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睡眠中の「夜間熱中症」に注意!寝るときは暑さ対策を

「睡眠中に熱中症になることってあるのでしょうか?」とお問い合わせがありましたので、本日は夜間熱中症についてです。

東京消防庁の報告によると、平成25年の6~9月の間、東京消防庁管内で4,463人が熱中症およびその疑惑により緊急搬送されたのですが、このうち449人(約10%)は、午後9時台から午前7時台の間(睡眠中と考えうる時間帯)に該当しています。

つまり、自宅で休んでいたとしても、熱中症になる危険性が大いにあるのです。

そこで本日は『夜間熱中症の対策と仕組み、症状』についてご紹介します。よい睡眠で日中の疲れをきちんと取ることで、日中の熱中症予防にもなるのでぜひご参考にしてください。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
取材依頼はお問い合わせから。
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1. 睡眠中の熱中症対策3選

まずはおすすめの暑さ対策を3つご紹介します。

夜間の気温が30℃を超える熱帯夜には、絶対におこなっていただきたい対策です。そしてその上で、さらに涼やかな眠りを求める方に、おすすめの暑さ対策グッズと上手な使用方法をご紹介します。

1−1. エアコンを26℃の弱風で明け方までオンに

「なんだエアコンか」と思われるかもしれませんが、やはりエアコンが熱中症対策にはもっとも有効なのです。

夜間熱中症対策としてなら、以下のようにエアコンをお使いください。

  • 就寝30分前からエアコンで部屋を冷ましておく
  • 温度は26℃前後にする
  • 眠るときに風量を弱めにする
  • 冷たい風が体に当たり続けないようにする
  • 早朝3~5時に切れるようオフタイマーを設定する

寝入りのときから明け方まで、部屋を涼しく保つのがミソです。また、起床にあわせて部屋の温度が上がるようにすると目覚めやすくなります。

睡眠前中後の体温変化
睡眠前中後の体温変化

人の眠りの仕組みとしても「目覚めるときに体温が上がる」ようになっているので、エアコンをずっと付けっ放しにするのはおすすめできません。

私の寝室のケース(2018年7月現在)になりますが、5時にエアコン(26℃弱風)が切れるようにすると、7時頃に寒くも暑くもなく丁度いい涼しさで目覚めることができます。

もちろん、日によっては早朝頃にやや涼しすぎることがあるので、肌掛け布団は必須です。あなたの寝室と体質にあわせて微調整しながら、最適な温度とオフタイマー時刻を模索してみてください。

1−2. 扇風機で足元からそよ風を送る

エアコンを使わない方は、扇風機を上手に利用しましょう。

扇風機で夜間熱中症対策をするコツはエアコンと同じく、睡眠中になるべくずっと涼しくいられることです。睡眠時における扇風機の使い方のコツは以下の2点です。

  • 足元からそよ風を送る
  • 風力は弱めにする

人は眠るとき、体温を下げるために足先と手先から放熱をします。

足元からそよ風を送り続けることで、多少室温が高くても体温をスムーズに下げることができ、涼やかに眠れるのです。この方法は実際に、実験でも証明されています。

室温32℃、湿度80%の環境下で眠ると、暑くて何度も目が覚め、睡眠効率(※寝床にいる時間に対して実際に眠っている時間の割合のこと)が78%となりましたが、足元から秒速1.7mのそよ風を送ると中途覚醒が少なくなり、睡眠効率が95%へと大幅に改善しました。この結果は、室温26℃、湿度50%の快適環境下のもとで眠ったときの96%と同等でした。

(引用:『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』宮崎総一郎・佐藤尚武 編著)

風量はくれぐれも弱めに設定しましょう。

以前、私が中程度の風量を試したところ、明け方に体が冷えて目覚めてしまいました。下手すると体が冷えすぎて風邪をひく恐れがあるので、風量にはくれぐれもご注意ください。

1−3. お水を手の届く範囲に置いておく

布団なら枕元、ベッドならベッドサイドテーブルなどの手の届く範囲にお水を用意して眠りましょう。

上記2の対策をされていればまず問題はないですが、いざという時に手の届く範囲にお水があるのとないのでは大違いです。

就寝前にコップ1杯のお水を飲むのと違い、夜間頻尿を促すことにもなりませんし、備えあれば憂なしで安心して眠れます。

寝汗を多くかく体質の方に特におすすめの夜間熱中症対策です。なお、ミネラルや塩分を含んだスポーツドリンクや経口補水液(ケイコウホスイエキ)のほうがお水よりも対策としては効果的です(理由は2章)。

※その他の暑さ対策グッズ

さらにもうひと押し、暑さ対策にテコ入れをするのなら、涼しく眠るためのグッズを活用しましょう。おすすめのグッズのおすすめの使い方をご紹介します。

ただ、誤解をしていただきたくないのが、これらのグッズはあくまでエアコンや扇風機のプラスαな存在であることです。暑さ対策グッズだけで熱帯夜をしのぐのはやや無理があります。

  • ひんやり敷きパッド
    接触冷感素材や除湿素材などの敷パッドの上に寝ることで、体の火照りを抑えて涼やかに眠ることができます。Q-max値が示す「瞬間的な冷たさ」だけでなく、吸水性がありムレにくいことも重視してお選びください。詳細はこちらのページ『ひんやり接触冷感敷きパッドは蒸れる?!【良品を選ぶコツとは】』をご参考ください。
  • 氷枕
    氷で直接体を冷やす方法です。首筋、太ももの内側、脇の下などの大動脈が通っている部位を冷やすことで、体を効率的に冷ますことができます。
  • ひんやりシート
    おでこにひんやりシートを貼って寝ると、気分的にもだいぶ落ち着いて涼やかに寝られます。氷枕とあわせて具体的な商品をこちらのページ『エアコンなしで寝苦しい熱帯夜を乗り切る5つの冷感快眠法』で紹介しているのでご参考ください。

※絶対ダメ!熱中症リスクを高めるよくある誤解&習慣

「夏に涼しく眠るための商品」にもかかわらず、実は夜間熱中症リスクを高めてしまうものがあります。

あなたの知識が正しいかご確認ください。

  • 冷感スプレー
    体を「擬似的に」冷やしているため、実際に体は冷えていません。体が冷えていると思い込んで、エアコンや扇風機を使わなかったり、水分補給がおろそかになり、その結果、熱中症になってしまった人がいます。この点を留意した上で、ご使用ください。
  • ジェルマット
    ジェル素材のマットはひんやりして気持ちがいいですが、あまり冷感は長続きしません。その上、通気性も吸水性も吸湿性もないため、放熱がしづらくなり自然に下がるべき体温が下がりにくく、寝苦しい思いをすることがあります。
  • パジャマ
    ポリエステル素材のジャージやひんやりパジャマもジェルマットと同じく、放熱がしづらくなり寝苦しい思いをすることがあります。汗をしっかりと吸収できることを重視してパジャマを選びましょう。

他にも、寝酒も夜間熱中症リスクを高めます。アルコールの働きに利尿作用や発汗作用があり、脱水状態になりやすくなります。寝酒後の暑い環境での睡眠はくれぐれもお気をつけください。


2. 熱中症になる仕組みと症状

まずそもそも、熱中症とひとくちに言っても、3つのステージがあることはご存知でしょうか?

ステージ状態と症状
レベル1「熱失神」「熱けいれん」「日射病」と言われる状態。めまい、立ちくらみ、こむら返り(足をつること)、筋肉痛などが起こります。
レベル2「熱疲労」と言われる状態。だるさ、疲れ、脱力感、吐き気、頭痛などが起こります。
レベル3「熱射病」と言われる状態。レベル1・2の症状の重度化、意識障害、運動障害、過呼吸などが起こります。

人の体内では常に熱が生まれています。

そして、その熱が過剰にならないように汗をかくなどして放熱しています。

暑い環境下では、体温が上がり体内の熱が過剰になるため、さらに積極的に体の外に熱を出そうとします。その結果、大量の汗(元は血液)が流れるため、脳に行くはずだった血液が足りなくなり、酸欠状態になります。このようにして、「熱失神(めまいや立ちくらみ)」が起こるのです。またそのとき、水分だけでなく塩分も補給しないと、筋肉の調整に支障をきたし「熱けいれん(こむら返り、筋肉痛)」を起こします。

一方、汗を大量にかいているにもかかわらず、水分補給を怠っていると脱水状態になり「熱疲労(だるさ、疲れ、頭痛)」を引き起こすことになります。そして、さらに体温が上がり水分・塩分が不足すると、脳に悪影響を及ぼし「熱射病」となるのです。そのため、足をつりやすかったり、寝起きにだるさを感じる方は、軽度の熱中症の可能性があると考えられます。もしこのような症状に心当たりがあるのなら、なおさら暑さ対策が必要だと心得ましょう。


最後に

熱中症の仕組みから理解することで、睡眠中の熱中対策についてより理解が深まったと思います。快適な眠りの一助になっていれば幸いです。

なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。

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