「睡眠不足は肥満のもと」
これはゴシップではありません。
事実、多くの実験により睡眠と肥満の関係や、ホルモンバランスの乱れによる肥満への影響が説明されています。
そこで今回は、「睡眠不足により太る原因」についてご説明します。そして最後に、太るのを抑えるためにするべき「睡眠への工夫」についてご紹介します。
※こちらのページ『睡眠不足の悲惨すぎる症状一覧と、改善のための方法』で睡眠不足による心身へのデメリットの総まとめをしました。睡眠不足が気になる方はあわせてご参考にしてください。 |
Contents
1. 睡眠不足だと肥満になるとの調査データ
アメリカの名門イェール大学が10年以上かけて行った大規模追跡調査によると、睡眠が短ければ短い人ほどBMI値が高く、肥満率が高いとの報告があります。
9時間以上眠っている人に肥満が多いのは、眠りすぎると肥満になるという意味ではありません。
ここに属する人の多くは、睡眠障害やうつ病やその他疾患などにより睡眠の質が非常に低くなっており、そのため、睡眠時間が長くなっているのです。
2. 睡眠不足だと太りやすくなる3つの理由
睡眠不足の人が太りやすい、ということ分かりました。しかしなぜ太りやすくなるのか?
次に、太りやすくなる理由についてご紹介します。
①ホルモンバランスが乱れて「食欲が増えて」「満腹感が減る」ため
2004年、シカゴ大学の研究チームが、睡眠不足と食欲に関する新しい発見を発表しました。
その内容は、睡眠が不足すると、「食欲を増やすグレリン」というホルモンが増加し、「満腹感を感じさせるレプチン」というホルモンの分泌が減る、というものです。
シカゴ大学の研究チームは、実験的に健康な成人の睡眠時間を4時間に制限して2日過ごさせた。私たちの生活の中で起こりうる条件だ。こうした生活をさせると、食欲増強作用の強いグレリンが血液中で増加し、食欲が上昇した。同時に、血液中のレプチンが減ってきて、満腹感が得られなくなった。
(引用:『睡眠のはなし』内山真 著)
つまり、睡眠不足になると、食欲が暴走してしまうわけです。
恐ろしいですね。
しかし、「ホルモンの量が変化しただけで何か変わるの?」と思われないでしょうか。
行動面に大きな違いがでると報告されています。
北欧最古の大学のウプサラ大学の研究チームの報告により、「睡眠不足の状態は、食品の購入行動に影響を及ぼす」ことが分かりました。実験の内容は、下記のようになります。
・14人の健康な男性に2つの条件の後、買い物をしてもらう。
・条件Aでは、1晩中、眠らない。
・条件Bでは、8時間(22:30 – 6:30)の睡眠をとる。
・それ以外の条件は同じ。
・条件A/Bをランダムで決め、4週間後、行っていない条件で再度実験を行う。
・実験日は8時に朝食をとり、その後すぐ50ドルを渡され、数日分の食品を買うよう指示される。
・購入可能な食品は2kcal/gの以上のもので40品目まで。
購入した食品の総カロリーと総重量を調べたところ、以下のグラフのような違いがありました。
睡眠不足のグループの買い物は、1,600kcalもカロリーが高く、2kgも重いという結果です。
睡眠不足のまま買い物をすると、「高カロリーで大きく重い食品を好んで買うようになる」ということです。
「食欲が旺盛になり、満腹を感じにくい」状態だからか、行動面にこのような違いが出ていると考えられます。
それにしても、約5,000円の買い物で、ここまで大きな違いが出るとは驚愕です。
②判断力が低下して、嗜癖的な行動を起こしやすいから
さらには、「睡眠不足だと判断力が低下し、嗜癖的な行動を起こしやすい」とカリフォルニア大学バークレー校とハーバード大学医学大学院の研究チームが報告しています。
つまり、中毒性のある砂糖(お菓子)や脂質(ジャンクフード)を習慣的に摂る人ほど、睡眠不足のときは余計に我慢しづらくなる、のです。具体的に言うと、「来月のイベントまでダイエットだ!」と計画を立てていても、短期的な快楽(お菓子・ジャンクフード)を優先してしまいがちになるのです。
③睡眠不足だと痩せにくくなってしまうから
しかもその上、シカゴ大学の睡眠研究ラボで行われた実験により、「睡眠不足が脂肪の燃焼を妨げる」と報告されています。
実験は以下の手順で行われました。
- 14日間の食事制限をして「脂肪の減少」と「脂肪以外の体重の減少」を調べる。
- 被験者は、5時間半睡眠と8時間半睡眠のグループに分けられる。
- 被験者は、喫煙習慣のない太った10人の男女。平均年齢は41歳。
- 10人のBMI(体格指数)平均は、27.4ポイント。171cm80kgに相当。
- 一方の条件で試験を受けた後、3ヶ月期間を空け、もう一方の条件で試験を行う。
その結果、2つのグループで大きな差が出ました。
かなり残酷な結果ですね。
睡眠不足だと脂肪の減少が半分以下になっています。同じ努力をしても脂肪を減らすダイエット効果が半分しかない、とも考えられます。
しかしその一方、脂肪以外の重量(筋肉、骨、内臓器官、水分など)は、5時間睡眠グループの方が減少しています。つまり、睡眠不足でダイエットを行うと脂肪ではなく、健康的な生活に必要な身体の要素ばかり落としてしまうことになるのです。
3. 睡眠を工夫してできる対策
ジャンクフードは買わない、油の多い食事は避ける、スイーツショップに足を踏み入れない、という対策も良いと思います。このような太らないための対策は、多くのメディアで紹介されています。
なので私からは、睡眠に関連した対策をご紹介します。
買い物や外食の前に仮眠をとる
買い物や外食に行く前に、仮眠をとってみてください。
睡眠不足で頭が疲れているときに買い物をすると、カロリーの高い食品を買う傾向があったり、買い物の量が多くなることが、先の実験により明らかになっています。
仮眠をとり、脳を休ませた後は、より理性的な判断ができるようになります。買い物のときに、不必要なジャンクフードを買わずに済むかもしれません。外食のときに、シメのスイーツやラーメンを我慢できるかもしれません。
太りにくくなるだけでなく、お財布にも優しいです。是非、お試しください。
「ベッドタイム・アラーム」を活用する
「好きなドラマや雑誌を見たり、SNSをチェックしていたら、もう深夜1時!?」という経験はありませんか?
ついついベッドに入る時刻が遅くなり、睡眠時間を削ってしまっている人はたくさんいます。そのような方にオススメの対策が、「ベッドタイム・アラーム」です。
・ベッドタイム・アラームとは ベッドに入る目標時刻をセットし、決まった時刻に眠れるよう意識づけるためのアラームです。目標時刻は、眠らなければいけない時刻の20分前を目安にセットしましょう。 |
あなたの理想的な生活習慣が「7時に起床し、0時に就寝」ならば、23時40分にベッドタイム・アラームをセットします。そして、23時40分にアラームが鳴ったら、ベッドに行きます。こうすることで、「ついつい夜更かしをしてしまった!」ということを減らせます。
さらに、上級テクニックとして、以下のような応用例があります。
夜のお菓子は太るだけでなく、睡眠の質を下げます。このように夜の飲み食いを制限するようにベッドタイム・アラームを活用すれば、太りにくくなるだけでなく、睡眠の質も良くなります。
また、無理に寝ようとしても良くないので、就寝目標時間の2時間前にぬるま湯に入る、1時間前にストレッチをする、などで眠りやすくすると尚良しです。
結果として、睡眠不足から起こる肥満の原因も回避できます。
太らないための適切な睡眠量をチェックしよう
あなたにとって適切な時間眠れば、太りやすくなる要因を減らせます。
あなたが十分な睡眠をとれているかチェックしてみましょう。最も簡単なチェック方法は、「今より長く眠り、体調が良くなるか」で判断します。
例えば今あなたが、下記のような状況だとします。
平日に6時間、休日に7時間の睡眠をとっているとします。そして「日中、眠気を感じる」ことがあったり、「ここ最近、暴飲暴食する」ことがある。 |
この場合、下のように睡眠習慣を変えてみましょう。
平日は7時間、休日は8〜9時間に睡眠時間を伸ばす。この生活を10日間続ける。 |
なぜ、このように変えるのかと言うと、
- 早朝の睡眠サイクルは短いので、平日は60分長く眠ります。
- 体内時計のリズムを保つために、休日の起床時間は、平日と2時間以上ずれないようにしつつ、長めに眠ります。
- すぐに改善はしません。10日間様子を見てください。
10日後に「日中の眠気や暴飲暴食」が良くなったり、落ち着いたと感じたら、睡眠時間は適切となります。太りやすい状況が治ったと言えます。
もし改善を感じなければ、さらに睡眠時間を長くして10日間生活してみてください。それでも改善がなければ睡眠時間の問題ではない、となります。
まとめ
睡眠不足は肥満のもと。冒頭でも言いましたが、今は十二分に納得していただけたと思います。睡眠不足を解消すれば、肥満の問題だけでなく、その他の健康・美容面にも大きなメリットがあります。
これをきっかけに快眠生活を始めていただければ幸いです。