睡眠

レム睡眠とノンレム睡眠とは?大脳の発達とそれぞれの関係

「レム睡眠、ノンレム睡眠とは何か?」と問われたら、どのようなイメージが湧きますか?

「浅い睡眠と深い睡眠」という認識が一番強いと思います。しかし、実のところ、レム睡眠は必ずしも浅い睡眠と言い切れないですし、ノンレム睡眠中に浅い眠りとなることがあります。睡眠の話を分かりやすく伝えようとした結果、誤解されてしまっていることがあるのです。

そこで本日は、レム睡眠とノンレム睡眠について詳しくご紹介します。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
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1. 睡眠の周期グラフから見るレム睡眠/ノンレム睡眠

人の睡眠はどのようになっているのか、以下の「一夜の睡眠の深さの変化と経過」を表したグラフ(ヒプノグラム)を見ると分かりやすいです。

Hypnogramm
一夜の睡眠の深さの変化と経過(ヒプノグラム)

縦軸は睡眠の浅さ/深さを表し、横軸は時間の経過を表しています。一晩の間に睡眠が深くなったり浅くなったりしていることが分かります。

それでは次に、このレム睡眠/ノンレム睡眠という眠りがどのようなものなのかご説明します。

レム睡眠とは

レム睡眠とは、全睡眠の約20%を占める身体を休めるための睡眠と言われています。

レム睡眠時、瞼の裏で眼球が動いている(急速眼球運動(Rapid Eye Movement))ためにレム(REM)睡眠と名付けられました。レム睡眠時の脳波が、まどろみ状態の時の脳波の動きと似ているために浅い睡眠と言われます。

しかし、この浅い睡眠を続かせるために、外界の刺激を感じにくくなっているので、必ずしも浅い睡眠とは言えないのです。例えば、レム睡眠中、体の筋肉が弛緩しています。鼓膜の筋肉まで緩んでいるのです。

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レム睡眠のときは筋肉がだらんと弛緩する

反対に、レム睡眠のとき脳は覚醒時のように活動しています(後述)。そのため、逆説睡眠(パラドキシカル・スリープ)とも呼ばれるのです。

ノンレム睡眠とは

ノンレム睡眠は、全睡眠の約80%を占める脳を休め修復するための睡眠です。深さに応じて以下の4つの段階に分けられるので、一概に深い眠りとは言えません。

  • 第1段階:まどろみ期とも呼ばれる非常に浅い睡眠です。脳波はまどろみ状態。椅子に座りながら姿勢を保っていられる程度の浅い眠りです。
  • 第2段階:軽睡眠期と呼ばれる浅い睡眠です。椅子に座っていると頭がカクンっとなり姿勢を保てなくなるが、名前を呼ばれると反応できる程度の浅い眠りです。
  • 第3・4段階:深睡眠期と呼ばれる熟睡状態です。いわゆる深い睡眠と言われる徐波睡眠の段階です。成長ホルモンの分泌が1日で最大になります。さらに、このときは多少の物音でも起きることはありません。脳機能が低下し休息・修復状態になっているので、この睡眠のときに起こされると頭がぼーっとします。

レム睡眠/ノンレム睡眠をさらに深掘りすると

と、上記でご説明した内容が一般的に知らせるレム睡眠/ノンレム睡眠ですが、本日はもう少し深掘りしてみましょう。

年齢で変わるレム睡眠/ノンレム睡眠の割合

年齢によって睡眠時間が変わるのはご存知かと思いますが、レム睡眠/ノンレム睡眠の割合も大きく変わります。以下のグラフのように、生まれたばかりの頃の睡眠は約半分がレム睡眠ですが、3歳になることには約20%にまで減ります。

sleep-changes-by-aging
ノンレム睡眠とレム睡眠の割合は年齢により変わる

もちろん、ノンレム睡眠の内容にも加齢に応じて変化があり、第3・4段階の深い睡眠は減っていき浅い睡眠が多くなります。

しかし、それにしてもレム睡眠はなぜこんなにも幼少期に多く出現するのでしょうか。

レム睡眠は大脳を構築する働きがある

その有力な仮説として、レム睡眠は人間が発達する上で大脳を創る働きがあるため、と考えられています。

そもそも、受精卵の状態では睡眠自体起こりませんし、胎児の初期段階でも睡眠は見られません。しかし、大脳の発達に伴って最初の眠りとしてレム睡眠が出現します。

レム睡眠中の新生児は、中枢神経系や筋肉系が刺激され、さかんに細かく動きます。この睡眠は「動睡眠」と呼ばれます。これはレム睡眠が大脳の機能を発達させ、意識を覚醒に近い状態に導くためと考えられます。

(引用:『睡眠と脳の科学』 古賀良彦 著)

そのため、生まれてくる前の新生児は24時間中のほとんどの時間をレム睡眠で過ごしていて、徐々に覚醒とノンレム睡眠が増えてくると考えられています。

ノンレム睡眠は大脳の休息のための睡眠

ノンレム睡眠が成長にともない増加していく面白い例え話に、「大脳が人間にとって高性能過ぎるマシンだから」というものがあります。

つまり、膨大なエネルギーを消費し、その上、老廃物を垂れ流す大脳を持続的に機能させるために、レム睡眠では手に負えなくなり生み出された第2の眠りがノンレム睡眠と考えられています。

高等動物になり大脳が発達してくるにしたがって、脳を積極的に休ませる仕組みが必要になり、レム睡眠とは異なった状態であるノンレム睡眠が発達したという。

(引用:『睡眠のはなし』 内山真 著)

生物の進化と伴に、睡眠も進化しているのです。無脊椎動物、魚類、両生類にはレム睡眠もノンレム睡眠もありませんし、爬虫類には僅かにそれらしき睡眠が確認できる程度です。

Difference-of-sleep

はっきりとレム睡眠とノンレム睡眠があるのは、大脳が発達している鳥類や哺乳類のみです。

睡眠のサイクルは必ずしも90分間隔ではない

レム睡眠とノンレム睡眠にはサイクルがあり、その間隔は約90分だと聞いたことがあると思います。しかし、90分周期説には語弊があります。

…81分から100分までの周期は全体の41.9%で、残りの約60%は90分周期からは、ずれているのです。

(引用:『睡眠のトリビア2』宮崎総一朗、北浜邦夫、堀忠雄 編著)

このように実際に睡眠サイクルが約90分に該当する人は40%程度しかいない のです。そのため、あまり当てにしすぎないことをおすすめします。

睡眠アプリは正しく計測できているのか?

スマホの普及にともない睡眠の内容を計測するアプリがリリースされています。

アプリで睡眠を計測し目覚めたい時刻付近で眠りが浅くなったタイミングを見計らいアラームを鳴らすなど、素晴らしい機能ですが実際のところどれほど睡眠を計測できているか疑問に感じている方もいらっしゃると思います。

正直、スマホアプリの精度はイマイチだと言われています。単純に、睡眠を測定するデータが不十分だからです。

  • スマホアプリ:加速度センサ
  • ウェアラブルデバイス:加速度センサ、心拍数、
  • 睡眠ポリグラフ検査:脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸など

スマホアプリはスマホの加速度センサにより寝返りなどを検知し、そのデータを元に睡眠の状態を測定されています(眠りが浅い時に寝返りが多いとされる)。とはいえ、スマホをベッド外に置いていたり、揺れが検知しにくい状態にあると正しく計測されませんし、そもそも寝返りだけで睡眠を測定するのは困難だからです。

ウェアラブルデバイスでさえ精度が50%と言われています(多めに見積もってだと思いますが)。

そのため、もしあなたが本当に睡眠にお悩みで真剣に睡眠状態を検査したいなら、最寄りの睡眠外来で睡眠ポリグラフ検査を受けて、専門家にアドバイスを参考にすることをおすすめします。


最後に

レム睡眠とノンレム睡眠の関係についてより理解を深める一助になっていれば光栄です。

なお、以下のページでこれまで紹介してきた、数々の研究で実証された良質な睡眠のために「するべきこと」と「してはいけないこと」を網羅的にまとめています。美味しいところ(結論)だけをつまみ食いできる構成になっています。是非ご一読ください。

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