午後、昼食を食べた後、14時頃になると眠くなる。
このような午後の眠気は、生理的現象なので避けられません。ただ、午後の眠気が全くない人から、ひどい人までかなり個人差があります。この差にはやはり生理現象では片付かない原因がかくれています。
午後の眠気を無くせるなら無くしたいですよね。
そこで本日は「午後の眠気のメカニズム、原因と対策」についてご紹介します。
※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。 |
Contents
1. 午後のひどい眠気を生じさせる原因と対策
私自身、睡眠に詳しくなる前は、午後の眠気に悩まされていた1人でした。ただ、今となっては午後に眠気を感じることはありません。それは午後に眠気を生じさせる原因(生活習慣)を無くしているからです。
ポイントは3つあります。是非あなたも試してみてください。
1−1. 昼食の内容で覚醒維持物質を低下させないようにする
まず、昼食により眠気が生じるプロセスを図解すると以下のようになります。
オレキシンとは脳内の覚醒維持物質のことです(睡眠薬スボレキサントはオレキシンの働きを阻害して作用します)。
オレキシンの機能は多岐にわたるが、もっとも中心的な機能は覚醒を促し維持することである。そして交感神経を活性化して、ストレスホルモンの分泌も促す。モチベーションを高めて、全身の機能を向上させる。意識を清明にし、注意力を引き出す。
(引用:『睡眠の科学』 櫻井 武 著)
そしてこのオレキシンの分泌が、「満腹になる」ことと「血糖値が上昇する」ことにより抑制されるのです。
ということは反対に、昼食の量を「腹八分目に抑え」て、「血糖値が上昇しにくいもの」を食べることで、オレキシンの分泌が抑制されることを抑えられるので昼食後の眠気を起こしにくく出来るようになるのです。
腹八分目についてはあなた自身の感覚でわかると思いますが、血糖値が上昇しにくい食べ物(いわゆる低GI食品)と言われてもピンと来ないかと思います。そこでいくつか具体例を出すと以下のようになります。
- 低脂肪のタンパク質(牛肉の赤身、鶏肉(特にささみ)、魚、豆腐、チーズ、ヨーグルト)
- 野菜全般
- 糖質の少ない炭水化物(玄米、全粒粉パン、全粒粉スパゲッティ、そば)
このような昼食を選んでいただくことで食後の眠気抑制にだいぶ役立てられます。食品別のGI値の早見表があったのでご参考までに。
ラーメン、焼きそば、カレー、丼ものなどは美味しいですが、血糖値を急激に上昇させて眠気を起こしやすいので控えるようにしましょう。
1−2. 睡眠の質が悪いなら改善を
次に、前夜の眠りの質が悪いがために日中に強烈な眠気が生じている可能性があります。
睡眠の質を下げる要因は人によってさまざまですが、よくあるのは以下のものです。
- アルコールの摂取
- 高脂肪で糖分の多い食事
- 入眠前に体温が上がる活動
- 夜間の光の刺激
- 入眠前に脳が活発になる活動
- カフェインの摂取
これらの要因を避けるだけで睡眠の質をかなり高めることが期待できます。このようなポイントを下記のページでまとめているので参考にしてください。
関連記事なお、もしあなたが睡眠時無呼吸症候群などのような睡眠障害により眠りの質を悪くしており、そのために日中に強い眠気を感じるのなら、病院・睡眠外来に行くのが一番です。
1−3. 睡眠時間が足りないなら眠るしかない
また、睡眠の質がいくら良くても、睡眠時間の絶対量が足りていないとやはり午後に眠気が生じます。
例えるなら、睡眠不足をコツコツ続けて多大な睡眠負債を抱えてしまったため、日中の眠気としてその利子が無理矢理天引きされている状態です。
運の良いことに、睡眠負債の返済方法はとても簡単です。ただ、眠るだけです。むしろ、眠ることでしか返済出来ないと、スタンフォード大学のウィリアム・ディメント教授がおっしゃっています。
大きな睡眠負債が自然に無くなることはありません。神経系から離散していくこともありません。余分に眠ることでのみ減らせられます。わずか1~2時間の睡眠不足でも数週間積み重なると、講義や運転などのつまらない活動中に寝落ちさせる深刻な生理的眠気につながる可能性があります。
(引用: William C. Dement, MD, PhD. Sleep Extension: Getting as Much Extra Sleep as Possible.)
睡眠負債を返済していく上で、気をつけていただきたいことがあります。
- 返済開始時の負担が大きいこと
- 完済に約3週間かかること
この2つです。
詳しくはまた別の記事で説明しますが、スタンフォード大学の同教授によると、1日たった40分の睡眠負債でも返済しようとすると、最初の4日間は1日12時間以上の睡眠が必要で、10日経っても1日10時間の睡眠が必要でした。そして、最終的に3週間経ってようやく睡眠負債が完済出来たと報告されています。
夜更かししないよう早めに寝たり、生活に昼寝を取り入れるなどして、とにかく睡眠時間を増やしましょう。そうすることで日中の眠気を無くすことが出来ます。
なお、もしあなたが昼寝の出来る環境で働いているのなら、大人しく昼寝をするのもいいでしょう。上手な昼寝方法については下記ページで紹介しています。参考にしてください。
関連記事※そもそも午後に眠気が生じるのは生理的現象
ただ、午後になると眠くなるからといって悩みすぎてはいけません。
これは世界中の人たちに共通する生理現象だからです。私たちの体は、夜に眠くなるのと同じように昼過ぎにも眠くなるようになっているのです。そう、生体リズム(体内時計)です。
もう一つの考えは、時刻に依存したもの、つまり体内時計により午後の時間帯だけに引き起こされる積極的な現象という可能性もある。私たちは、こうしたことを確かめるために実験を行った。その結果、午後の早い時刻には、食事をとった、とらないに関係なく一過性に眠気が出現するが、夕方に向けてこれが減少していくこと、全体に体内時計のリズムが遅れていると午後の眠気が出現する時刻も遅れることなどから、午後の眠気は体内時計によって昼の時間帯に引き起こされる現象と考えた。
(引用:『睡眠のはなし』 内山真 著)
生体リズムにはいろいろありますが、朝目覚めて夜眠る1日のリズムをサーカディアンリズム(Circadian rhythm)と呼び、朝目覚めて昼過ぎに眠くなるリズムをサーカセミディアンリズム(Circasemidian rhythm)と呼びます。ラテン語なので分かりにくいですが、日本語に訳すとそのままの意味です。
ただ、午後の眠気が生理現象とはいっても、仕事のパフォーマンスを落としたくないですよね。特に、小さなミスさえ絶対にできない仕事に従事していると、ちょっとした睡魔からの判断ミスが命取りになることもありますよね。電車の脱線事故なんてその最たる例です。
実際に14時は眠気とともに事故リスクが高まると報告されています。
交通量が少なくなるにもかかわらず、事故数が増えるのです。深夜3~4時ほどではありませんが、午後の眠気が生じる14時も要注意な時間帯なのです。
最後に
あなたが午後の眠気と縁を切るための一助になれれば幸いです。
夜間、良質な睡眠を適切な時間取って、低糖低脂肪の食事をすれば日中の眠気はかなり無くすことを期待できます。是非、実践してください。
なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
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