「夜ぐっすり深く眠って、朝スッキリ起きる。日中は元気に過ごしたい!」
誰にでも共通する気持ちだと思います。熟睡できると身体の調子が良くなり、仕事や家事にも張り合いが出るので、より良い生活が送られます。
しかし、朝起きたときに疲れやダルさを感じると、熟睡できているか気になると思います。
そこで今回は、睡眠のメカニズムに基づいた「熟睡する方法」と「熟睡するために避けるべきこと」をご紹介します。また、取り組みのモチベーションとなるように「熟睡がもたらす嬉しいメリット」、そして最後におまけとして、「スッキリ目覚めるテクニック」を4つ、併せてご紹介します。
全て簡単に取り組めて効果的な内容です。あなたの生活に取り入れていただければ、より良い生活を送っていただけることをお約束します。
なお、当ページでは熟睡する方法をご紹介していますが、その方法をあなたが実践しやすいようにチェックリストに◯、✕、△を付けて目標をたてる『今日からできて効果抜群!睡眠の質を高めるチェックシート』をご用意しました。是非、併せてご参考にしてください。 |
1. 熟睡とは何か?
睡眠にはメカニズムがあります。熟睡のカギは「脳と身体のコンディションを睡眠のメカニズムに上手く合わせ、深い眠りを十分にとること」です。
下の睡眠グラフをご覧ください。深さの変化を表したものです。
(参考:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
既にご存知かもしれませんが、各用語の説明をします。
人の眠りの特徴として、眠りの最初の3時間に深い睡眠(赤い部分)が現れます。この深い眠りを存分にとることで「熟睡した!」と感じられるのです。
今回ご紹介する「熟睡する方法」は、この「眠りの最初の3時間を効率的に深くする」もの です。
2. 熟睡するための4大要素
それでは、「眠りの最初の3時間を効率的に深くする」にはどうすればよいか?
多くの睡眠研究と実験により、4つの要素(脳と身体のコンディション)を睡眠のメカニズムに合わせることが大切だとわかりました。
これら4つの要素を睡眠のメカニズム通りにコントロールすることで熟睡できるようになります。それでは次に、その方法論を生活の中でできる具体的な内容でご紹介します。
2−1. 光を熟睡に利用する
なぜ光を利用すると熟睡できるのかと言うと、光は「睡眠ホルモンのメラトニン」と深い関係があるためです。
メラトニンは以下の2つの働きにより、熟睡を促します。
メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。①メラトニンは直接的に睡眠作用を持つほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、②深部体温を低くする作用があり、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
メラトニンの睡眠への作用を理解し、その働きに相応しい行動を生活の中で行いましょう。これだけでも、あなたの睡眠が深められます。
それでは、日常生活の中でできる、光を熟睡のために利用する方法をご紹介します
(1)午前中は太陽の光を多く浴びる
「午前中に浴びる日光は僅か30分の量で、睡眠薬1錠分に当たる」 という睡眠学者がいるほど、太陽の光は睡眠の質を上げてくれます。
太陽の光を浴びてから14~16時間後に、体内でメラトニンの分泌量が増え始めます。つまり、7時に起床し朝食をとりながら日光を浴びると、21~23時ごろにメラトニン量が増え眠気を催します。
「朝に日光を浴びてメラトニンがたくさん分泌されるだけで、熟睡できるの?」と思われているかもしれません。しかし、実験によりとても強い相関関係が認められているのです。
アメリカのノースウェスタン大学とイリノイ大学の共同研究では以下の2つのグループの比較実験を行いました。
Aグループ:窓から日光が入る職場で働いている。
Bグループ:窓がなく日光が入らない部屋で働いている。
AグループはBグループよりも173%多くの日光を勤務中に浴びています。それぞれのグループに属する人の生活や睡眠を比較したところ、以下のことがわかりました。
・Aグループの睡眠はBグループより46分間長い。
・Aグループの方が活発に行動する傾向がある。
・Aグループと比較してBグループは全体として、睡眠の質や睡眠障害のスコアが低いだけでなく、身体的問題や活力のスコアも悪い。
午前中に日光を多く浴びているAグループは、ぐっすり眠れていて、日中の生活がより活発で、健康的 でもあります。午前中に浴びる日光と熟睡の関係だけでなく、睡眠の大切さもわかる研究結果ですね。
もしあなたが午前中に日光をあまり浴びない生活を送っていたら、とても大きな熟睡効果があるので是非お試しください!
(2)夕食後は部屋の明るさを落とす
しかし、夜間に浴びる光は控えなければなりません。夜間の光はメラトニンの分泌を抑制する働きがあります。下の表をご覧ください。
日本の一般的な家庭の照度は300~500ルクスですが、この程度の明るさでもメラトニンの分泌を抑制してしまいます。そのため、夕食後は室内の照明を暗めに しましょう。
そうすることでスムーズに入眠でき、寝入りばなの睡眠を深められます。
ご家庭の照明の明るさが調節できないものでしたら、暖色の間接照明を使うのも良い方法です。落ち着きのある色味で、直接的な光の刺激が少ないためです。
(3)眠るときは真っ暗より少し明るくする
眠るときの部屋の明るさも熟睡に大切です。「真っ暗だったらいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし完全に真っ暗の状態(0lx)よりも、多少明かりがある環境(0.3lx)の方が、深い睡眠がえられた 、との実験結果があります。なので、もしあなたが外からの光を完全に遮るようなカーテンを使っている場合、カーテンに少し隙間を開けて、外からの光を少し入れると深い睡眠がえられます。
また人によっては、眠るときの環境が仕方なく明るい場合もあると思います。シフト勤務で明るい時間帯に眠る方や、眠るとき伴侶がベッドで読書をする方が代表的です。その場合は、薄手の肌着などをアイマスク代わりに使うことをオススメします。通常のアイマスクよりも3つの点で優れています。
- 薄手なので完全に真っ暗にならない。
- 目の上にのせるだけなので睡眠中に勝手に落ち邪魔にならない。
- 耳に引っ掛けないので耳が痛くならない。
眠りやすくなり熟睡に近づけます。是非お試しください。
2−2. 体温をコントロールし睡眠を深くする
眠る前後で人の体温には、2つの大きな変化があります。下の図をご覧ください。0時に眠り7時に起床した人の指先の皮膚温と深部体温(身体の内部の温度)の変化を表しています。
2つの変化の重要なポイントは以下のようになります。
- 眠るまえに手先の体温が1℃上昇。
- 入眠に伴い深部体温が1.5℃低下。
なぜこのような変化が起きるのか?人は眠るとき脳の回復と修復のために身体が省エネモードになり体温が下がります。体温を効率よく下げるために手足や顔の皮膚から放熱します。そのため眠る準備段階で体温が1℃上昇するのです。
この体温のメカニズムを上手に活用することでスッと深い眠りに入ることができます。それでは、具体的な方法をご紹介します。
(4)ぬるま湯・あし湯で身体を温める
眠るまえに意図的に体温を少し上げてみましょう。その後、体温がスムーズに下がるとことで、深い睡眠に入りやすくなります。 特にあなたが冷え性だったり、冬は寒くて眠りづらいという場合、非常に効果的です。
簡単に身体を温められる方法として、オススメのぬるま湯の入浴方法をご紹介します。
・オススメのぬるま湯入浴方法 就寝の1〜2時間前に39℃前後のぬるま湯に15分ほど入浴してください。その際に、お風呂場をほの暗くしてみてください。お風呂場の照明は意外と明るいので眠気を遠ざけてしまいがちだからです。お風呂場の外の照明やバスキャンドルを明かりとして使うと、ちょうど良い具合になります。さらに、ほの暗い中でゆっくりぬるま湯に浸かりながら、ふくらはぎや太ももをマッサージすると心からリラックスできます。好みで落ち着ける香りのアロマや入浴剤を入れるのも良いです。その後、入眠がとても楽になります。 ※ただし、転倒や寝落ちをしないよう、十分気をつけてお試しください。 |
注意点として、熱めのお風呂が好みの方は、就寝の3時間前に済ませましょう。就寝直前に身体の芯が温まりすぎると、その後スムーズに体温を下げづらくなり眠りにくくなります。
また、疲れていて入浴できないときは足湯をおすすめします。
製品:足湯バケツ
価格:1,350円
足湯は実験により入眠効果・リラックス作用が認められています。特に冷え性の方におすすめです。
私のオススメの足湯法は、42℃前後の少し熱めのお湯に、くるぶしまで足を入れましょう。たった10分ほどでも身体全体が温まり、とてもリラックスできます。その後、体温が下がるに従いスムーズに眠れます。口の広いバケツにお湯を入れ、リビングの椅子やソファに座りながら足湯をするとリラックスできます。
是非お試しください。
(5)熟睡にぴったりな温湿度で眠る
温湿度は睡眠中の体温をコントロールする上でとても重要です。そして、2つの場所で整える必要があります。
- 眠る前の寝室
人が最も気持ちよく感じる室温は、冬では18℃前後、夏では25℃前後です。湿度は年間を通して55%前後です。やや乾燥気味の状態が熟睡にぴったりです。
- 睡眠中の布団の中(寝床内気象・寝床内気候)
こちらは、まだあまり知られていませんが、適切な体温を保つ上でとても大切です。布団の中の温湿度環境を「寝床内気象」と呼びます。眠るときに実際に肌で感じている温湿度です。これは年中変わらず、温度33℃前後、湿度50%前後と、暖かく乾燥した状態が、最も気持ちよく感じられます。
「部屋の温度が睡眠にとって大切なのはわかる。でも湿度もそんなに大事なの?」と思われているかもしれません。湿度が睡眠に大きな影響を与える例として、以下の実験があります。
実際、裸のままで室温を29℃にした中性温度で眠ってもらった場合、湿度を50%から75%へと上げると、夜間睡眠中であるにもかかわらず、体温は約0.1℃上昇しました。さらに、室温を35℃に設定した場合、湿度を50%から75%に上げると、体温は約0.4℃上昇しました。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
湿度の高い環境で眠ると、体温が上がってしまうのです。上で述べたように、睡眠に伴う体温の低下は熟睡にとても重要です。そのため、湿度が高いと睡眠の質が悪くなってしまいます。しかし布団の中の湿度は、エアコンや扇風機ではコントロールできません。そのため、寝具は通気性・吸放湿性の高いものを選ぶ必要があるのです。
結論を言うと、寝室を季節に合った適温にし、通気性・吸放湿性の良い寝具を使えば、快眠に相応しい温湿度が再現できます。
また、エアコンや扇風機を上手に使うコツ が3つあります。熟睡に大切な内容なのでご紹介します。簡単な方法なので、ぜひ実践してみてください。
- 就寝前にあらかじめ部屋を適温にする
夏場、「よし、寝るぞ」というときにエアコンをつけても、「部屋の温度がおちつくまでに時間がかかり、暑くてなかなか眠りにつけなかった」という経験はないでしょうか。就寝の30分前から寝室のベッドや壁を冷やしてみてください。スムーズに入眠ができ睡眠の質を高めることができます。冬場も同じく、事前に部屋を暖めて置いたり、ゆたんぽなどでベッドの中を暖めておくことで、寒さで身体が緊張することがなくなりスムーズに眠りに入れます。 - ベッドを壁から10cm離して置く
ベッドが壁に接して置いてあると、エアコンの冷気や暖気が壁をつたって降りてきて、あなたの身体に直撃します。夏は身体を冷やしすげてしまいますし、冬は乾燥でのどを悪くする原因になります。睡眠の質を下げるだけでなく、体調を壊す恐れがあるので、ベッドは壁から離しましょう。さらに、ベッドが壁に接していると壁とマットレスにカビが生えやすくなります。空気の流れが悪くなり、湿気が滞留しやすくなるためです。 - 扇風機を足元から当てる
「熟睡のために部屋の湿度を調整したいが、除湿機は高価だし」という方にオススメの扇風機の使い方です。そよ風を足元から当てると、湿度の高い環境でも睡眠の質が上げられます。驚愕の実験結果があります。
室温32℃、湿度80%の環境下で眠ると、暑くて何度も目が覚め、睡眠効率が78%となりましたが、足元から秒速1.7mのそよ風を送ると中途覚醒が少なくなり、睡眠効率が95%へと大幅に改善しました。この結果は、室温26℃、湿度50%の快適環境下のもとで眠ったときの96%と同等でした。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
タイマーを忘れずに付けてください。そよ風でもずっと当たっていると身体が冷えてしまい、朝起きにくくなってしまいます。私はタイマーを4時間に設定していますが、エアコンなしでも快眠できます。とてもオススメの熟睡方法です。
また、『夏のエアコンと扇風機の上手な使い方』もご紹介していますので、寝室の温湿度に凝りたい方は是非ご一読ください。
2−3. 運動で深い睡眠を得る
「運動が睡眠の質を上げる」ことはご存知と思います。しかし闇雲に運動をすると、睡眠に悪い影響を与えてしまいます。
なので次に、睡眠のメカニズムを踏まえて運動をする方法をご紹介します。
(6)夜間に運動する
習慣的に運動をされている方は必読です。
運動をする上で、熟睡に効果的なタイミングがあることはご存知ですか?「夜間の運動が最も熟睡に効果がある」 と足利工業大学の吉田弘法教授の行った実験により報告されています。
・実験内容 運動習慣のない男子大学生5名が60分の辛くない程度の有酸素運動(50分のエアロビクスと前後に5分のストレッチ)を行う。朝(07:40 – 08:40)に運動を行う週、夕方(16:30 – 17:30)に行う週、夜間(20:30 – 21:30)に行う週、の3パターンで睡眠にどのような違いが現れるかを実験。実験の間、学生は大体23時30分に就寝し7時30分に起床。 |
そして驚くべき結果が出ました。
その結果は、夜の運動で入眠潜時が有意に短縮して、睡眠前半の徐波睡眠(ジョハスイミン: 睡眠段階3と4の深い睡眠を指す)が有意に増加しました。睡眠の心理的評価でも、入眠感(寝つき感)や熟眠感が有意に改善されました。さらに、図に示すように、翌日の日中の眠気を見ると、夜の運動は朝や夕方の運動よりも有意に低下しており、日中の眠気が改善されていました。これらのことから、夜の運動はその後の夜間睡眠を改善する効果があると考えられます。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
つまり、夜間に運動をするメリットをまとめると、
- 寝つきをラクにする。
- 熟睡感を高める。
- 翌日のスッキリ感を高める。
疲れない範囲の運動でも大きな効果があるので、是非お試しください。
(7)体温の上昇具合を考慮する
注意点があります。夜間の運動といっても「就寝予定時刻から何時間前か」によって、するべき内容が変わります。下の表をご覧ください。
なぜなら上で述べたように、運動によって体温が上がったままでは眠りにくく、睡眠の質が下がるからです。
しかし、運動をする時間帯を調整し眠るタイミングに合わせて体温を下げられれば、入眠がラクになり寝入りばなの睡眠を深くできます。
是非これからは、体温の上昇具合に合った時間帯に運動を行ってみてください。
2−4. リラックスして熟睡する
就寝前は、気持ちを落ち着けましょう。睡眠は脳の休息です。脳が興奮したままでは眠れません。
眠る前にできるリラックス法をご紹介します。あなた好みの方法が見つかるはずです。
(8)温かい飲み物でリラックスする
ハーブティーやお茶(ノンカフェイン)の味と香りはリラックス効果があります。あなたの好みのものを、眠る前のリラックスタイムに飲むと熟睡に効果的です。
飲み物の温度が高すぎたり、低すぎたりすると、脳と身体は刺激と感じます。そのため、体温と同じ37℃前後が適温です。落ち着いたまま飲めます。
冷え性の方や寒くて眠りづらいという方は、45℃が良いです。身体を温められます。
(9)音楽でリラックスする
音楽療法というものが存在するほど、音楽のリラックス効果は注目されています。
・音楽療法とは 認知症、心身症、神経症など多くの疾患に効果があると考えられ、世界中で研究が進められています。数多くの臨床実験がされ、効果があると評価されているものもあります。しかし、音楽の好みの問題もあり、科学的な治療法として確立されるには、より多くの科学的根拠が必要な段階です。 |
リラックスという観点では、あなたが音楽を聴いて気持ちが落ち着けられれば十分です。
一般的には、落ち着いたクラシックや、ヒーリングミュージック、川のせせらぎや小鳥のさえずりなどの自然音がリラックスに効果的です。一方、テンポが早く気分が高揚する音楽は、脳が覚醒するので眠る前はオススメできません。
リラックスできる音楽を今聴いてみたいという方は、こちらの記事『発表!無料ですぐ聴ける睡眠の質を驚異的に上げる音楽10選』でご一読ください。
(10)アロマでリラックスする
アロマテラピー(芳香療法)も、音楽療法と同じく、科学的な治療法として確立こそしていませんが、心と身体の不調を癒す方法として、世界中に広まっています。
日本でも多くの実験が行われており、広島大学の小川景子教授により以下の3つの香り成分に、リラックス効果があると実証されました。
- ラベンダー
- セドロール
- ヘリオトロピン
また他に、バニラや沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)の香りもリラックス効果があると考えられています。また、睡眠導入のためのアロマの使い方でしたら、以下のような使い方がオススメです。
- ディフューザーを使い部屋の中でアロマオイルを拡散させる。
- 湯船にアロマオイルを入れて入浴する。
- アロマオイルを染み込ませたティッシュを枕元に置き眠りながら香りを楽しむ。
「アロマを試してみたい!」と思われた方は、以下のようなリラックス効果があるとされる香りのエッセンシャルオイルをお試しください。
製品:ラベンダー エッセンシャルオイル
価格:570円
合成の香りではなく天然抽出のエッセンシャルオイルをおすすめします。
もっと具体的なアロマの使用方法が知りたいという方は、こちらの記事『就寝2時間前からのアロマを使った安眠プラン』で紹介しているので、ご一読ください。
3. 熟睡するために避けるべきこと
熟睡を目指すなら、これからご紹介する5つのことは、絶対に避けてください。たとえ良い生活習慣を送っていても、避けるべきことを1つでも行ってしまうと熟睡できなくなります。
反対に、もしあなたが知らず知らずのうちに、これらの1つを行っていたら控えるだけで、熟睡に大きく近づきます。
(11)長い昼寝・夕方の仮眠
・・・長い間覚醒していればいるほど、その後の深いノンレム睡眠である徐波睡眠が増加することがわかっている。
(引用:『睡眠の話』内山真 著)
長く覚醒していればいるほど、つまり、疲れが溜まっているほど、眠気が強くなり熟睡できるのです。長い昼寝や夕方の仮眠をとってしまうと、眠気が弱くなり熟睡しにくくなります。
とはいえ、日中に眠くなったときに、眠たいまま仕事や家事をするのは非効率的ですね。仮眠には2つコツがあります。このコツを守れば、夜の熟睡を妨げることなく、昼の眠気をスッキリとれます。
- 仮眠は20分以内にする。
20分以上眠ると疲れを取りすぎてしまいます。さらに、睡眠が深くなりスッキリと起きるのが困難になります。あなたが寝入りに時間がかかるのなら、30分を目安に仮眠をとるのも良いでしょう。 - 就寝の9時間前までに仮眠を済ます
あなたの就寝時間が0時の場合、15時以降は仮眠を控えましょう。疲れがあまり溜まっていない状態では、寝つきも悪くなり熟睡しづらくなります。
あなたは会社帰りの電車の中でウトウトしたり、眠ったりしていませんか?夜間はちょっとウトウトするだけで、熟睡に悪影響があるので、なるべく起きているようにしましょう。
(12)寝酒の習慣
「寝酒をするとよく眠れる」という方がたまにいますが、それは誤解です。
たしかに、アルコールは入眠にとても効果があります。緊張をほぐし、体温を一時的に上げた後に下げるので、身体が素晴らしいほどに睡眠モードになります。
しかし、熟睡を著しく阻害します。
・寝酒が睡眠の質を下げるメカニズム アルコール摂取の2〜3時間後、体内でアルコールが分解されるとアセトアルデヒドという物質になります。この物質は交感神経を優位にします。例えば、眠る30分前にお酒を飲むと仮定します。そうすると、眠り始めてから2時間前後に体内でアセトアルデヒドが発生します。つまり、休息に入ったとたん、脳と身体が興奮状態になるのです。その結果、寝入りの睡眠を阻害します。 |
このように熟睡に最も重要な寝入りの睡眠を妨げてしまいます。
また、24,686人の日本人を対象にした調査によると、週1回以上のペースで眠るために飲酒をするのは、男性では48.3%、女性では18.3%もいたそうです。さらに、寝酒の習慣があると睡眠が浅くなり、夜中に目が覚める(中途覚醒)ことが多いと報告されています。
なので、熟睡を目指すのであれば、寝酒は避けましょう。
夜のお酒は禁止!という訳ではありません。ご安心ください。就寝の3時間前の晩酌であれば睡眠への悪影響は少なくなります。お酒を飲むときは就寝の3時間前にしましょう。
(13)就寝直前の夜食
夜食も寝酒と同様、眠りやすくなりますが、睡眠の質を下げます。
・夜食が睡眠の質を下げるメカニズム 食事により上がった血糖値を下げるために、インシュリン(休息ホルモン)が分泌されます。そのため、眠気を感じます。しかし、この状態で寝てしまうと、体内の臓器は食べ物を消化するため活発になっているため、脳が休まりにくくなり睡眠の質が大きく低下してしまいます。 |
なので、熟睡のために夜食は控えましょう。 また夕食は遅くても、就寝の3時間前に済ませると理想的です。
(14)夕食以降のカフェインの摂取
カフェインが覚醒効果をもつことはご存知と思います。どのように作用するかと言うと、
・カフェインの作用 アデノシンという鎮静効果のある神経伝達物質が脳内で伝達される前に、カフェインがブロックすることにより鎮静を妨げ覚醒効果をもたらします。カフェインを摂取すると、30~60分後に血中濃度が最高になります。つまり、この間に覚醒効果が最高になります。そして健康な成人での半減期は2.5~4.5時間。この間に効果が無くなっていきます。 |
一般的にカフェインの作用時間は4時間前後ですが、人によっては効果が8時間も作用することがあります。そのためあなたの身体への作用時間を考えて、飲み物を選びましょう。
カフェイン飲料を夕食以降、取らなければまず問題ありません。以下に身近な飲み物のカフェイン量を表したリストを用意しました。参考にしてください。
烏龍茶や玄米茶にカフェインが入っているのは盲点ではないでしょうか?
「知らずにカフェイン飲料を飲んでいた」という方は、ノンカフェインのものに切り替えてみましょう。すぐに眠りの質が良くなります。
(15)睡眠への過剰なこだわり
熟睡の方法や、熟睡のために避けるべきことをご紹介しましたが、方法論に振り回されると逆効果になります。「絶対にこの方法を1週間続けよう」と完璧を目指すとストレスを生むことになります。
なので、簡単に出来そうなことを生活の中で試してみる、というように気軽な気持ちで取り組んでみてください。
4. 熟睡がもたらす嬉しいメリット
あなたに睡眠の大切さを強く認識してもらうために、熟睡の嬉しいメリットをご紹介します。毎日熟睡できるとあなたの生活の質は大きく上がります。
ご紹介の内容が、熟睡への取り組みのモチベーションになれば幸いです。
4−1. 成長ホルモンをしっかりと分泌させる
ノンレム睡眠の3・4段階の深い眠り(徐波睡眠)のときに、成長ホルモンが大量に分泌されます。成長ホルモンは、骨の発達やタンパク質の合成を促進し、身体の成長や修復、疲労回復のために重要な働きをします。しっかりと成長ホルモンを分泌させると、以下のようなメリットがあります。
- 健康的な肉体の維持
- 美しい肌・髪の維持
- 疲労回復
4−2. 学習のパフォーマンスを上げる
深い睡眠(徐波睡眠)により学習内容の定着が促進されることが、バンベルグ大学の実験により明らかにされました。
試験内容は、「鳥 – 鷲」のように対になった単語リスト(計24対)を記憶し、「鳥」と問われたら「鷲」と答えるもので、研究チームは、以下のような睡眠状況の異なる4つのグループを作り、単語テストで記憶力を測定しました。
A:単語の学習 → 3時間睡眠 → 試験
B:単語の学習 → 3時間起きたまま → 試験
C:3時間睡眠 → 単語の学習 → 3時間睡眠 → 試験
D:3時間睡眠 → 単語の学習 → 3時間起きたまま → 試験
※徐波睡眠は睡眠の最初の3時間に現れます。そのため、グループAは学習の後に深い睡眠を、グループCは学習の後に浅い睡眠をとったことになります。
各グループの学習時の成績と試験時の成績は以下のようになりました。
(引用:Plihal W. et al: Effects of early and late nocturnal sleep on declarative and procedural memory. J Cogn Neurosci, 9 : 534-547. 1997)
試験前に深い睡眠をとったグループAの成績の向上率がダントツに高い結果になりました。
グループAは、正解の平均が17.6語から23.3語と32.4%増加。一方、睡眠をとらなかったグループBは、17.7語から20.6語の16.5%の増加。
このように深い睡眠をとることで学習能力が高まる、というメリットも嬉しいですね。
4−3. 洞察力を鋭くする
さらに、ドイツのリューベック大学神経内分泌学部の研究チームが、睡眠が洞察力を高めることを明らかにもしています。
研究チームは、一見難しいが隠れた法則性に気づくと解ける問題と、以下の3つのグループを用意しました。
A: 朝に3回、問題の訓練を行う → 8時間起きたまま → 夜に問題を解く
B: 夜に3回、問題の訓練を行う → 8時間起きたまま → 翌朝に問題を解く
C: 夜に3回、問題の訓練を行う → 8時間眠る → 翌朝に問題を解く
その結果、再度問題に取り組んだときに、法則性を見抜き正答する者の割合がグループCに最も多く出ました。
深い睡眠の間に「脳が修復と回復」をし、神経細胞が整理され重要なネットワークが強化されるからと考えられています。
これでもう、睡眠を軽視できなくなったと思います。熟睡する方法にしっかりと取り組んでいきましょう。
5. スッキリ目覚めるテクニック
やむを得なく熟睡できなかった翌朝は起きるのが大変ですよね。身体のエンジンがかかりにくい方も、朝ベッドから出るのに苦労していると思います。朝はベッドから出るまでが勝負。ベッドで睡魔に負けると二度寝してしまい後が怖いです。
この章では、そんなときに役に立つ「スッキリ目覚めるテクニック」をご紹介します。どれもとても効果的なので是非お試しください。
5−1. アラームは1度きり、もしくは徐々に音量を上げる
アラームを起きたい時間の少し前にいくつかセットして、「起きてはスヌーズボタンを押してもう一度眠る」ということを最終的に起きるまで何度も繰り返していませんか。
私も以前、7時30分に起きるために7時からアラームを5分毎に設定していました。しかしこのような習慣は、「朝の貴重な時間を損しているため」控えることをオススメします。
なぜかと言うと、5分毎のスヌーズ機能で二度寝をする場合、5分弱の短眠をすることになりますが、このときの睡眠の効果は非常に少ないのです。そのため以前の私のケースだと、毎日30分睡眠時間を失っていたことになります。
そのため、アラームは「起きるべき時刻に設定し1度で起きる」のが理想的です。
5−2. 身近な光の刺激を活用する
朝に光の刺激を受けると、脳と身体が活動的になり目が覚めます。睡眠中は副交感神経が優位ですが、光の刺激により交感神経が優位になるためです。
このメカニズムを利用した「スッキリ目覚めるテクニック」が2つあります。
- カーテンから朝の光が差し込むように少し開けておく
眠る前に部屋のカーテンを少し開けておいて、朝、太陽の光が部屋に入るようにしましょう。目覚めたときに光の刺激により脳と身体が目覚めやすくなります。 - スマホの照度を活用
起きてすぐスマホチェックをする人は、先ず画面の照度を最高にしてみましょう。まぶしく感じると思いますが、光の刺激が強くなることでより目覚めやすくなります。
効果抜群ですので、明日からお試しください。
5−3. 体温と眠気のメカニズムを応用する
先に言いましたが、眠りが深くなるときに深部体温(身体の内部の体温)が下がります。起きるときはシンプルにその反対です。午前6時頃に下がりきった体温が、身体が起きる準備をするに従い、上がっていきます。下のグラフをご覧ください。
つまり、身体が温まっていると起きやすいのです。
寒い時期に起きにくいのはこのためです。低血圧の方が起きるのに苦労する理由の1つでもあります。このメカニズムを応用した「スッキリ起きられるテクニック」はこちらです。
- 暖房や電気毛布、床暖房のオンタイマーを活用
暖房や床暖房で部屋が暖まっているとベッドから出るのが非常にラクになります。また、電気毛布の上で眠り、起きる予定時刻の30分前からオンになるようにすると、身体が温まり起きやすくなります。
冬の朝が苦手な方にとてもオススメです。是非お試しください。
5−4. 体内を刺激する
体内を刺激すると言ってもキツい方法ではないのでご安心ください。目覚めたら水を飲むだけの簡単な方法です。
眠る前にベッドの近くに水を準備してから眠ってください。そして朝、目が覚めたら1番に水を飲んでください。水が体内に流れ込んでいくことで体を刺激し、交感神経が優位になることでスッと目が覚めます。
お茶やコーヒーなどカフェインを含む飲み物でも良いです。強い刺激を求める方はフリスクや辛めのガムでも良いですが、二度寝をして喉に詰まらせないように注意しましょう。
まとめ
熟睡のコツは「眠りの最初の3時間を効率的に深くとること」と同時に「深い眠りを妨げないこと」です。
睡眠に良い習慣を全て行い、睡眠に悪い習慣を全くしない、という完璧な生活は無理が出てくると思います。6対4や7対3くらいで睡眠に良い習慣が優っていれば上出来と考えましょう。
できることに少しずつ挑戦し、できないことは無理してやらない、というリラックスした気持ちで熟睡に取り組んでみてください。