睡眠

夜中に目が覚める「中途覚醒」の原因と睡眠を深める対策

夜中に何度も目覚める、中途覚醒。

熟睡感を得られないことから始まり、日中に眠気を感じたり、体内時計の乱れにもつながります。生活に支障をきたすことにもなるので、早めに対策をとることが望ましいです。

そこで今回は、

  • 中途覚醒とはどのようなものか
  • その原因と睡眠を深める対策
  • 不眠治療に行われる療法

をご紹介します。

まずは中途覚醒を理解し、あなたの原因を特定しましょう。原因がいくつかあると思います。全てに取り掛かる必要はありません。簡単に改善できる原因から1つずつ取り組んでいきましょう。ご紹介の内容を実践していただければ、大きく改善に向かうはずです。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
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インスタグラムでも情報発信中⇒フォローはこちらから。


1. 中途覚醒とはどのようなものか

中途覚醒とは、不眠の症状の1つです。不眠には3つのタイプがあります。

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(※以前は熟眠障害というものもありましたが、症状を定量化できないため外れることとなりました。)

中途覚醒はどのように起こっているのか、以下の「一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ」を見るとよく分かります。

一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ
一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ

一般的な睡眠は上のグラフのように、深い睡眠と浅い睡眠を繰り返しながら、7時間前後眠り、目覚めを迎えます。

中途覚醒により夜間に目が覚める睡眠を同グラフで表すと、以下のようになります。

一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ(中途覚醒)
一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ(中途覚醒)

赤丸の眠りが浅くなったタイミングで中途覚醒しやすくなります。

その原因はさまざまですが、一例を挙げますと、

  • 精神的な刺激(不安、心配などのストレス)
  • 肉体的な刺激(痛み、痒み、痺れなど)
  • 外部環境の刺激(音、光、温度など)
  • 睡眠自体が非常に浅くなっている

などにより、夜間の目覚めに到ることがあります。

「たんに眠りが浅くて夜間に目が覚めるのと、中途覚醒は何が違うの?」という疑問をお持ちかもしれません。睡眠障害国際分類(ICSD)という、睡眠障害の分類と基準の国際的なガイドラインを元に分けると、以下のようになります。

  • 眠りが浅くて夜間に目が覚める
    夜間に目覚める回数は1、2度。再入眠は難しくはない。日中の生活に支障はない。
  • 中途覚醒
    目が覚める回数が著しく多い、いったん目が覚めたら再入眠が難しい、日中に強い眠気を感じる。これらに該当すると、中途覚醒という睡眠障害とみなされます。

眠りが浅くなっている人は、2章で紹介する中途覚醒の原因の中から、あなたが行ってしまっている原因をやめるようにしましょう。これだけで大きく改善します。

「私の症状は睡眠障害のレベルかも」という人は、いくつもの原因を複合的に抱えていると思います。比較的かんたんに改善できそうなものから、取り組んでいきましょう。また、3章で紹介する不眠改善のための方法にもお取り組みください。


2. 中途覚醒の5つの原因とすぐにできる対策

まずは中途覚醒の原因となるポイントが、あなたにないかチェックしましょう。たぶん、いくつかあると思います。全ての原因を一気に改善する必要はありません。

最もかんたんに改善できそうなことから、地道に始めましょう。

①眠りを浅くする生活習慣がある

知らず知らずのうちに眠りに悪影響を与える生活習慣を行っていませんか。1つずつ確認していきましょう。

悪習慣1: 頭・体が十分疲れていない

人が眠くなるメカニズムは、たった2つだけです。

  1. 疲れたから眠くなる(恒常性維持機構)
  2. 夜になると眠くなる(生体時計機構)

この2つのバランスで眠りの質、量、タイミングが決まっています。

オフィスワーク、ルーティンワーク、家事(特に子供が巣立った後)などでは、そこまで疲労を感じないことがあります。そのため、夜に眠ろうとしても眠れなかったり、眠れたとしても疲れていないため夜間に目が覚めることになります。

効果的な対策は、生活に運動を取り入れること。眠るまえに運動により体温が上がり過ぎると、眠りに入りにくくなるので、以下の「時間帯別の適切な運動内容」を参考に運動をしましょう。

また他にも、不慣れなこと・新しいことを行うと脳を(いい意味で)疲れさせることができます。例えば、以下のようなことです。

  • 家庭菜園をしてみる。
  • 新しい料理の献立に挑戦してみる。
  • 趣味や好きな話題の専門書をじっくり読む。
  • 家具のDIYに挑戦してみる。

このような方法でも疲労感が増すことにより、睡眠が深く持続するようになります。

悪習慣2: 長い昼寝・夕方の仮眠

眠たくなったら好きなだけ仮眠をとっていませんか?

昼寝が長すぎたり仮眠のタイミングが悪いと、眠るときの疲れが十分でなくなるため、中途覚醒の原因になります。仮眠は計画的にとりましょう。以下の2点を守れば、中途覚醒の原因になることはありません。

  1. 仮眠は20分以内にする。
    20分以上眠ると疲れを取りすぎてしまいます。さらに、睡眠が深くなりスッキリと起きるのが困難になります。あなたが寝入りに時間がかかるのなら、30分を目安に仮眠をとるのも良いでしょう。
  2. 就寝の9時間前までに仮眠を済ます。
    あなたの就寝時間が0時の場合、15時以降は仮眠を控えましょう。疲れがあまり溜まっていない状態では、寝つきも悪くなり熟睡しづらくなります。

例えば、仕事を終えたあとに、帰宅中の電車でのウトウトするのもアウトです。数分のウトウトでも疲れが取れて、中途覚醒の原因になりえます。

悪習慣3: 日光を浴びない生活

日光を浴びない生活は、中途覚醒の原因になります。というのも、日中に日光を浴びることで「睡眠ホルモンのメラトニン」が合成され、このホルモンの働きにより、夜中にぐっすり眠れるからです。

メラトニンは以下の2つの働きにより、眠りを深くします。

メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。メラトニンは直接的に睡眠作用を持つ ほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、深部体温を低くする作用 があり、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

一般的に、光を浴びてから14~16時間後に、体内でメラトニンの分泌量が増え始めます。つまり、朝の7時頃に太陽の光を浴びると、21~23時ごろにメラトニン量が増え眠気を催します。

時刻毎のメラトニン分泌量
時刻毎のメラトニン分泌量

日光を浴びないことで夜間のメラトニンの分泌が不十分になり、中途覚醒の原因になっているかもしれません。

具体例として、アメリカのノースウェスタン大学とイリノイ大学の共同研究があります。「日中、特に午前中に日光を浴びない生活を送ると、睡眠の質が下がる」と報告されています。

窓から日光が入る職場で働く人(Aグループ)は、窓がなく日光が入らない部屋で働く人(Bグループ)より173%多くの光を勤務中に浴びます。それぞれの生活や睡眠を比較したところ、下記のことがわかりました。

・Aグループの睡眠はBグループより46分間長い。
・Aグループの方が活発に行動する傾向がある。
・Aグループと比較してBグループは全体として、睡眠の質や睡眠障害のスコアが低いだけでなく、身体的問題や活力のスコアも悪い。

午前中に日光を浴びているグループは、睡眠時間が長く、睡眠の質が高く、睡眠障害のスコアが低いと報告されています。

例えば、以下のような取り組みをすると改善が見られます。

  • 朝起きたら部屋に光が入るようカーテンを開ける。
  • 通勤や移動中はなるべく日向にいる。
  • 朝のウォーキング
  • オフィスでは日光を感じやすい席を希望する。
  • ランチを屋外で食べる。

生活の中で日光をあまり浴びてない人には、とても効果的です。是非、お試しください。

悪習慣4: 就寝前の飲酒

「眠る前にお酒を飲むとよく眠れる」という方がたまにいますが、それは誤解です。

たしかに、アルコールは入眠にとても効果があります。緊張をほぐし、体温を一時的に上げた後に下げるので、身体が素晴らしいほどに睡眠モードになります。しかし、気持ち良く眠りに入れても、その後が問題です。眠りを浅くします。

・寝酒が眠りを浅くするメカニズム
アルコール摂取の2~3時間後、体内でアルコールが分解されるとアセトアルデヒドという物質になります。この物質は交感神経を優位にします。例えば、眠る30分前にお酒を飲むと仮定します。そうすると、眠り始めてから2時間前後に体内でアセトアルデヒドが発生します。つまり、休息に入ったとたん、脳と身体が興奮状態になるのです。その結果、眠りが浅くなります。

また、24,686人の日本人を対象にした調査によると、週1回以上のペースで眠るために飲酒をするのは、男性では48.3%、女性では18.3%もいたそうです。さらに、寝酒の習慣があると睡眠が浅くなり、夜中に目が覚める(中途覚醒)ことが多い、と報告されています。

そのため、中途覚醒にお悩みの場合、寝酒はできるだけ避けましょう。

「夜中の目覚めを減らしたい。しかし、お酒は飲みたい。」という方は、飲酒のタイミングと量を以下のように調整しましょう。

  • お酒は就寝の3時間前には飲み終える。
    眠りに入ってから脳と身体が興奮し、中途覚醒してしまうことは避けられます。
  • 飲酒の量を適度に抑える。
    具体的な量に関しては以下のグラフを参考にしてください。

(参考:厚生労働省(一部改変))

もちろん、この数値は一般的なものです。お酒が弱い方や高齢者は、この数値よりも少なめが適量と認識しましょう。

悪習慣5: 夕食以降のカフェインの摂取

カフェインに覚醒効果があることはご存知と思います。どのように作用するかと言うと、

・カフェインの作用
アデノシンという鎮静効果のある神経伝達物質が脳内で伝達される前に、カフェインがブロックすることにより鎮静を妨げ覚醒効果をもたらします。カフェインを摂取すると、30~60分後に血中濃度が最高になります。つまり、この間に覚醒効果が最高になります。そして健康な成人での半減期は2.5~4.5時間。この間に効果が無くなっていきます。

一般的にカフェインの作用時間は4時間前後ですが、人によっては効果が8時間も続くことがあります。眠るまえにカフェインを摂取することにより、いったん眠ってから目が覚める原因になっていることもあります。

以下のグラフは、身近な飲み物のカフェイン量を表したものです。眠るまえにカフェインを摂取していないか確認しましょう。

眠るまえにカフェインを含むと知らず、お茶を飲んでいませんか。烏龍茶やほうじ茶にカフェイン意外と多く入っているのは、盲点ではないでしょうか。今後、食後の飲み物を選ぶ際に参考にしてください。

②ストレスにより覚醒度が高まっている

適度なストレスは生活に刺激とハリをもたらすスパイスです。張り合いのある生活、達成感のある日常は、快眠に重要な要素です。

しかし、ストレスが過度になると、2つの理由から中途覚醒の原因になります。

自律神経が乱れ、交感神経が優位になるため

自立神経がどういうものか、簡単に説明すると、

・自律神経、交感神経、副交感神経とは?
自律神経とは身体全体に張り巡らされている神経です。あなたが「意識しなくても活動している身体の器官」をコントロールしています。例えば、心臓が身体中に血液を送っていたり、ご飯を食べたら胃が消化してくれたり、これらは全て自立神経がコントロールしています。この自立神経は交感神経と副交感神経という2つの神経から成り立っています。この2つの神経は表裏一体の関係で、正反対の働きをします。「交感神経」は、活動時や興奮・緊張しているとき、ストレス下で働きます。瞳孔が広がる、心拍数が増える、覚醒度が上がる、という反応が身体に現れます。「副交感神経」は休息、リラックス時に働きます。脈拍を抑える、消化を促す、覚醒度を下げる、という反応が身体に現れます。

通常、夜に眠るときに「副交感神経」が優位になり、脳と身体が休息します。しかし、ストレスが過度の状況下では、夜も交感神経が優位になります。

そのため、覚醒度が高まるため、寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなることで中途覚醒の原因になります。

コルチゾールの分泌が増えるため

さらに、脳がストレスを感じると、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの量が増加します。

・コルチゾールとは
副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン。血糖値を上昇させ、代謝を促進する作用がある。通常、朝方に分泌量が最大になり、午後には大きく下がり、睡眠中は抑制される。脳と身体を覚醒させる目的と考えられている。

少し難しいですね。身近な例で言うと、家の中で害虫を発見したときです。身体が震え上がり、一気に高まった心拍数を抑えながら、なんとか退治した経験はありませんか?これは過度なストレス(害虫)により、コルチゾールが分泌され、一気に身体が覚醒した状況と言えます。

通常、コルチゾールの分泌量は、下のイラストのように、1日の内で夜間に最も少なくなります。

コルチゾールの1日の分泌量の変化
コルチゾールの1日の分泌量の変化

しかし、ストレスが過度の状況下では、コルチゾールの分泌量が増大するため、眠っている途中に目覚めること原因につながります。

ストレスにより睡眠の質が悪化している場合、効果的な対策は以下の4つです。

  • ストレスを発散させる。
  • 睡眠環境を整える。
  • 睡眠指導に使われる認知行動療法を行う。
  • ストレス自体を解消する。

具体的な対策を、こちらの記事「ストレスで眠れない人を快眠に導く3つのステップ!」で紹介しているので、中途覚醒の1番の原因がストレスだ、という方はご一読ください。

③睡眠環境に眠りを浅くする要因がある

それでは次に、あなたの睡眠環境をチェックしましょう。

光との付き合い方が悪い

光と無意識に付き合っていると、中途覚醒の原因になります。

先に午前中はたくさん日光を浴びましょうと言いましたが、夜間の強い光は避けましょう。なぜなら、夜間の光はメラトニンの分泌を抑制する働きがあるためです。メラトニンが十分でないと、睡眠を深められなくなり、中途覚醒につながります。下の表は、身近な光の明るさを数値で示したものです。

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身近な光の例

 

日本の一般的な家庭のライトの照度は300~500ルクスですが、この程度の明るさでもメラトニンの分泌を抑制します。中途覚醒を防ぐ「光との上手な付き合い方」は、以下の通りです。

  • 夕食後は、室内の明かりを落とす。
  • 夕食後は、スーパーやコンビニなど明るいところへ行かない。
  • ベッドで寝ながらテレビを見ない。
  • 就寝前にパソコン・スマホは使用しない。もしくは照度を最低にする。
夜間を家庭の明かりを落とす
夜間を家庭の明かりを落とす

また、あなたの寝室に街路灯などの光が入ってきていませんか。そのような光の刺激で目が覚めている場合は、寝室に遮光カーテンを取り付けてみましょう。

寝室の温湿度が不適当

「夜中に暑くて目が覚めた、寒くて目が覚めた」というのもよくある話です。

睡眠に適切な温湿度を保っていられると、暑さ寒さによる中途覚醒を無くせます。以下を参考にしてください。

1. 夏は26℃前後 、冬は18℃前後が最適な室温
2. 布団の中の最適な温度は33℃度前後
3. 理想的な湿度は、寝室・布団の中共に50%前後

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

具体的な方法をご紹介します。夜中に暑くて目が覚める場合は、

  • クーラーを26℃の中風で2時間のオフタイマーを設定し、寝室を涼しくしておく
  • クーラーを28℃の弱風で4時間のオフタイマーを設定し、寝室を涼しくしておく
  • 足元に向けて扇風機で弱風を送り、4時間のオフタイマーを設定し、体感温度を下げる

夜中に寒くて目が覚める場合は、

  • 毛布をマットレス(敷き寝具)の上に敷き、保温性を高める
  • ゆたんぽを置いておき、布団の中の温かみをキープする
  • 暖房を22℃の弱風で4時間のオフタイマーを設定し、寝室を暖かくしておく

あなたに合う温湿度の調整方法を見つけましょう。

寝具が不適当

使っている寝具の質が悪いと、身体が違和感や疲れを感じたり、ひどい場合には痛みを感じたりして、中途覚醒につながることがあります。

よくある原因は以下の通りです。

  • 枕の高さ/硬さが合わずに首が痛い
  • マットレスの硬さが合わず腰が痛い

あなたに合った枕の選ぶことが大切です。簡単にまとめると以下の3点です。

  1. 自分に合った素材であること
    寝心地があなた好みで、体質(アレルギーなど)にも合っていることが大前提です。
  2. 首〜後頭部へのフィット性(適度な硬さ)
    硬さ/柔らかさが適度でないと首の痛み、後頭部の圧迫感の原因になります。
  3. 理想的な高さ(理想的な寝姿勢)
    首と肩のリラックスや快適な呼吸を可能にするのが適切な枕の高さです。

具体的な内容は以下のページをご参考ください。

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しっかりと快眠できるマットレスを選ぶポイントも同じく3つです。

  1. マットレスの適切な硬さ/柔らかさを知る
    いくら好みであっても、硬さ/柔らかさの度が過ぎてはいけません。正しい寝姿勢のとれる適切な硬さを知りましょう。
  2. マットレスの適切な弾力性
    硬さが適切であっても弾力性により、単純な寝心地の気持ち良さから、寝返りのしやすさが大きく左右されます。
  3. 期待通りの耐久性があるか
    すぐにへたるようなマットレスだと寝心地が悪くなりますし、お財布にもツラいですよね。耐久性についてわかるとコスパの良い買い物も出来ます。

具体的な内容は以下のページをご参考ください。

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④加齢により眠りが浅くなっている

加齢に伴って睡眠の質は低下します。これは避けられない傾向です。

下のグラフをご覧ください。子供と成人、高齢者の「一夜の睡眠の深さの変化と経過グラフ」を比較したものです。

一夜の睡眠の深さの変化と経過(子供・成人・高齢者)
一夜の睡眠の深さの変化と経過(子供・成人・高齢者)

加齢に伴い、深い睡眠がどんどん少なくなっています。また、高齢者の睡眠には分断が見られます。睡眠が浅いため、夜間に目覚めることを表しています。

加齢により睡眠が浅くなることに対しては、通常のこととして受け入れるしかありません。しかし一方で、睡眠の質が良い高齢者がいるのも事実です。そのような高齢者は、日中の活動にメリハリがあり、夕方に昼寝をしない、など夜の眠りを浅くする習慣を行っていないことが典型的です。

そのため、「中途覚醒の原因は自己の加齢にある」と考えている方は、先に紹介した「生活習慣と睡眠環境」の改善にお取り組みください。

⑤睡眠障害が眠りを妨害している

以下のような理由で、目を覚ましたことはありませんか。その場合、睡眠障害が原因となっています。

  • 睡眠中に呼吸が乱れる、止まる
    →睡眠時無呼吸症候群という睡眠呼吸障害です。肥満が原因の場合と脳に原因がある場合があります。心当たりがある方は、医療機関に受診をされてください。睡眠呼吸障害を専門に診ている「睡眠呼吸障害センター」や「睡眠時無呼吸外来」、「睡眠外来」を設置している医療機関が良いでしょう。
  • 脚や腕がピクピク動く、脚がむずむずする
    →睡眠関連運動障害の「周期性四肢運動障害」や「むずむず脚症候群」の可能性があります。メカニズムの解明はされていませんが、「鉄欠乏症」「パーキンソン病」「末梢神経障害」「妊娠」などが原因であると考えられています。心当たりがある方は、睡眠障害の専門医に診てもらいましょう。
  • トイレに行きたくなる
    →夜間頻尿の可能性があります。「前立腺の肥大」「膀胱の過活動」「利尿作用のある薬の服用」が主な原因として考えれています。心当たりがある方は、泌尿器科を受診しましょう。

睡眠障害が原因となって中途覚醒を起こしている場合、睡眠障害自体を解消しなければなりません。睡眠の質が悪いままでは健康に悪影響があらわれます。なるべく早く適切な医療機関を受診し、改善しましょう。


3. 自宅でできる中途覚醒におすすめの方法

薬物に使用する改善方法は万能ではなく、副作用の弊害もあることから、世界的に薬物を使わずに改善を目指す流れにあります。次にご紹介するものは、睡眠指導の現場で採用されている方法論で、中途覚醒を改善させられるものです。

刺激制限療法

「また今日も夜中に目覚めたらイヤだな」と眠るまえに考えていませんか?

そのような「不安」や夜間に目覚めてから再度寝入るのに苦労した「体験」が「寝室」と結びつくことで、「寝室は眠れない場所」と頭が無意識的に認知してしまう可能性があります。

居間では眠れるが、いざベッドに行くと眠れない、寝入ってもすぐに目が覚める。「寝室は眠れない場所」という認知が働いている典型的な例です。このような認知レベルで起こっている不眠を、刺激を取り除くことで改善を目指すのが「刺激制限法」です。

刺激制限法は以下のように行います。

1. 眠くなったときのみに寝床に就く。
2. 寝床を睡眠とセックス以外の目的に使わない。寝床で本を読んだり、テレビを見たり、食べたりしない。
3. 眠れなければ(たとえば20分間)、寝室を出て別の部屋に行く。本当に眠くなるまでそこにいて、それから寝室に戻る。もしすぐに眠くならなければ、再び、寝室から出る。この間、時計を見てはいけない。また、ホラー映画を見るなど刺激の強いことはしない。
4. もしまだ眠れないのなら、夜通し3を繰り返す。
5. その晩いかに眠れなくても、目覚まし時計をセットして、毎朝同じ時間に起きる。起床時刻を一定にすることは、体に一定の睡眠覚醒リズムを身につけるのに役立つ。
6. 日中、昼寝はしない。

(引用:『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』 内山真 著)

少し酷な内容ですがこの繰り返しを行うことで、あなたの脳が寝室はゆっくり休む場所だ、と認識することが大切なのです。

「こんなことして意味があるの?」と思うかもしれませんが、この刺激制限法はリチャード・ブーツィン睡眠博士(Richard Bootzin Ph.D.)により開発され、30年以上経った今なお、睡眠指導の現場で実地されているとても権威のある技法です。

睡眠時間制限法

「眠りが浅くなっていて中途覚醒が起こっている」という場合に効果的なのが、睡眠時間制限法です。

・睡眠時間制限法とは
ベッドの中にいる時間を制限することにより、軽い断眠効果を起こし、不眠の改善を目指す方法です。睡眠への欲求と睡眠圧を高めるため、熟睡効果をもたらします。(※睡眠圧とは、いわゆる眠気のこと。)

睡眠時間制限法は、以下のように行います。

1. ここ1週間の平均睡眠時間を計算する。
 (※ベッドの中にいる時間ではなく、眠った時間の平均。)
2. 平均睡眠時間+15分をベッドの中にいる時間に設定する。
 (※5時間未満になる場合は、5時間に設定する。)
3. 日中に仮眠をとらない。
4. 起きる時刻を、休日を含めて一定にする。
5. 起きたとき、何時間眠れたか記録する。
6. 睡眠効率が90%以上の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を15分増やす。
 (※睡眠効率とは、ベッドの中にいる時間の内、眠っていた時間の割合)
7. 反対に、睡眠効率が85%未満の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を短く設定する。

(引用:『睡眠学II』 宮崎総一郎・大川匡子・山田尚登 編著 一部改変)

例えば、あなたが以下のような睡眠状況だとします。

23時にベッドに入り、6時半に起床。その間3~4回は中途覚醒があり、2時間ほど目覚めた状態。7時間半弱眠りたいが、実際に眠れている時間は5時間15分程度。寝つきは悪くない。

このような状況が1週間続いていたら、ベッドの中にいる時間を5時間30分に設定します。そして起床予定時刻を軸に就寝時刻を定めるので、深夜1時にベッドに入るよう設定します。そして、この睡眠スケジュールで5日間、生活をします。そして5日間の睡眠状況をもとに、次の睡眠スケジュールを設定します。当初は日中の眠気を感じ、つらいと思います。しかし、仮眠は極力避けましょう。夜間の睡眠が浅くなり中途覚醒につながります。

最終的に中途覚醒がなくなり(もしくは減少し)、日中に眠気を感じなく、睡眠効率が85%から90%の間で安定していれば、症状が改善したと言えます。とはいえ、こちらの方法は少し荒療治のようになるので、睡眠外来などを受診し専門医と共に取り組みことをオススメします。

意識を変える

あなたは周りの方から心配性や完璧主義と言われたことはありませんか?このような性格の傾向があると、中途覚醒は悪化しやすくなります。

夜中に目覚め再び眠れないことから生じる「不安」や「いらだち」によって、悪循環が生まれるからです。そのため、自分の眠りに対する捉え方や意識を変える必要があります。

例えば、「昔は朝までぐっすり眠れたのに、最近は夜中に目が覚める。どうしたんだろう、私。」と過去のあなたと比べたりし、現在のあなたを否定すると苦しみが生まれます。健康的な睡眠習慣をもつ周りの人と比べることも同様です。

あなたの症状をある程度、受け入れることが大切です。

夜中に目覚めたときに「年をとれば眠りは自然と浅くなるもの」と考えたり、「最近ストレスが溜まってるから眠りが浅くなってるんだろうな」と客観的に自分を見つめたり、捉え方を変えてみましょう。このように精神的な要因を減らしつつ、生活習慣と睡眠環境を改善すれば、夜中の目覚めを減らせます。


まとめ

くどいようですが、全ての原因を改める必要ありません。1つずつ簡単に取り組めることから始めましょう。時間と忍耐が必要ですが、継続的にお取り組みいただくことが快眠への第1歩です。

なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。

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