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【睡眠と体温の関係性】仕組みを理解して熟睡を

「眠るときは体温が下がるって言われていますが、私は体があたたかくなるように感じます。どうしてでしょうか?」

このような質問をいただきました。

これは「体温」に関するよくある誤解ですね。

私も最初、ひっかかりました。体温と眠りにはとても深い関係があります。

そのため、睡眠中とその前後の体温の変化への理解を正すことで、睡眠の質を深める大きな助けになります。そこで本日は「睡眠と体温の関係性と、その仕組みを応用した熟睡方法」についてご紹介します。

よりよい眠りのための参考にしてください。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
取材依頼はお問い合わせから。
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1. 睡眠中とその前後の体温の変化

体温がどのように変化するのか、眠る前の段階から時系列にその動きを解説していきます。

(社)日本睡眠教育機構が提供する睡眠中の体温の変化を表したチャートがあるので、まずは以下のイラストをご覧ください。

睡眠中とその前後の体温の変化
睡眠中とその前後の体温の変化

ご覧の通り、体温の変化をベースに考えると、睡眠の段階は以下の3つ分けられます。

  1. 眠る前
  2. 入眠から眠りが深くなるまで
  3. 深い眠りから起床まで

それでは次に、それぞれの段階ごとに体温の動きを説明していきます。

1−1. 眠る前から体温は下がり始めている

人の体温は眠る前から徐々に下がり始め、休息モードになります。

よく誤解があるのがこの時間帯の体温のことで、「深部体温」と「皮膚温」を一緒くたにしてしまうことから誤解が生じます。

皮膚温はあまり低下していないどころか、22時から23時にかけては急激に上昇しています。そのため、体感としては手足がポカポカしてるように感じられるため、眠る前に体温が上がっているように誤解をしてしまうのです。

これは熱放散という仕組みで体内の熱を下げるために、手足の先から熱を発散しているのです。また、それと同時に、汗をかくことにより、体温が効率的に下がるようになっているのです。

1−2. 睡眠が深くなるにつれて体温はどんどん下がっていく

そして眠りに入ると、体温はそのままどんどん下がり続けていきます。

寝入りから明け方にかけての体温の低下は、約1.5℃にもなります。なぜこんなにも体温が下がるのかといえば、それは主に脳を休ませるためです。

詳しくはこちらのページ『睡眠の重要性|人はなぜ眠るのか?睡眠の3つの役割』で説明していますが、頭脳という超ハイスペックのシステムを休ませつつメンテナンスをするために、体の他の機能もオフに近い状態になるのです。

つまり睡眠の役割とは大脳を守り、修復し、よりよく活動させることである。発育初期には大脳を創り育てる役割もある。

(引用:『ヒトや動物はなぜ眠るのか』 井上昌次郎著)

このことを知ると、睡眠中に体温が下がる必然性や重要性について強くご理解いただけると思います。

1−3. 目覚めに向けて体温は上がっていく

その後、早朝に底を打った体温は目覚めに向かって上昇していきます。

これは体が動きだすために静かにエンジンが温まっている状態です。

早朝に起きた経験がある人ならわかると思いますが、頭がぼーっとして体を動かすのも大変ですし、そもそも何のために起きているのかもすぐには思い出せないほどです。

コルチゾールの1日の分泌量の変化
コルチゾールの1日の分泌量の変化

詳細なメカニズムは解明されていませんが、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの分泌量が早朝時に増えていくに従い、血糖値や血圧を上昇させ代謝促進させ体が目覚めていくと考えられています。

※午後の眠気のウラにも体温の低下アリ

余談ですが、午後の早い時間帯(14時ごろ)に眠くなるとき、やはり体温は低下しているのです。

眠気が生じる午後の時間帯にも体温は下がっている
眠気が生じる午後の時間帯にも体温は下がっている

 

この時間帯の眠気は体内時計によるものと考えられています。

体温が低下することから、私たちのご先祖さまたちはお昼寝の習慣があったのでは、とも考えられています。

…その結果、午後の早い時刻には、食事をとった、とらないに関係なく一過性に眠気が出現するが、夕方に向けてこれが減少してくこと、全体に体内時計のリズムが遅れていると午後の眠気が出現する時刻も遅れることなどから、午後の眠気は体内時計によって昼の時間帯に引き起こされる現象と考えた。これは、動物が昼寝をするのと同じで気温が最も高い時間帯に動き回るエネルギーを消耗するため、これを防ぐ仕組みとしてできたものではないかと思っている。

(引用:『睡眠のはなし』 内山真 著)

1−4. 体温をコントロールして睡眠の質を上げる方法

睡眠と体温の関係が理解できたら、そのメカニズムを応用してあなたの眠りに役立てましょう。

おすすめの方法は以下の6つです。

  • 就寝2~3時間前に入浴で体温を上げておく
  • 入浴後は体温が自然に下がるよう着込み過ぎないようにする
  • 暑い季節はクーラーや扇風機で自然に体温が下がりやすいようにする
  • パジャマや寝具は自然な熱放散を妨げないよう吸水性と吸湿性のあるものにする
  • 睡眠中の体を不用意にあたためないよう電気毛布は睡眠時には切ること
  • 起床予定時刻に合わせて電気毛布がオンになる設定をすると寒い朝でも目覚めが楽に

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どれも簡単にできるので、ぜひ今日からお試しください。

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入浴後、体温が落ち着くのには時間がかかる

なお、激しい運動や熱いお風呂に浸かると、一時的に体温がかなり上昇します。そしてその後、体温が落ち着くまでに少なくとも1時間はかかります。

夜間の運動・入浴は計画的にするようにしましょう。


2. 皮膚体温をコントロールにより睡眠の質が上がることを調べた研究

アムステルダム自由大学医療センターが体温(深部体温・皮膚体温)と睡眠の質の調べた研究があります。

実験の対象者は24名。そのうち8名が平均27歳の健康的な若者、8名が平均65歳で眠りに問題のない大人、そして残りの8名が平均59歳の不眠を抱えた大人です。

体温を恣意的にコントロールすることができる特殊なボディースーツを着て眠ってもらい、睡眠時に深部体温は変わらないまま皮膚温度を0.4℃上げると、睡眠の質がどのように影響されるか調べられました。

たった0.4℃皮膚温度を上げるだけで睡眠もより深くすることが出来、早朝の目覚めを少なくすることも出来た。特に、大人はどちらのグループとも、徐波睡眠(いわゆる深い眠り)の時間が2倍になり、早朝覚醒する人の割合が58%から4%にまで減った。

(引用:”Skin deep: enhanced sleep depth by cutaneous temperature manipulation”. Roy J. E. M. Raymann, Dick F. Swaab, Eus J. W. Van Someren.,)

深部体温の変化が追いきれなくやや残念なところが残った実験ですが、皮膚からの放熱を促すことにより眠りが深まり、不眠を抱える人でさえも早朝覚醒を減らすことを示した珍しい実験です。

1−4で紹介している方法であなたの体温を眠りのために最適化してみてください。かなりの違いを感じられるはずです。


最後に

睡眠と体温の関係、そして、それを応用した快眠法までご理解いただけと思います。あなたが眠りの質を上げるための一助になっていれば幸いです。

なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。

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