「大人になってから夜尿症になった」
大人のおねしょは珍しい症状だと思われがちです。しかし、恥ずかしい症状として隠されていることもあり、実のところ、悩んでいる方は意外にも多く存在しています。
そこで本日は「大人が夜尿をしてしまう原因と対策」についてご紹介します。
Contents
1. どれくらいの大人が夜尿している?
夜尿症の大人の数を調べた調査がないため、正確な数値こそ明らかにされていないのですが、子供の時からずっと夜尿症が続いている大人は、全体の約1%いると言われています。
成人まで夜尿症が治らない人が約1%いることも事実です。
(引用:「睡眠学Ⅱ」宮崎総一郎、山田尚登、大川匡子 編著)
さらに、ストレス、睡眠障害、加齢などの原因により大人になってから夜尿を発症した人の存在を加えると、夜尿にお悩みの大人は100人に1〜2人は存在していると考えられます。
2. 大人の夜尿症、3つの原因
大人の夜尿症の原因と一口に言っても、大きく分けると以下の3通りあり、ほとんど別物と言ってもよいほど状況が異なります。
- 幼少期からずっと続いている夜尿症
- 大人になってから発症した夜尿症
- 病気を原因とする夜尿症
それぞれ順を追ってご説明します。
2−1. 子供の頃から夜尿症が続いている場合の原因
このケースの夜尿症の原因は、以下の2つであることが多いです。
- 睡眠中の尿を制御する抗利尿ホルモンの異常
- 膀胱容量が小さい
「私はどっちの原因なんだろう」とお考えと思います。こちらのページ『3つのタイプ別|夜尿症の原因と見分け方』を参考にし、あなたはどちらの原因(もしくは両方)に該当するのか確認してみましょう。
そうすることで対策も立てやすいですし、医療機関でどのような治療をしてもらえるのかイメージしやすくなります。
2−2. 大人になってから夜尿症になる場合の原因
このケースの夜尿症の原因は人により様々ですが、主な原因は以下のようになります。
- ストレスによる自律神経の乱れ
- 加齢による排尿をコントロールする筋肉の衰え
- 加齢による膀胱容量の低下
- 睡眠障害(主に睡眠時無呼吸症候群)による排尿リズムの乱れ
- 過度のアルコールの摂取による利尿作用と筋肉の弛緩
- 損傷により排尿機能の障害
- 極度の便秘による膀胱の圧迫
- その他病気
20~30代ではストレスとアルコールが圧倒的に多いです。私の友人にもいます。
40代後半からは加齢、睡眠障害による夜尿が増えます。60代以降になると加齢による夜間頻尿がひどくなり夜尿してしまうこともあります。
2−3. 夜尿症の原因となる病気
夜尿症の原因を自己判断で終わらせてはいけない理由の一つに、病気が原因となって夜尿していることがあります。
具体的には、以下のような病気が夜尿症の原因となります。
夜尿の病因 | 基礎疾患 | ||
夜間尿量増大 | 腎尿路疾患 | 先天性腎尿路異常 (低張尿) | 低形成腎、異形成腎、水腎症 |
心因疾患 | 神経性多飲症(低張尿) | ||
内分泌疾患 | 尿崩症(低張尿) 糖尿病(高張尿) | ||
膀胱容量低下 | 腎尿路疾患 | 膀胱疾患 | 排尿筋過活動、膀胱容量増大、 排尿筋-尿道括約筋協調不全、 慢性尿路感染症 |
脊椎疾患 | 脊髄破裂、脊髄髄膜瘤、 脊髄腫瘍 | ||
内分泌疾患 | 高カルシウム尿症 | ||
その他 | 腎尿路疾患 | 先天性腎尿路異常 | 異所性尿管 |
神経疾患 | てんかん | ||
耳鼻科疾患 | 睡眠時無呼吸症候群 |
(引用:「夜尿症診療ガイドライン2016」 日本夜尿症学会 編集)
例えば糖尿病の場合、血糖値が高くなると腎臓で水分の再吸収が十分に行われず、尿の量が多くなってしまいます。
このような病気のサインとしての夜尿の可能性があるので、医療機関に必ず受診して病気の治療を行うようにしましょう。
3. 大人の夜尿症の対策
夜尿症の対策は、家庭であなた自身が行える対策を行いつつ、医療機関での薬物治療を並行して行うことをおすすめします。
3−1. 家庭でできる対策
まずは家庭でどのようなことができるかご紹介します。
飲食物の摂取[内容と時間]制限
まず家庭でできる夜尿対策として、食べ物と飲み物の内容と時間をコントロールすることです。そうすることで、夜間の尿量が減るので夜間しにくくなることが期待できます。
具体的には以下の2点のコントロールが大切です。
- 摂取内容の制限
水分量を控えめに摂取することは言うまでもありません。塩分・たんぱく質を過剰摂取すると体内濃度を薄めるために、アルコールとカフェインは利尿作用があるために、多飲につながるので控える必要があります。 - 摂取時間の制限
水分やたんぱく質の摂取は、なるべく午前中や午後の早い時間帯に多めに摂取をするようにしましょう。就寝前の飲食は避けましょう。
例えば、夕食の味噌汁、夜間運動後のプロテイン、晩酌・寝酒などは特におすすめできません。
「おねしょに効く食べ物はないの?」聞かれることがありますが、完全に効果の立証されている食べ物・飲み物はないので、「やってはいけないこと」を徹底することをおすすめします。
尿道・膀胱括約筋の強化トレーニング
この対策は、体の衰えを感じている初老の人におすすめです。
肛門をギュッと締めるように力を入れると、尿道・膀胱周りの筋肉に力が入りトレーニングになります。無意識的に尿が漏れてしまうことの対策になります。
3−2. 医療機関での夜尿症の治療
医療機関での診療から治療の流れは以下のようになっています。
上記の家庭でできる対策(行動療法)の中から何があなたに適切なのか具体的なアドバイスをもらえ、そして、より具体的な指示を受けることもできます。
そしてその上で、医師と相談し薬物治療を行うか決めていきます。
医療機関を受診し薬物治療をする
医師の適切な判断の元、薬物での治療も同時に行うことでさらなる改善が見込めます。
しかし、忘れてならないのは、家庭でできる対策(行動療法)のほうが大切で、薬物治療は補助的な役割だということです。
どんなに専門的な病院を受診しても、生活指導をしないで治療した場合には、薬の効果は少ないとみてください。生活指導の重要性は、夜尿症の治療にとって約7割をしめていると思ってください。逆に、薬物療法の効果は3割程度ということになります。
(引用:『新おねしょなんかこわくない』帆足英一 著)
信頼できる医師と相談し、薬物治療の是非も検討しましょう。
医療機関の選び方
最寄りの夜尿症外来・泌尿器科を持つ医療機関をリストアップし、その中から、大人の夜尿症治療の経験が豊富なところを探しましょう。
ただ、病気や障害が原因となっている場合は、その原因の専門医に診てもらうのも一手です。
例えば、あなたの夜尿症の原因が睡眠時無呼吸症候群の場合は、睡眠時無呼吸症候群の治療経験のある睡眠外来や専門の耳鼻咽喉科への受診も良いです。
治療の流れ、行動療法、アラーム療法などの具体的な内容はこちらのページ『【図解】夜尿症の原因から治療までの体系的知識』で総括しているので併せてご参考にしてください。 |
漢方は効くの?
「漢方は夜尿症の改善に効果あるの?」と言われることがありますが、これに関しては意見が分かれています。
漢方療法はこどもが冷え性の場合に有効である、理学療法は昼間の尿失禁に有効である、と言われていますが、現在のところ明確な医学的根拠、評価に耐える治療成績は出されていません。
(引用:「夜尿症 -その正しい理解のために-」 赤司俊二 著)
西洋医学の見地からは東洋医学の根拠は理解されにくいことが多いです。
が、特に効果があると言われる子供の冷え性にでさえ疑問が投げかけられている現状、あまり期待しすぎないほうが良いと思います。
3−5. おねしょグッズでの対策
夜尿症の頻度が多いと後始末に多くの労力を費やすことになります。
そのような不満・イライラを減らすためにもおねしょグッズで事前対策をしておくことが大切です。おねしょパンツを履いたり、防水シーツをベッドに敷いておくことで後処理がとても手軽になります。
また、洗濯しにくいと評判の防水シーツですが、以下のページで快適に使える防水シーツの選び方(素材、生地、防水範囲の違いなど)をご説明しているのであわせてご参考にしてください。
関連記事最後に
あなたの夜尿症の原因を把握する一助になっていれば幸いです。
是非、医療機関を受診し、そして、具体的な対策や薬物治療の検討を進めることをおすすめします。