睡眠

正しい睡眠のゴールデンタイムは入眠後約3時間、その効果とは

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——22:00~翌2:00が睡眠のゴールデンタイム。

これは間違いです。正しい睡眠のゴールデンタイムは入眠後3時間です。このときに成長ホルモンが多く分泌されるのです。なんでこんな誤った話が広がったのか疑問ですよね。

そこで本日は「睡眠のゴールデンタイム」について詳しく解説します。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
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1. 正しい睡眠のゴールデンタイムとは入眠後約3時間

実のところ「睡眠のゴールデンタイム」という言い回しは睡眠学の本にはほとんど載っていません。つまり、俗語のようなものなのです。そのため、この言葉には正しい定義がありません。

そこで、いわゆる「睡眠のゴールデンタイム」を「睡眠中で成長ホルモンが活発に分泌されるとき」と定義すると、それは「入眠から約3時間の間」となります。

成長ホルモンは、1日の中で1~3時間ごとにスパイク状に分泌されますが、第1睡眠周期の徐波睡眠中に分泌量が最大となります。

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

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徐波睡眠とは簡単にいうと睡眠深度3と4(ノンレム睡眠の第三段階と第四段階)にあたります。

睡眠の第1周期に徐波睡眠がもっとも多く現れ、その際に成長ホルモンが多く分泌されるのです。睡眠の第2周期にも徐波睡眠は現れますがやや少なくなります。そのため、睡眠の最初の1.5時間にもっとも成長ホルモンが分泌され、その後の1.5時間(入眠後3時間)に大半の成長ホルモンが分泌されるということなのです。

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成長ホルモンは睡眠の最初の3時間に分泌される

この成長ホルモンがタンパク質の合成を促し、体の成長や疲労回復効果の役割を果たしているのです。

さらにいうと、22時ではなくどの時刻に眠ろうが分泌される成長ホルモンの量はほとんど変わらないとも伝えられています(諸説ありますが)。

睡眠不足が続くと眠気が強くなって深い睡眠が多くなるのと同様に、成長ホルモンは、睡眠不足になるとその後に深く眠った時に多く分泌されることがわかった。結局一日に作られる量はおよそ同じで、医学的には睡眠習慣の悪さで成長ホルモンが不足することはないと考えられている。

(引用:『睡眠のはなし』 内山 真 著)

1−1. 入眠後3時間が睡眠のゴールデンタイムだからといって過度な夜更かしは禁物

ここまで読まれた方の中にはもしかしたら「なーんだ、22時にまでに眠らなくていいのか!っていうか入眠後約3時間がゴールデンタイムなら夜更かししても大丈夫なのか!」と思われている方もいるかもしれません。が、それは早計です。夜更かしはおすすめ出来ません。

というのも、人は昼行性の動物だからです。日中活動して夜間は休むようにプログラムされているのです。それを一番わかりやすく示しているのが体温です。

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眠りが深まるために体温は下がり、起床に向かって上がる

上のチャートをご覧いただくとわかるように、人の体温は23時頃から下がり始め、早朝5時頃に最低になっています。そしてその後、目覚めから日中にかけてどんどんと体温が上がっていっています。

つまり、夜間休むために体温が下がり、日中活動するために体温が上がるように、人の体は設計されているのです。そのため、夜更かしをして生活リズムがこの生体リズムから外れてしまうと良く眠れなかったり目覚められなかったりと不調を感じやすくなるのです。

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夜型の人は朝型の人よりも体温変化のリズムが後退している (引用:Wiley Online Library

世間には夜型の人(E-types)がいます。これらの人の体温リズムは朝型の人(M-types)よりも後ろにずれているのです。そのため、夜間の活動が得意で早朝の活動が苦手なのです。

このような例外はありつつも社会の過半数の人は朝型タイプなので、睡眠ホルモンのうんぬんにかかわらず夜更かしをしない方がメリハリのある生活を送れるのです。「自分は朝型か夜型どっちなんだろう?」と気になるのであれば、下記のページをご参照ください。

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1−2. 22:00~翌2:00がゴールデンタイムとなったのは伝え方のせい?

ところで、なぜ「睡眠のゴールデンタイム」が誤解されたまま広まったのか、疑問に思わないでしょうか。

どうやら下記の文章にその手がかりがあるようです。

一九六九年に当時東京大学医学部精神神経科の高橋康郎博士と高橋清久博士が、成長ホルモンの分泌が深いノンレム睡眠開始とともに増加し、夜に眠らないとこの分泌増加が起こらないことを報告した。つまり、深く眠ると成長ホルモン分泌が増える。世界で初めての画期的発見で、「寝る子は育つ」といわれていたこともあり、広く知られることとなった。

(引用:『睡眠のはなし』 内山 真 著)

1969年といえば今から半世紀も前のことですが、この時代、日本人は今よりも早寝でした。そのため、「睡眠開始」=「22時頃」ということで「睡眠のゴールデンタイム」が夜の22時から翌2時頃となったのかもしれません。

また、NHKの国民調査によると1960年には国民の66%が夜10時には眠っていたのですが、1970年にはその比率は40%強にまで下がっています(1995年以降は25%強にまで下がるのですが)。そんな時代だったからこそ、早寝を呼びかけるためのキャンペーンとして22:00~翌2:00が「睡眠のゴールデンタイム」だと広まったのかもしれません。あくまで私の憶測ですが。


最後に

「睡眠のゴールデンタイム」について詳しくご理解いただけていれば幸いです。

なお、近年、「睡眠のゴールデンタイム」をしっかり眠れば短時間の睡眠でも十分だとする睡眠方法が見受けられますが、私はこれについてやや懐疑的です。詳しくは下記ページをご参照ください。

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