「ついに明日は期末試験だ。」
「明日の社内プレゼンに出世がかかっている。」
大事なことが控えている前日は緊張して眠れなくなってしまいます。眠れずに睡眠不足気味になってしまうと、翌日に本調子が発揮できなくなるかもしれません。
そこで今回は、「緊張して眠れないときの原因」と「睡眠学に沿った対処法」をご紹介します。
※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。 |
Contents
1. 副交感神経を優位にすることで緊張が解けて眠れる
睡眠学上、緊張して眠れない主な原因は、「自律神経の乱れ」です。
・自律神経とは あなたの身体全体に張り巡らされている神経。あなたが「意識しなくても活動している身体の器官」をコントロールしています。例えば、心臓が身体中に血液を送っていたり、ご飯を食べたら胃が消化してくれたり、これらは全て自立神経がコントロールしています。 |
そしてこの自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経から成り立っています。この2つの神経は表裏一体の関係で、正反対の働きをします。
・交感神経とは 活動時や興奮・緊張しているとき、ストレス下で働く。瞳孔が広がる、心拍数が増える、覚醒度が上がる、という反応が身体に現れます。 ・副交感神経とは 休息、リラックス時に働く。脈拍を抑える、消化を促す、覚醒度を下げる、という反応が身体に現れます。 |
通常、夜間になると副交感神経が優位になり、脳と身体が睡眠モードになり眠気が生じます。しかし、何らかの原因で緊張していると、交感神経が優位になったままになってしまい、覚醒状態が続き眠気を催さなくなってしまいます。
そのため、緊張していて眠れないときにオススメの対処法は、副交感神経が優位になるような環境作り、体内調整、リラックス法を行うことです。
2. 副交感神経を優位にする5つのステップ
それでは次に、副交感神経を優位に導く方法の中から、特に用意を必要としないものステップ形式でご紹介します。
(1)眠れなくても環境を就寝モードにする
眠れないからと言って、明るい部屋でテレビを見たり、パソコン・スマホを使っていませんか?このような光や音、情報が刺激となり余計に脳が覚醒させられます。
そのため、眠気があまりないとしても環境を就寝モードにする必要があります。具体的に言うと、以下のように環境を就寝モードにすることで副交感神経が優位になりやすくできます。
部屋の照明を暗くする
部屋の照明が明るいと「睡眠ホルモンのメラトニン」の分泌が抑制されるため、眠気を催しづらくなるので早いうちから部屋は暗めにしましょう。
早いと思われるかもしれませんが、夕食後から明かりを落としてみましょう。
テレビ、パソコン、スマホ、ゲームの照度・音量をできる限り下げる
デジタル機器の照度と音量は出来るだけ最低レベルにまで下げましょう。強い光や音の刺激は交感神経が優位にします。
スマホ画面の光であっても、メラトニンの分泌を抑制するほどの明るさがあります。
コンテンツは落ち着けるものを選ぶ
ホラー・エキサイト・爆笑系の動画コンテンツの閲覧も交感神経が優位になるので、就寝前は控えましょう。
動画を見るのなら犬猫などのほんわかした内容のものなら、心が落ち着き就寝モードになりやすいです。
(2)体温のコントロール
交感神経が優位になって眠れないとき、時期的なものもありますが、「興奮気味で身体が火照る場合」と「不安で身体が冷える場合」があります。
睡眠のメカニズムと体温には、密接な関係があります。就寝前の体温を睡眠のメカニズム通りにコントロールできれば、緊張していても眠りやすくなります。
以下のグラフは就寝前・中・後の体温を表したものです。
重要な点は以下の2つです。
- 入眠前の指先皮膚温の上昇
- 入眠後の深部体温の低下
ヒトは睡眠中に脳と身体を効率的に休めるために体温を下がる必要があります。約1.5度も低下します。これほど急激に体温を下げるために、入眠前に手足から熱を放出するのです。
そうです。この体温の上げ下げを意図的に行うことで、眠りやすくなるのです。そこで、体温の状態に合わせて以下のような対処法を行いましょう。
身体が火照っている場合: ・ぬるま湯、冷ためのお風呂に入浴する。 ・エアコン・扇風機を使用する。 ・冷感枕・氷枕を使用する。 |
身体が冷えている場合: ・就寝の2時間ほど前に熱めの風呂に入浴する。 ・就寝の1時間ほど前に足湯をする。 ・暖かい飲み物を飲む。 |
ゆっくりリラックスしながら行えるので副交感神経を優位にすることができ一石二鳥の効果が得られます。
※就寝前に身体を温める際は、体温が上がりすぎて寝つきを悪くしないよう注意しましょう。また、ココアを飲むことを推奨されることがありますが、ココアにはカフェインが入っていることが多く、眠れなくなる原因になるのでココアはお控えください。
(3)難解な書籍を読む
学校の授業で退屈に感じたときや、学会のセミナーで内容が難しく感じたときに、眠気に襲われたことはないでしょうか?
人の脳はストレス(退屈・難しい)を感じると、βエンドルフィンという神経伝達物質を分泌し、ストレスを排除しようとします。「脳内麻薬」とも呼ばれるこのβエンドルフィンは、鎮痛効果や高揚感・幸福感をもたらします。この脳内物質の作用により、難解な本を読むことは緊張をほぐす入眠効果があると言えます。
難解な書籍と言えば、哲学。ということで以下に、学生時代の私を何度も睡眠の谷に突き落とした哲学者達の理論を説明しているブログへのリンクを貼ります。
・「我思う、故に我あり」 デカルト
・「神は死んだ」ニーチェ
内容は興味深いのですが、言葉が難解なためやはり眠気を催します。スマホやパソコンの照度を下げてご覧になってください。
(4)筋弛緩法を行う
筋弛緩法とは、「筋肉を意図的に緊張させてから緩める」ことで、心と身体をリラックスさせる方法です。
不眠指導の代表的な技法として知られ、以前にもご紹介した通り、リラックス効果が高いので眠れないときの対処法にぴったりです。 自然と副交感神経が優位になることが期待できます。
次の3ステップで行います。
1. 身体の特定の部位に、ぎゅ〜っと力を入れる。
(全力ではなく、70〜80%の力で行ってください。)
2. そのまま5〜6秒キープする。
3. スーッと脱力し、10秒ほど力の抜ける感覚を味わう。
大切なポイントは、「脱力を思いっきり感じる」ことです。脱力感を意識することで、リラックス効果がさらに高まります。 それでは、部位別の具体的なやり方をイラストと共にご紹介します。
・筋弛緩法で手と腕のリラックス
- 拳をぐ〜っと握りながら、手首をゆっくり返していきます。
- そのまま5〜6秒キープ。
- 脱力。10秒ほど力の抜ける感覚を味わう。
・筋弛緩法で脚のリラックス
- 脚を伸ばした状態で、アキレス腱をぐ〜っと伸ばします。
- そのまま5〜6秒キープ。
- 脱力。10秒ほど力の抜ける感覚を味わう。
身体の各部位を別々におこなっても、一緒におこなってもOKです。どこの部位を何回やろうなどと決める必要もありません。脱力感を味わえれば、心も身体もリラックスできています。
(5)深呼吸をする
深呼吸のリラックス効果が高いのはご存知と思いますが、具体的なやり方を知らない方も多いと思います。
そのような方は「4-7-8呼吸法」を参考に行いましょう。
アリゾナ大学医学校で教鞭をとるかたわら、健康医学研究者としても知られるアンドルー・ワイル氏が広めた呼吸法です。1分間でリラックス状態に導きます。以下のように行います。
1. 息を吐き切ります。 2. 鼻から息を4秒吸い込みます。 3. 息を7秒止めます。 4. 息を8秒で吐き切ります。 |
これを1セットとし、3回行うとたった1分間でもとてもリラックスできます。
世の中には入眠効果のある深呼吸法がいくつかありますが、「4-7-8呼吸法」は以下の点で優れているのでオススメです。
- 動作が秒数で区切られているので、手順が分かりやすい。
- 呼吸をしながら数字を数えることで、無駄な雑念が生まれにくい。
是非、ベッドの中でお試しください。1分間で眠気が感じられると思います。
※動物の力を借りる
アニマルセラピーというセラピー手法があるほど、動物との触れ合いには癒やしの効果があります。
とはいえ、緊張を解すために動物は飼うものではありません。そこでおすすめなのが、動物の写真や動画を見たりして、心を落ち着かせることです。一時的な気休めと言えば元も子もありませんが、0よりは良いと思います。
まとめ
全て行う必要はありません。気軽にできるものからお試しください。ご紹介の内容であなたの緊張がほぐれて、スッと眠れるようになれれば幸いです。
なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
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