ネズミから睡眠を奪うとどうなるか?
3週間後、そのネズミは感染症で死亡してしまうそうです。眠れないと免疫力が落ちて、回復が出来なくなるからだと考えられます。
もちろん、人でも同じです。それがどれくらいのインパクトがあるのか研究データをお見せしながら「睡眠と免疫の関係」についてお伝えします。
※こちらのページ『睡眠不足の悲惨すぎる症状一覧と、改善のための方法』で睡眠不足による心身へのデメリットの総まとめをしました。睡眠不足が気になる方はあわせてご参考にしてください。 |
Contents
1. 睡眠不足だと免疫ホルモンが低下する
睡眠の主な役割は、脳の開発と修復、活動、これら3つです。
睡眠不足になることで、この修復機能の働きが落ちて免疫力が下がります。具体的にいうと、免疫にかかわるホルモンの分泌が妨げられ、それによりウイルスに感染しやすくなると考えられます。
深いノンレム睡眠中には、成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、プロラクチンなどといった代謝や免疫を強める機能に関連したホルモンが大量に分泌され、回復を早めようとします。
(引用:「病気の原因は「眠り」にあった」 宮崎総一郎 著)
逆にいうと、きちんと眠ることで免疫を維持するホルモンが正常に機能し、健康を維持していられるわけです。
2. 睡眠不足だとウイルスの感染率が約3倍になる
睡眠不足になると免疫システムが崩れるメカニズムについてはお分かりいただけたと思います。それでは次に、より具体的に数字でご説明します。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校が2015年に発表した研究論文”Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold”が良い参考になります。その実験内容と結果は下記の通りです。
- 平均29歳で健康な男女164人が被験者
- まず7日間通常の睡眠を測定する
- 鼻から風邪ウイルス(ライノウイルス39)を入れる
- 睡眠時間別にグループに分ける
- 管理された睡眠時間で5日間過ごす
- 各グループのウイルス感染率を調べる
見事な結果です。睡眠時間が減れば減るほど、ウイルス感染率がキレイに高まっています。
なお、私の考えにはなりますが、これはたった5日間の睡眠不足による結果でしかなく、睡眠不足が数十日ともっと続いていくとより感染率は高まっていくのでは見込んでいます。
2−1. 睡眠不足だと予防接種の効果が50%になる
なお、睡眠不足になると免疫が弱るだけでなく、予防接種に対する免疫の構築力も低下します。
フランスのリヨン大学のカリーン・シュピーゲル教授が2002年に発表した論文内の実験によると、睡眠不足になると予防接種の効果が半減すると報告されています。
被験者は平均23歳の健康な男女25名。いつも睡眠時間が7.5~8.5時間の間できちんと眠れており、さらに3年間インフルエンザに罹っていないことが条件の上で選ばれています。
まず被験者は睡眠不足グループ(A)と通常通りの十分眠るグループ(B)に分けられました。Aグループが11人、Bグループが14人です。Aグループは最初の6日間を4時間睡眠で過ごし、7日目から13日目まで睡眠不足を補うために12時間眠るように指示されました。Bグループは13日間ずっといつもと同じように7.5~8.5時間眠るよう指示されました。そして、どちらのグループも実験開始から4日目に予防接種を受け、14日目に血液検査を行い、抗体の出来具合が調べられました。その結果が、下記のチャートです。
白丸の予防接種0日目から黒丸の予防接種10日目にかけて数値が高くなっていると、抗体がよく作られたことを意味します。
左側の睡眠不足の11人は全然抗体が出来ていないことが見てとれます。平均すると、作られた抗体は半分以下だった報告されています。
なお、この実験には続きがあり、睡眠不足グループは予防接種から20日目と31日目にも血液検査を行われたようですが、抗体の出来は悪いままだったとのことです。つまり、睡眠不足になると抗体の出来が悪くなるだけでなく、抗体が出来にくい体になってしまうのです。
3. 防御システム「サイトカイン」が眠りを促す
ちなみにですが、風邪になるとよく眠れますよね?
人はウイルスに感染すると眠くなり、積極的に睡眠を取るようになります。免疫システムが正常に働いている証拠とも言えます。
人が風邪・ウイルスに感染する仕組みは下記の通りです。
- ウイルスが口や鼻から体内へ
- ウイルスが細胞に侵入して感染
- 細胞が壊され症状(咳や喉の痛み)が発生
- 免疫細胞(マクロファージ)が異常を検知
- 防御システム(サイトカイン)発動(発熱)
例えば、熱が出ている状態というのは、「外敵が来たぞ!退治だ!」とサイトカインが警報を出して他の細胞たちに知らせているときの反応の1つで、脳の体温中枢が刺激された結果なのです。
このサイトカイン自身がウイルスと戦ってもいるのですが、眠りを促すようにも働いているのです。
肺のなかにインフルエンザウイルスが入り込むと、白血球が免疫反応を行うインターフェロン(サイトカインの一種)をつくり出します。インターフェロンはウイルスの増殖を抑えるとともに、脳に働いて熱を出し、ノンレム睡眠を増やすのです。(引用:「病気の原因は「眠り」にあった」 宮崎総一郎 著)
このことから、睡眠は体の防御システム上も大事な役割を担っているのではと考えられています(が、これ以上はまだ解明されていません)。
なお、サイトカインは生理活性物質の総称で数百種類あり、ウイルスの増殖を抑えるものもあれば、睡眠物質の働きを高めるものもあったり、神経細胞の成長を促すものもあります。
つまり、風邪のときはよく眠りましょう、ということです。
まとめ
睡眠は免疫システムの維持を担っています。そのため、睡眠不足になると風邪を引きやすくなるし、予防接種の効果すら落ちてしまうのです。
睡眠は健康な生活の根幹です。きちんと睡眠時間を確保するようにしましょう。なお、適切な睡眠時間を確保したら、睡眠の質を高めるのも大切です。
以下のページでは当サイトでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
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予防効果の低いマスクよりも十分な睡眠をとって免疫を高めるほうが賢明ですね。
森 光様
コメントありがとうございます!
どんな対策をするよりもまずは十分な睡眠が大事ですね。