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熟眠障害を乗り越える|5つの具体的な対策

睡眠時間はしっかりと確保している。それにも関わらず、毎朝寝たりなさを感じたり、日中に強い眠気を感じたりしませんか?

もしかすると、熟眠障害の可能性があります。

そこで今回は、「熟眠障害とは何か」そして「熟眠障害を克服するための秘策」をご紹介します。実践していただければ、快眠に近づけることをお約束します。

(※熟眠障害は不眠の1つとして挙げられていましたが、個々人の症状が主観的で定量化しずらいということで今は不眠症から外されています)

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
取材依頼はお問い合わせから。
インスタグラムでも情報発信中⇒フォローはこちらから。


1. 熟眠障害とは

まずは熟眠障害とはどういうものか知りましょう。症状を改善する最初のステップは、症状の理解です。

不眠のタイプの1つ

熟眠障害は4つのタイプに分かれる不眠の1つのタイプです。

これら4つは決して別々のものではありません。

例えば、なかなか入眠できずに睡眠時間が削られる(入眠障害)ために、睡眠への満足がなかったり(熟眠障害)、明け方に目が覚める(早朝覚醒)ことで、睡眠への満足度が減ったり(熟眠障害)と、症状を同時に抱えることが多いためです。

熟眠障害の2つのタイプ

また、熟眠障害の中にも2つのタイプがあります。

  1. 睡眠の質が実際に悪くなっているタイプ
  2. 睡眠の内容が良いにも関わらず、睡眠への満足度が低いタイプ

睡眠グラフを見ると、どういうことなのか理解が早いです。健康的な睡眠をグラフで見ると、以下のようになります。

一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ
一夜の睡眠の深さの変化と経過のグラフ

一方、深い睡眠が実際に減少している睡眠グラフは、以下のようになります。

一夜の睡眠の深さの変化と経過(眠りが浅いとき)
一夜の睡眠の深さの変化と経過(眠りが浅いとき)

このように睡眠内容が悪いために熟睡感が低下しているのが1つの目のタイプです。2章で該当する原因に地道に取り組んでいただければ、症状はきっと改善します。

その一方で、睡眠内容は申し分ないのにも関わらず、睡眠に満足できない人が少数ながらいます。このようなタイプを「逆説性不眠症」とも呼びます。

あなたがどちらのタイプなのかは、専門医の元で睡眠ポリグラフ検査を受けると分かります。

眠りに満足できないからといって熟眠障害に該当する訳ではない

「睡眠に満足感がない」=「熟眠障害」ではありません。

睡眠障害国際分類(ICSD)という、睡眠障害の分類と基準の国際的なガイドラインによると、以下のような場合に「不眠症(熟眠障害)」となります。

朝起きたときにぐっすり眠ったという満足感が感じられない ことが週2回以上 あり、少なくとも1ヶ月 はそのような状態が続いている。また、日中に強い眠気 を感じたり、生活に支障 をきたしている。

そのため、週に1度くらいの頻度であったり、日中にそこまで眠気を感じたりしない人の場合は、熟眠障害とはみなされません。とはいえ、眠りは浅くなっているので油断は禁物です。

上記の熟睡障害の定義に該当している人は、徹底的に2章の秘策に取り組みましょう。

熟眠障害に共通する原因

それでは次に、熟眠障害の原因と対策のポイントをご紹介します。多くの人に共通するものから順番に紹介する形式になっています。

ストレス

適度なストレスは、刺激とハリを生活にもたらすスパイスです。張り合いのある生活・達成感のある日常は精神衛生上、快眠に重要な要素です。

しかし、ストレスが過度になると、脳が興奮・過敏状態になるため睡眠の質が下がります。専門的に言うと「自律神経が乱れ、交感神経が優位になる」ため、熟睡しにくくなります。

・自律神経、交感神経、副交感神経とは?
「自律神経」とは、あなたが「意識しなくても活動している身体の器官」をコントロールしています。例えば、心臓のポンプ機能、食事の消化などです。そして、この自立神経は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経から成り立っています。この2つの神経は表裏一体の関係で、正反対の働きをします。「交感神経」は、活動時や興奮・緊張しているとき、ストレス下で働きます。瞳孔が広がる、心拍数が増える、覚醒度が上がる、という反応が身体に現れます。「副交感神経」は、休息、リラックス時に働きます。脈拍を抑える、消化を促す、覚醒度を下げる、という反応が身体に現れます。

通常、夜に眠るとき「副交感神経」が優位になり、脳と身体が休息します。しかし、ストレス過剰のときは、眠っているときも「交感神経」が優位になります。その結果、覚醒度が高まり、睡眠の質が下がり、睡眠に満足できなくなってしまいます。

眠りへの強いこだわり

「ヒトには8時間の睡眠が必要」
「ベッドに入って10分以内に入眠できなければ何か問題がある」

このような睡眠への強いこだわりがあると、そのこだわりが睡眠の質を下げることにつながります。精神論ではなく「精神生理性不眠」という、れっきとした不眠の症状の1つです。

何らかのきっかけで眠れない夜が続くと、不眠に対して恐怖感を抱くようになり、かえって不眠が強まり睡眠の質が下がることがあります。

加齢

加齢に伴って睡眠の質は低下します。これはほとんど避けれられない傾向です。下のグラフをご覧ください。子供と成人、高齢者の睡眠グラフを比較したものです。

一夜の睡眠の深さの変化と経過(子供・成人・高齢者)
一夜の睡眠の深さの変化と経過(子供・成人・高齢者)

加齢に従って、睡眠に2つの変化が生じています。

  1. 眠りが全体的に浅くなる。
  2. 睡眠に分断が見られる。(中途覚醒)

加齢により睡眠の満足度が下がっていくことは、ある程度は当たり前のこと、と受け止めなければなりません。

睡眠を浅くする習慣

知らず知らずの内に、眠りを浅くする習慣を行っていませんか?

正したら効果の高い悪習慣から順番にご紹介します。

日光を浴びない生活

日光を浴びない生活は、睡眠の質を下げます。というのも、日中に日光を浴びることで「睡眠ホルモンのメラトニン」が合成され、このホルモンの働きにより、夜中にぐっすり眠れるからです。

メラトニンは以下の2つの働きにより、眠りを深くします。

メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。①メラトニンは直接的に睡眠作用を持つほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、②深部体温を低くする作用があり、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

一般的に、光を浴びてから14~16時間後に、体内でメラトニンの分泌量が増え始めます。つまり、朝の7時頃に太陽の光を浴びると、21~23時ごろにメラトニン量が増え眠気を催します。

時刻毎のメラトニン分泌量
時刻毎のメラトニン分泌量

日光を浴びないことで夜間のメラトニンの分泌が不十分になっているため、睡眠に満足いかない結果になっている可能性があります。

疲れていない

人が眠くなるメカニズムは、たった2つだけです。以下の2つのバランスで眠りの質・量・タイミングが決まっています。

  1. 疲れたから眠くなる(恒常性維持機構)
  2. 夜になると眠くなる(生体時計機構)

オフィスワーク、ルーティンワーク、家事(特に子供が巣立った後)など、そこまで疲労を感じない活動が生活の大半を占めると、夜に眠ろうとしても眠れなかったり、眠れたとしても疲れが十分でないために眠りが浅くなったり、と睡眠の質が下がります。

長い昼寝・夕方の仮眠

「仮眠は健康に良い」と、もてはやされていますが、誤った仮眠は睡眠の質を下げてしまいます。

というのも、昼寝が長すぎたり仮眠のタイミングが悪いと、眠るときの疲れが十分でなくなるため入眠しづらくなったり、睡眠が浅くなるからです。

結果として、夜間の睡眠に満足できなくなってしまいます。

寝酒

「眠る前にお酒を飲むとよく眠れる」という方がたまにいますが、それは誤解です。

たしかに、アルコールは入眠にとても効果があります。緊張をほぐし、体温を一時的に上げた後に下げるので、身体が素晴らしいほどに睡眠モードになります。しかし、気持ち良く眠りに入れても、その後が問題です。眠りを浅くなるので、睡眠の満足度は下がります。

・寝酒が眠りを浅くするメカニズム
アルコール摂取の2〜3時間後、体内でアルコールが分解されるとアセトアルデヒドという物質になります。この物質は交感神経を優位にします。例えば、眠る30分前にお酒を飲むと仮定します。そうすると、眠り始めてから2時間前後に体内でアセトアルデヒドが発生します。つまり、休息に入ったとたん、脳と身体が興奮状態になるのです。その結果、眠りが浅くなります。

そのため、熟睡感を高めたい場合は、寝酒はできるだけ避けましょう。

夜間の明るい光

先に日中に光を浴びると、夜間の睡眠の質が上がると言いました。しかし、夜間は逆です。「夜間の光は眠りを浅くする」と覚えてください。

なぜなら、夜間の光はメラトニンの分泌を抑制する働きがあるためです。下の表をご覧ください。

日本の一般的な家庭の照度は300〜500ルクスですが、この程度の明るさでもメラトニンの分泌を抑制してしまいます。

カフェインの摂取

カフェインに覚醒効果があることはご存知と思います。どのように作用するかと言うと、

・カフェインの作用
アデノシンという鎮静効果のある神経伝達物質が脳内で伝達される前に、カフェインがブロックすることにより鎮静を妨げ覚醒効果をもたらします。カフェインを摂取すると、30〜60分後に血中濃度が最高になります。つまり、この間に覚醒効果が最高になります。そして健康な成人での半減期は2.5〜4.5時間。この間に効果が無くなっていきます。

一般的にカフェインの作用時間は4時間前後ですが、人によっては効果が8時間も続くことがあります。そのため夕食後に、カフェイン飲料を摂取すると、眠りを浅くする可能性があります。

他の睡眠障害による刺激

もしかすると、眠りに満足できない理由は「他の睡眠障害を抱えているから」かもしれません。
以下のような症状はありませんか?

・睡眠中に呼吸が止まる、乱れる「睡眠時無呼吸症候群」
 → 呼吸が減り、酸素不足になるので、疲れがとれにくくなります。

・腕や脚がビクビク動く、脚がむずむずする「睡眠関連運動障害」(「周期性四肢運動障害」や「むずむず脚症候群」)
 → 入眠困難になることがあり、睡眠の満足度が減ります。不眠になることも。

・睡眠中に相応しくない行動を起こす「睡眠時随伴症」
 a. 夢の中の行動を現実にしてしまう「レム睡眠行動障害」
 b. 寝ぼけて動き回る「睡眠時遊行症」や「夢遊病」
 c. 睡眠中に尿意を催し、目覚める「夜間頻尿」
 → 睡眠中に休息ができなくなったり、浅い睡眠が増えるため、睡眠の満足度が減ります。

もしこれらの症状が現れることがあるのなら、専門医への問診をオススメします。


2. 熟眠障害を克服する5つの方法

熟睡する方法は様々なものが紹介されますが、その中でも効果的と考えられる5つの方法です。

1章での原因の対策をしていくだけでも効果はありますが、「最も効果の高いものに絞って具体的な方法論」をご紹介します。

①午前中に必ず日光を浴びる

「午前中に浴びる日光は僅か30分の量で、睡眠薬1錠分に当たる」 と睡眠学者が言うほど、太陽の光は睡眠の質を上げてくれます。

具体的にどうすれば良いかと言うと、「午前中に45分間、太陽の光を浴びる時間をつくる」ことです。

例えば会社勤めの方であれば、出勤前に30分ほど朝の散歩の時間を作ってみてください。散歩の30分と出勤中に浴びる日光で合計45分間になればOKです。専業主婦の方の場合は、買い物に行くなど外出する予定を午前中につくりましょう。同じく、その間に45分間、太陽の光を浴びるようにしてください。

先に説明した通り、午前中に浴びる日光には夜間の睡眠の質を上げる効果があります。

スタンフォード大学の睡眠障害クリニックの研究者の実験によると、精神生理性不眠症を患う年配者に10,000lxの太陽光を45分間毎日浴びるように指示したところ、たった60日で大きな改善が見られたと報告しています。

とても効果的なので毎日コツコツ取り組みましょう。

②夜間は家庭の明かりを落とす

就寝の3時間前からは暗めの環境で生活をしましょう。以下のような具体策を行いましょう。

・家庭の照明器具を全て暗めに調整する。
・調整できないタイプなら間接照明で、ほの暗い環境をつくる。
・テレビ、パソコン、スマホを使用しない、もしくは、画面照度を最低にまで下げる。
・お風呂でも照明を使わず電気キャンドルで代用する。(転倒に気をつけること。)
・コンビニ・スーパーなどの明るいところへ行かない。
・どうしても行く必要がある場合は、サングラスをかけ浴びる光の量を減らす。

夜間は照明を落とす

出来るだけ多くの項目を達成できるようにしましょう。

③夜間に運動をする習慣をつくる

さらに、夜間に1時間程度の運動をする習慣を設けましょう。

具体的に言うと、「若干疲れる程度の運動(エアロビクス、ジョギングなど)を就寝の3時間前」に行いましょう。

運動内容は、あなたの筋肉量・運動経験を考慮しましょう。長らく運動をしていない人は、ウォーキング10分、早歩き40分、ウォーキング10分のような負荷の少ない内容から始めましょう。

このような運動を夜間に行うことは、以下の効果があると実験により報告されています。

・寝つきを楽にする。
・熟睡感を高める。
・翌日のスッキリ感を高める。

この実験は足利工業大学の吉田弘法教授により行われたもので、運動習慣のない男子大学生5名が60分の辛くない程度の有酸素運動(50分のエアロビクスと前後に5分のストレッチ)を行いました。朝(07:40 – 08:40)に運動を行う週、夕方(16:30 – 17:30)に行う週、夜間(20:30 – 21:30)に行う週、の3パターンで睡眠にどのような違いが現れるかを測定しました。実験の間、学生は23:30に就寝し07:30には起床する生活を送っていました。

その結果が以下のように報告されています。

夜の運動で入眠潜時が有意に短縮して、睡眠前半の徐波睡眠(ジョハスイミン: 睡眠段階3と4の深い睡眠を指す)が有意に増加しました。睡眠の心理的評価でも、入眠感(寝つき感)や熟眠感が有意に改善されました。さらに、図に示すように、翌日の日中の眠気を見ると、夜の運動は朝や夕方の運動よりも有意に低下しており、日中の眠気が改善されていました。これらのことから、夜の運動はその後の夜間睡眠を改善する効果があると考えられます。

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

運動のタイミングと翌日の眠気
運動のタイミングと翌日の眠気

疲れない程度の運動でもここまで大きな効果があるので、是非、習慣化しましょう。

④仮眠のルールを守る

日中に眠気を感じたときに仮眠をとることで、疲労を軽減することができます。しかしその一方で、疲労を取りすぎることにより夜間の睡眠の質が下がり、満足度が減ってしまいます。

そのため、睡眠の質を上げるために仮眠は控えてください。しかし、強い眠気により仕事や生活に支障が出る場合のみ、以下のルールの上で仮眠をとりましょう。

・仮眠は20分以内にする。
20分以上眠ると疲れを取りすぎてしまいます。さらに、睡眠が深くなりスッキリと起きるのが困難になります。あなたが寝入りに時間がかかるのなら、30分を目安に仮眠をとるのも良いでしょう。
・就寝の9時間前までに仮眠を済ます。
あなたの就寝時間が0時の場合、15時以降は仮眠を控えましょう。疲れがあまり溜まっていない状態では、寝つきも悪くなり熟睡しづらくなります。

今まで無意識に仮眠をとっていた方には特に大きな差が出ます。

⑤認知行動療法を行ってみる

最後に、睡眠指導の現場で使われる認知行動療法をご紹介します。認知行動療法とは、不眠の背景にある習慣・行動・考え方を変えつつ、睡眠を促進する技法です。

刺激制限法

「今晩も熟睡できずに明日つらかったらイヤだな」と考えたことはありませんか?

そのような眠りに対する「不安」が「寝室」と結びつくことで、「寝室は眠れない場所」と頭が無意識的に認知してしまうことがあります。

居間では眠れるが、ベッドに行くと眠れない人は、典型的な例です。このような認知レベルで起こっている不眠の改善を目指すのが「刺激制限療法」です。

刺激制限療法は以下のように行います。

1. 眠くなったときのみに寝床に就く。
2. 寝床を睡眠とセックス以外の目的に使わない。寝床で本を読んだり、テレビを見たり、食べたりしない。
3. 眠れなければ(たとえば20分間)、寝室を出て別の部屋に行く。本当に眠くなるまでそこにいて、それから寝室に戻る。もしすぐに眠くならなければ、再び、寝室から出る。この間、時計を見てはいけない。また、ホラー映画を見るなど刺激の強いことはしない。
4. もしまだ眠れないのなら、夜通し3を繰り返す。
5. その晩いかに眠れなくても、目覚まし時計をセットして、毎朝同じ時間に起きる。起床時刻を一定にすることは、体に一定の睡眠覚醒リズムを身につけるのに役立つ。
6. 日中、昼寝はしない。

(引用:睡眠障害の対応と治療ガイドライン 内山真 著)

これを繰り返しを行うことで、あなたの脳が「寝室はゆっくり休む場所だ」と認識するようになります。入眠がしやすくなり、睡眠が深くなると思います。

この方法はリチャード・ブーツィン睡眠博士(Richard Bootzin Ph.D.)により開発され、30年以上経った今なお、睡眠指導の現場で実地されているとても効果的な技法なのです。

是非、お試しください。

睡眠時間制限法 

もしくは思い切って、睡眠時間を短くすることにより、睡眠を深く満足できるものにしてみませんか?

・睡眠時間制限法とは
ベッドの中にいる時間を制限することにより、軽い断眠効果を起こし、不眠の改善を目指す方法です。睡眠への欲求と睡眠圧を高めるため、熟睡効果をもたらします。(※睡眠圧とは、いわゆる眠気のこと。)

 睡眠時間制限法は、以下のように行います。

1. ここ1週間の平均睡眠時間を計算する。(※ベッドの中にいる時間ではなく、眠った時間の平均。)
2. 平均睡眠時間+15分をベッドの中にいる時間に設定する。(※5時間未満になる場合は、5時間に設定する。)
3. 日中に仮眠をとらない。
4. 起きる時刻を、休日を含めて一定にする。
5. 起きたとき、何時間眠れたか記録する。
6. 睡眠効率が90%以上の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を15分増やす。(※睡眠効率とは、ベッドの中にいる時間の内、眠っていた時間の割合)
7. 反対に、睡眠効率が85%未満の日が5日間継続したら、ベッドの中にいる時間を短く設定する。

(引用:『睡眠学II』 宮崎総一郎・大川匡子・山田尚登 編著 一部改変)

例えば、あなたが以下のような睡眠状況だとします。

 23時にベッドに入り、6時半に起床。寝付くのに1時間ほど時間がかかる。夜間に2~3回中途覚醒があり、1時間くらいは目が覚めた状態。実際に眠っている時間は、5時間半くらい。

このような状況が1週間続いていたら、以下のように「ベッドの中にいる時間」「起床時刻」「就寝時刻」を決めます。

「ベッドの中にいる時間」は平均睡眠時間(5時間半)に15分足した「5時間45分」とします。そして、起床予定時刻を軸に就寝時刻を定めます。そのため、起床時刻が「6時半」とすると、就寝時刻を「0時45分」と設定します。

そして、この睡眠スケジュールで5日間、生活をします。そして5日間の睡眠状況をもとに、次の睡眠スケジュールを設定します。当初は日中の眠気を感じ、つらいと思います。しかし、仮眠は極力避けましょう。夜間の睡眠の質を低下させてしまい満足度を減らします。

最終的に中途覚醒がなくなり(もしくは減少し)、日中に眠気を感じなく、睡眠効率が85%から90%の間で安定していれば、症状が改善したと言えます。とはいえ、こちらの方法は少し荒療治のようになるので、睡眠外来などを受診し専門医と共に取り組みことをオススメします。


まとめ

あなたが熟睡できていない原因は分かりましたか?原因さえ分かれば、後は地道に対策に取り組んでいくだけです。「快眠できた!」という声が聞こえることを楽しみにしています。

なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。

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