睡眠

睡眠に問題があると認知症リスクが33%上がる原因

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睡眠不足だとアルツハイマー型の認知症リスクが急増すると報告されています。

  • そのメカニズム(脳で起こっていること)
  • リスクの増加率
  • 眠りすぎのケース

について研究論文をもとに解説していきます。

※こちらのページ『睡眠不足の悲惨すぎる症状一覧と、改善のための方法』で睡眠不足による心身へのデメリットの総まとめをしました。睡眠不足が気になる方はあわせてご参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
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1. 睡眠不足で認知症リスクを高めるメカニズム

睡眠関連で認知症リスクが高まることについて有力な仮説があります。

それが「アミロイドβが脳に蓄積すること」です。

アミロイドβとは:
脳内タンパク質。脳の老廃物であり、神経を損傷すると考えられている。

通常、日中に溜まったアミロイドβは、睡眠中に脳内から排出されるようになっています(専門的にはこれをグリンパティックシステムと呼ぶ)。

しかし、睡眠が短いことや質が悪いことで、この大掃除が不十分になってしまうからか、アミロイドβが脳内に溜まったままになってしまうと、ワシントン大学の研究から報告されています。

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睡眠効率が悪いほどアミロイドβが溜まっている

一目瞭然ですね。

睡眠効率が悪い人ほど、アミロイドβが溜まっていることが分かります。

睡眠効率とは:
ベッドにいた時間のうち眠っていた時間。睡眠効率が悪いとはつまり、寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めていることを意味します。

なお、睡眠効率が最悪のグループは最良のグループに比べて、5.6倍ものアミロイドβが溜まっていたとも報告されています。

このような背景から、睡眠不足や不眠だけでなく、睡眠障害により睡眠の質が下がることでも、認知症発症リスクを高めると報告されています。

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睡眠障害と認知症の関係

1-1. 睡眠に問題があると認知症リスクが33%上がるとの論文データ

スウェーデンのウプサラ大学が行った40年の追跡調査によると、睡眠に問題があると認知症リスクが増すと報告されています。

被験者は50歳の男性1574人で、彼らのなかから睡眠に問題があると答えたグループと、問題なしと答えたグループを比較したところ、睡眠に問題があるグループは、

  • 認知症:33%
  • アルツハイマー病:51%

それぞれ発症リスクが高かったされています。

そのため、睡眠に問題があると何かしらの原因で認知症リスクが急増すると言えるのです。

ただ興味深いのが、この研究では、被験者が70歳、77歳、82歳になった時点で、睡眠に問題ありグループとなしグループのアミロイドβ量を調べたところ、大して差がなかったとも報告されています。

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睡眠に問題があろうがなかろうがアミロイドβ量は変わらず

ただそれとは別に、神経特異エノラーゼ(NSE)とS100タンパク質(S-100B)という、脳に損傷を与えると考えられる物質が増えていたとも報告されています。

そのため、根本的な原因はまだ分からないものの、睡眠の質が悪いことで脳に損傷が与えられ認知症リスクが高まる、というのが現時点で分かっていることなのです。

また、カリフォルニア大学アーバイン校の研究に興味深いものがあります。

一晩の睡眠が5時間以下だった研究参加者は、実際には見ていないニュースのビデオを見たと答える率が大幅に高かったと言う。また、このグループは、研究者が提供した嘘の情報を自分の個人的な話に取り込んでしまう率も高かった。

(引用:『スリープレボリューション』 アリアナ・ハフィントン 著)

ちなみに、被験者は104名の大学生とのことですが、若い人でもたった一晩の眠りでここまで認識が歪められることを思うと、ちりも積もって認知症、ということも簡単にイメージできますね。

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睡眠時間が短いと嘘の記憶を作り上げてしまう

1-2. 短い昼寝は認知症リスクを84%下げるが、60分以上の昼寝だと200%高める

昼寝は認知症予防に効果があるのではと考えられています。

帝京大学医学部が高齢者を対象にした研究では、短い昼寝(特に30分未満)をしている人はアルツハイマー型認知症になるリスクが短いことがわかったと報告されています。

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昼寝の長さとアルツハイマー型認知症リスクの関係

しかしその一方、昼寝の時間が60分以上の高齢者は、同リスクが2倍以上にもなることが分かったのです。

なぜだか不思議ですよね。

この違いについて説明すると、短い昼寝をとると夕方の居眠りを防ぐことができて夜間の眠りの質を高められるものの、昼寝が長くなりすぎると夜間の眠りを浅くすることがあるから、と考えられています。

現に、国立精神・神経医療研究センターの行った研究によると、30分の昼寝をとることで、

  • 夜中の目覚めが減る
  • 睡眠効率(ベッドにいる間眠っていた時間)が向上する

ことが報告されています。

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短い昼寝は夜の眠りを助ける

1-3. 眠りすぎは認知症リスクを高めるとはまだ言い切れない

ちなみに、睡眠と認知症がテーマになると「眠りすぎはよくない」とよく言われます。

しかし、眠りすぎがダメ、とは一概には言い切れません。

例えば、南カリフォルニア大学の研究で、高齢の女性の睡眠時間と認知症リスクについて調べられたもの。

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睡眠時間の長さと認知症リスクの関係

ご覧の通り、8時間以上眠っている人は認知症リスクが高くなっています。

しかしそもそも考えてほしいのが、高齢者の睡眠時間は短くなるということです。

この研究の対象は7444人の高齢者女性(平均年齢70.1歳)なのですが、この年齢の人に適切とされる睡眠時間は6時間前後と言われているんですね。

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人の睡眠時間は加齢により短くなる

70歳ともなると、8時間眠りたくても眠れないのが普通です。

つまり、このケースの8時間睡眠は「眠りすぎ」というよりも、「睡眠に何かしらの問題がありその結果睡眠時間が長くなっている」という状況が大いに考えられるわけなんですね。

なので、一概に睡眠時間が長いのが悪いと決めつけるのではなく、睡眠時間が長くなっている背景に何か問題がないか考えるのが適切なのです。


最後に

睡眠と認知症(アルツハイマー病)の関連についてご理解いただけていれば幸いです。

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