたか?
0点:全くない
1点:弱い
2点:中くらい
3点:強い
4点:とても強い
②:ここ1週間、RLSによる動き回りたいという欲求はどの程度でしたか?
0点:全くない
1点:弱い
2点:中くらい
3点:強い
4点:とても強い
③:ここ1週間、RLSによる脚や腕の不快感は、動き回ることでどの程度和らぎましたか?
0点:そもそも症状がなかった
1点:完全に、または、ほとんど症状がなくなった
2点:大きく和らいだ
3点:少しだけ和らいだ
4点:全く和らがなかった
④:RLSによりあなたの睡眠はどの程度、妨害されますか?
0点:全く悪影響なし
1点:少しだけ
2点:中くらい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
⑤:RLSによる日中の疲労感・眠気はどの程度ですか?
0点:全くない
1点:少し
2点:中くらい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
⑥:RLSの症状は全体的にどの程度ですか?
0点:症状なし
1点:少し
2点:中くらい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
⑦:RLSの症状が起こる頻度は?
0点:全くなし
1点:週に1度
2点:週に2〜3度
3点:週に4〜5度
4点:週に6〜7度
⑧:RLSの症状は1日平均でどの程度ありますか?
0点:全くなし
1点:1時間未満
2点:1〜3時間
3点:3〜8時間
4点:8時間以上
⑨:RLSの症状のあなたの生活への影響度合いは?(家庭・社会・学校生活、仕事など)
0点:全くなし
1点:少し
2点:中くらい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
⑩:RLSの症状のあなたの精神への影響度合いは?(イライラ、不安、憂鬱など)
0点:全くなし
1点:少し
2点:中くらい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
合計点による症状の程度は、以下のように分類されています。
01~10点:軽度 11~20点:中度 21~30点:重度 31~40点:最重度 |
一般的に15点以上だと日常生活に悪影響があるため、改善のための対策が必要となります。また、症状が重度だから改善が困難、という訳ではありませんのでご安心ください。
4. むずむず脚症候群への対策
対策は大きく分けて3つあります。最初に考えるべきは、①原因の可能性がある病気の治療、薬剤の服用を中止することです。それと並行して②あなた自身で行える対策も取っていきましょう。それでも改善しない、もしくはそもそも①の可能性がなく症状が重度の場合は、③医療機関での薬物療法を検討しましょう。
(※老若男女、一次性、二次性の違いに関わらず、対策は共通です。)
動画での解説を加えました。
1:30~のところで解説しているテニスボールでの対策がまずはおすすめです。
①原因の可能性がある病気の治療、薬剤の服用を中止する
あなたは現在、何らかの病気を患っていて、薬剤を服用してはいないですか?下記3つのお薬は、むずむず脚症候群の原因になるうる最も代表的なものです。
- ドパミン阻害薬
- 抗うつ薬
- 抗ヒスタミン薬
仮にこれらの薬剤を服用している場合、まず診断医・処方医にむずむず脚症候群の症状を説明しましょう。例えば、鉄欠乏の場合、鉄剤を服用することで改善が見られたり、服用中の薬の種類の変更・減量により症状が改善することがあります。
とはいえ、服用中の薬を減量すると元々の病気が悪化することもありますので、主治医とよく相談しながら行うことが大切です。
②あなたで行える対策
あなたが日常生活の中で行う、もしくは制限することで改善が見込める対策があります。特に症状が軽い場合、改善の見込みがより期待できるので是非、取り組んでみましょう。
- カフェイン、アルコール、ニコチンを避ける
これらの薬理作用によって症状が悪化するので、摂取を控えるようにしましょう。元々これらの摂取量が多い方だと、制限をするだけで症状が大きく改善することもあります。 - ウォーキング、エアロバイク、マッサージを行う
安静にしているとむずむず脚症候群の症状が出やすいため、下半身の動きが伴う軽い運動をすると症状の緩和が見込めます。体を動かすことによりドパミンの分泌量が増えるため緩和する、と考えられています。 なので、眠るまえに少しウォーキングをしたり、エアロバイクや昇降機など室内でできるエクササイズ、マッサージを行うと良いかもしれません。激しい運動は症状を悪化させますし眠気を覚ましてしまうので、お控えください。 - 食生活を見直す
鉄の欠乏が主な原因なので、鉄分が豊富な食事をとることでも改善が見込めます。例えば、レバー、卵、海藻類、魚介類などには鉄分が多く含まれています。また、鉄のサプリメントや鉄分が豊富な漢方薬を服用することもおすすめです。
③医療機関での薬物療法
医療機関を受診して薬剤を処方してもらう方法です。生活に支障をきたさずに症状の改善が見られることもあるので、改善のための選択肢の1つとして頭に入れておきましょう。
健康保険適用の処方薬
むずむず脚症候群に効くとされる薬はいくつかあり、医師が症状を診断した元に適切なものが処方されます。代表的なものは以下の通りとなっています。
- プラミペキソール(ビ・シフロール錠):2010年から保険適用されている錠剤タイプのお薬です。副作用に吐き気や強い眠気などがあるので、服用中の行動に注意が必要です。
- ガバペンチン エナカルビル(レグナイト):抗てんかん薬のガバペンチンを改良品で、痛み・不眠を伴う症状を訴える方には処方されることが多いですが、眠気の副作用があるため日中の服用には注意が必要です。
- ロチゴチン(ニュープロパッチ):錠剤ではなく貼り薬です。皮膚から薬剤を吸収し肝臓で代謝するので、腎機能が低下した方でも安心して使用できます。(上記2つは腎排泄型。)
受診するべき診療科
医療機関を受診される場合の診療科ですが、先ずは「神経内科」を受診しましょう。
むずむず脚症候群は脳内(神経)で起こる症状だからです。お近くの神経内科を設置している医療機関で、むずむず脚症候群の診断・治療の経験が豊富なところを探して受診しましょう。
皮膚や筋肉の問題ではないので、皮膚科や整形外科を受診されないようご注意ください。
まとめ
あなたの脚の「ムズムズ感」の原因は分かりましたか?
原因と特定しきちんと対策をすれば、症状が改善する見込みが非常に高いので、今日から対策を行いましょう。
なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
関連記事