「これはかなり効くな…!」
「だからこそ怖い。安易に勧められない。」
それが私のメラトニンサプリへのスタンスです。
睡眠健康指導士として名乗っていることもあり睡眠関連の質問を受けることもしばしば。
そして、たまにあるのが「メラトニン」についてのもの。健康系ブログやメンタル系ブログで紹介されているため「実際のところどうなの?」と突っ込んだ質問をされます。
ということで本日は「メラトニンサプリの効果」を私の体験談を踏まえてお伝えします。加えて、サプリに頼らない代替案もご紹介します。
※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。 |
Contents
1. 睡眠ホルモン「メラトニン」の作用と効果
メラトニンは「睡眠ホルモン」と呼ばれるほど眠りに影響を与える脳内物質です。
- 眠気を起こす作用がある
- 体内時計に夜が来たことを知らせる
- 深部体温を下げ脳と体を入眠モードにする
メラトニンとは、松果体より分泌される脳内ホルモンで、トリプトファンからセロトニンを経て合成される。昼間は少なく夜間睡眠時に分泌が上昇する。メラトニンは直接的に睡眠作用を持つほか、概日リズム(体内時計)に深く関係し、深部体温を低くする作用があり、睡眠・覚醒リズムの調整に重要な役割を果たしている。
(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)
まさに睡眠のためのホルモンです。
しかも、睡眠作用以外にも下記のような働きがあるとも伝えられています。
・免疫機能の改善
・血圧の正常化
・ガン細胞の増殖や腫瘍の成長の抑制(白血病も含む)
・DNA保護力の強化、フリーラジカル(有害な活性酵素)の排除
・骨粗しょう症リスク低下
・脳内に血小板が生じる(アルツハイマー病で見られる現象)リスクの低下
・偏頭痛をはじめとする痛みの緩和
・甲状腺機能の改善
・インスリン感受性の向上と体重減少の促進
(引用:「Sleep 最高の脳と体をつくる睡眠の技術」 ショーン・スティーブンソン著 )
かなり多岐にわたる働きです。
ただ、「働きがある」とはいってもどこまでその働きが作用するかは言及されていないので、期待はしすぎないほうが無難です。とはいえ例えば、不眠症で睡眠不足の人が太陽の光を浴びて積極的にメラトニン合成を促すことで睡眠が改善されることは実験を通してデータで報告されているので、メラトニンサプリの摂取により眠りが良くなれば血圧が正常化されるというのは十分実現可能な働きと考えられます。
2. メラトニンサプリを飲んだ感想|効果はあるもののおすすめ出来ません
こちらが私がアメリカのスーパーVonsで購入したメラトニンサプリです。アメリカのスーパーや薬局であれば、ほとんどどこでも取扱があるほど一般的なものです。
1ボトル240粒入りで20ドル(2000円強)くらいでした。
就寝1時間前に1粒水で飲むという使用方法です。毎日飲んでも約8ヶ月もつので、1ヶ月あたり2.5ドル(約300円)とかなりリーズナブルです。
効果はと言いますと、かなり効きます。私はこのような仕事柄、いろいろなサプリ・睡眠グッズを試して来ましたが、初めて本当に入眠効果があると思えました。
夜22時、メラトニンサプリを1粒(3mg)飲みます。
基本的に、我が家では20時半から21時には子供が寝静まり、その後私の自分の時間が始まります。22時以降は本を読んでいるかパソコンで調べものをしています。そして、23時半から24時半くらいに眠くなったら眠るというのが私の一日の終わり方です。結構集中していることと、パソコンの光の影響もあり、眠気が起きにくいこともしばしばあります。
ただ、メラトニンサプリを摂取すると、状況が大きく変わります。1粒飲んでから1時間ほどすると体温がスーッと下がってくるのがまず感じられます。そしてその後、まぶたが若干重くなってきて、頭がぼーっとするようなうっすらとした眠気がやってきます。摂取から1時間ほどでかなり自然な眠気が起こるのを感じられました。まさかこんなに自然に眠くなるとは思わなかったので、そのままベッドに行くとかなりスムーズに入眠出来ました。多分寝付きに5分もかかっていなかったと思います。
驚きと面白さから眠りに困ってはいないものの5,6回試したところ、毎回同じような結果でした(ただ、眠りが深くなったとか、起床時の覚醒感が高まったとかは感じませんでした)。このことからやはり、メラトニンサプリは入眠にかなり効果があるとは思いました。
ただ、5,6回目以降、同じようにメラトニンサプリを飲むと、若干効果が以前よりは薄れるように感じてくるようになりました。そしてそんな日が2,3回続いた後のある休日のこと、前日に子供の夜泣きがひどく夜中に3回起きてしまい、日中かなり眠たかったので2時間くらい昼寝をしてしまいました。そのため、いつも通りの時刻に眠るのはきついだろうなと思い、実験がてらメラトニンサプリを2粒飲んでみることにしました。摂取時刻は同じように22時頃でした。
結果的に、眠くなったのは25時頃でした。当初のような体温がスーッと下がっていき、自然と眠気が催されるようなことはありませんでした。そして、後日、平常運行で1日を終えようとしていた夜22時にメラトニンを1粒飲みましたが、同じように1時間ほどで眠気が出ることはありませんでした(メラトニンサプリなしの日のように24時前後になってから眠くなりました)。
ここで思ったのは耐性です。
5,6回ほどメラトニンサプリを使用したことで効きにくくなったのではないかと考えています。個人差こそあるかと思いますが、徐々に効き目が薄れることは誰にでも起こりうるかと思います。そして、私は使用を止めました。次の3つの理由からです。
- 使用すればするほど耐性がどんどん出来ていく可能性があること
- 体が本来持っている自然の生成能力を阻害する恐れがあること
- 未知の副作用があるかもしれないこと
1つ目の理由については上で述べた通りです(そもそも私は眠りに問題がないので、これ以上摂取する必要性を感じていないのもありますが)。2つ目の理由についてはエヴィデンスがある訳ではないので恐縮ですが、いろいろな分野で耳にする話なのでもしかすると、、、と考えています。3つ目についても想像の域を出ない話にはなりますが、私が使用当初に感じた効果を元に、身をもって恐れを感じているからです。何事にも言えますが、作用が大きいほど副作用が大きくなる傾向があります。常用したら(しかも摂取量が増えていくとしたら)、何かしらの副作用は避けられないと思います。
このような理由から、メラトニンサプリ は入眠効果はあるもののおすすめ出来ません。特に、不眠の悩みが強ければ強いほど、その効果にすがってしまい止められなくなる恐れもあります。
2−1. メラトニンの安全性と効果を調べた実験
私の主観だけでなく、メラトニンを効果と安全性を長期に渡って調べた実験があるので紹介します。
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学がメラトニンの効果と安全性を調べた研究があります。神経発達障害があり概日リズム睡眠障害(体内時計が乱れた不眠)の子供44人(平均6歳)に対して、毎日メラトニンを5mg摂取してもらいその後の様子が追跡されました。最長では3.8年継続してメラトニンを摂取している子がいる中で、特に問題なく睡眠の質も良くなり、メラトニンセラピーは好意的に取られていたと報告されています。
3. サプリに頼らずメラトニン合成を最大化するための方法
そもそもサプリに頼っている時点で、それは「快眠」と呼べるのか。私は疑問に思います。
サプリメントに頼らずとも、体内にはメラトニンを合成する働きがあります。この一連の仕組みを見直し、改善しましょう。そして、自然の力でメラトニンがより多く合成されるようにして、真の快眠を得ましょう。メラトニンが合成される流れをもう一度復習すると、以下のようになっています。
このイラストからも分かる通り、食事と朝の光が重要となります。
加えて、さらにいくつかメラトニンを高めるポイントがあるのであわせてお伝えてします。
3−1. ご飯はバランス良く食べるべし
体内でメラトニンが合成される元を辿ると、食事(トリプトファンの摂取)に行き着きます。
では、トリプトファンを多く含む食べ物が何かというと、以下のものになります(なお、トリプトファンをメラトニンに合成するためにビタミンB6が必要になるので、一緒に摂取できると理想的です)。
栄養素 | 多く含む食材 |
トリプトファン | 乳製品(ヨーグルト)、バナナ、大豆製品(納豆、豆腐、味噌)、卵、くるみ |
ビタミンB6 | バナナ、のり、魚類、肉類、白米 |
具体的に言いますと、海苔と豆腐の入った味噌汁、バナナ入りヨーグルト、納豆卵かけご飯などです。
味噌汁は個人的にかなりおすすめです。発酵食品でもあるので腸にもいいです。塩分が多くなるのは注意が必要です(バナナのカリウムが塩分を抑えます)。他にも、たまごは完全栄養食品と呼ばれるほど、多くの栄養素をバランス良く含んでいるのでおすすめです。困ったら卵料理です。私はほぼ毎日卵を食べています。
3−2. くるみが血中メラトニン濃度を上げる(かもしれない)
なお、上記の食べ物の中から、余裕があれば試してみてほしいのがくるみです。
というのも、テキサス大学健康科学センターの報告によると、くるみを食べることで血中メラトニン濃度が高まったとの報告があるからです。
ただ、実験とはいっても対象がねずみのため、人の場合にどれほどの量を食べればどれくらいの効果があるのかはまだ不明です。もしあなたがおやつなどを食べていらっしゃるなら、くるみを採用してみて変化があるか試してみるのも良いかと思います。ビタミンB6も含んでいるのでメラトニン合成の一助になります。
3−3. 光を浴びるべし
そして、メラトニン合成に欠かせないのが光を浴びることです。
朝、光を浴びることで夜のメラトニン合成が促されます。そしてその過程で、幸福ホルモンと呼ばれる「セロトニン」が分泌されるので、睡眠だけでなく精神の安定にも効果があるのです。
事実、光を浴びるだけで夜更かし型の不眠や、精神生理性不眠(心理的不安から眠れなくなる症状)が改善すると報告している研究があるほどです。午前中に30分、屋外を散歩しながら日光浴してください。曇り空の下でも10,000lx以上の光を浴びられます。
3−4. 夜間は暗めの環境で生活するべし
ただ反対に、夜間の光はメラトニンの分泌を抑制するので気をつけなければいけません。
一般的な住宅にある照明の明かり(300lx前後)ですらメラトニンの分泌を抑制します。なので、夕食を終えたら生活環境を暗くすることをおすすめします。例えば、下記のように。
- 夕食後は部屋の照明を暗めにする
- 夜間は間接照明のみにする
- 夜間はスーパーやコンビニに行かない
- パソコンやスマホの影響画面の照度を下げる
特に、子供は大人よりもメラトニンが抑制されやすい(87.6%も減少する)ので、お子様をお持ちの家庭は厳重注意です。
3−5. ツボ押しでメラトニン合成をブースト
最後に、是非とも試していただきたいのがツボ押しです。
ローマ・ラ・サピエンツァ大学の報告から、神門というツボを押すと体内メラトニン濃度が高くなると考えられるからです。
この実験は不眠症患者40名に対して、実験の目的がわからないようにしつつ神門を押すグループと押さないグループに分けて行われました(二重盲検プラセボ比較実験)。その結果、神門のツボを押したグループでは、尿内のメラトニン代謝物がより多く、正常な数値になっていることが分かったと報告されています。と同時に、毎日記録された睡眠記録によると、不安感が減り、睡眠の質が改善されてもいたとのことです。
テレビを見ながら気楽に出来ると思うので是非お試しください。
最後に
メラトニンを高める以外にも睡眠の質を上げる方法があります。
以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。
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