「夜尿症治療ってどういうことをするんだろう?」
どのような治療が行われるのか分からないため、子供を病院へ連れていくのに戸惑うことはないでしょうか。
しかし、子供の夜尿症の治療は、なるべく早く始めるに越したことはありません。
そこで本日は、夜尿症治療の全体像をすっとイメージできるように分かりやすくイラストを使って説明します。
Contents
1. 何よりもまずは病院に受診を
「夜尿症はそのうち自然に治るものじゃないの?」
このように考えられていることが大半です。たしかに、成長とともに夜尿がなくなっていくことは多いです。
しかし、夜尿症状が長期化している子供のケースを見ると、病院を受診せず適切な処置を取っていなかったことが大半だったと報告されています。
そのため、以下の指標(年齢と夜尿回数と頻度)を参考に、病院を受診するかの目安にしてください。
また、小学5年生の6月頃には、泊りがけの野外活動があると思います。子供には絶対いい思い出にしてもらいたいですよね。
なので、「野外活動までに夜尿症を治す」 ことを目標に設定して、子供と一緒に治療に始めてみましょう。症状の程度にもよりますが、夜尿症治療には平均2年かかると言われています。そのため、小学3年生くらいで夜尿症治療を始めることをおすすめします。
1−1. 問診と検査で夜尿症タイプ診断
病院を受診するとまず最初に、問診と尿検査が行われます。
「夜尿の頻度」「夜尿の1晩における頻度」「昼間のお漏らしの有無」「生活習慣」「病歴」「両親の夜尿歴」「尿の状態」を元に、子供の夜尿症のタイプと原因が調べられます。
夜尿症のタイプは以下の3つに分けられ、タイプに応じた治療が進められていきます。
- 多尿型:何らかの原因により、膀胱に容量以上の尿が貯まり、夜尿をする。
- 膀胱型:尿量は通常だが、膀胱に貯められる尿の容量が少なく、夜尿をする。
- 混合型:上記の2つの原因が重なって夜尿をする。
周りの子よりも発育が遅めなだけのこともあれば、飲食などの生活習慣に問題となっていることもあります。または、ホルモンの分泌が原因となっていることもあります。
原因よって行うべき対策が大きく変わるので、経験豊富な専門医に診てもらいましょう。
夜尿症の原因についての詳細はこちらのページ『3つのタイプ別|夜尿症の原因と見分け方』をご参考にしてください。
1−2. 症状に合わせた行動療法を行う
治療の中でも大事なのが、あなたが子供と共に自宅で行う行動療法です。症状のタイプ別に、以下の生活指導が指示されます。
- 多尿型
水分摂取量のコントロール
塩分・たんぱく質の過剰摂取に気をつける
夕食の時間帯を早めにする - 膀胱型
排尿我慢訓練
尿道・膀胱括約筋の強化トレーニング - その他よくある指示
冷えへの対策
おねしょ対策グッズの活用
ここは子供とともに二人三脚になっての頑張りどころです。
症状の程度によってはこれらの生活指導をきちっと行うだけで、改善が見られることもあります。
それぞれの具体的な内容についてはこちらのページ『夜尿症の治し方|自宅で行う行動療法』をご参考にしてください。
夜尿症の原因が病気の場合は専門医へ
稀なケースですが、何らかの疾患が原因となり夜尿をしていることもあります。例えば、以下のような疾患です。
夜尿の病因 | 基礎疾患 | ||
夜間尿量増大 | 腎尿路疾患 | 先天性腎尿路異常 (低張尿) | 低形成腎、異形成腎、水腎症 |
心因疾患 | 神経性多飲症(低張尿) | ||
内分泌疾患 | 尿崩症(低張尿) 糖尿病(高張尿) | ||
膀胱容量低下 | 腎尿路疾患 | 膀胱疾患 | 排尿筋過活動、膀胱容量増大、 排尿筋-尿道括約筋協調不全、 慢性尿路感染症 |
脊椎疾患 | 脊髄破裂、脊髄髄膜瘤、 脊髄腫瘍 | ||
内分泌疾患 | 高カルシウム尿症 | ||
その他 | 腎尿路疾患 | 先天性腎尿路異常 | 異所性尿管 |
神経疾患 | てんかん | ||
耳鼻科疾患 | 睡眠時無呼吸症候群 |
(引用:「夜尿症診療ガイドライン2016」 日本夜尿症学会 編集)
このような場合、該当の疾患の治療を優先しましょう。
※稀なケースとはいえ、夜尿症が病気のサインとなっていることがあるため、子供の夜尿症がひどい場合には病院を受診しましょう。
1−3. 必要に応じて薬物/夜尿アラームの使用
上記の行動療法による症状の経過を見つつ、治療薬もしくは夜尿症アラームの使用が検討されます。
薬物療法とは
以下の3つの種類が夜尿症治療薬として代表的です。
- 抗利尿ホルモン剤:尿を凝縮して量を減らす作用があります。
- 抗コリン薬:膀胱容量を増大する作用があります。
- 三環系抗うつ薬:上記の薬剤で効果が現れない時に使用されます。
夜尿症の原因と程度により使い分けられます。夜尿症は治療薬だけで治ることは期待できないので、あくまで行動療法が治療の主体となって進められていきます。
夜尿症治療に関しての詳細は、こちらのページ『夜尿症は薬で治る?薬物療法の作用と副作用』をご参考にしてください。
※漢方薬の効果は未だ不明
「子供に抗うつ剤なんて与えて大丈夫なのかな」と不安になり、漢方薬を検討することもあると思います。
しかし、漢方薬の評価に対しては、意見が別れています。
否定的な立場からは、明確的な医学的根拠がないと言われる一方、肯定的な立場からは、以下の漢方薬に効果があると言われています。
とはいえ、行動療法の補完として使われるべきという見方は大枠一致しています。
夜尿アラームとは
夜尿アラームとは、眠る前に以下のように体に設置して、夜尿を知らせる器具です。
成長期の子供の場合、睡眠の妨害は発育に大きな悪影響があります。子供を夜中に起こしてトイレに行かせるのは言語道断です。
夜尿アラームは、夜尿をしてしまった時だけアラームで起こされるので、睡眠を必要以上に妨害することがありません。また、少しずつ夜尿量を減らしていき、朝まで眠れるようになると報告されています。
しかし、夜尿患者の症状と生活環境によって向き不向きがあります。こちらのページ『夜尿症アラームには向き不向きが?!効果と具体的な使い方』をご参考にしてください。
最後に
「なるほど、夜尿症治療ってこういう流れなのね!とりあえず子供を病院に連れて行ってみようかな」と思ってもらえていれば幸いです。
今回は、夜尿症治療の流れを理解してもらうことに重点を置いたため、かなりざっくりとした内容になっています。夜尿の原因、行動療法、グッズの活用などの詳細をこちらのページ『【図解】夜尿症の原因から治療までの体系的知識』で総括しているので併せてご参考にしてください。