5歳未満の幼児がするおねしょに対して、5歳以上の子供から大人が睡眠中に尿を漏らすことを夜尿症と区別します。
夜尿症が長引く子供もいますし、大人になって初めて夜尿症を経験する人もいます。
しかし、「そもそもなぜ尿が漏れてしまうのか?」とその原因が気になるところだと思います。
そこで本日は夜尿症の原因についてご紹介します。
Contents
1. 夜尿症の3タイプと原因
夜尿症の原因を把握するために、まずは夜尿症の代表的な3つのタイプを知っていると理解が早いです。
- 多尿型:何らかの原因により膀胱に容量以上の尿が貯まってしまって夜尿をしてしまいます。
- 膀胱型:尿量は通常なのですが、膀胱に貯められる尿の容量が少なく、尿が溢れて夜尿してしまいます。
- 混合型:上記の2つの原因が重なって、夜尿してしまいます。
これら3つの夜尿症のタイプと原因をざっとまとめると、以下のチャートのようになります。
それでは次に、各タイプとその原因の詳細についてご説明していきます。
※どのタイプに該当するかの見分け方は2章でご紹介します。
1−1. 多尿型の原因
多尿型、つまり、睡眠中に尿が異常に生成されることですが、この原因は主に以下の2つが考えられます。
- 抗利尿ホルモンの分泌が不十分
- 塩分・たんぱく質の過剰摂取
次に、それぞれの詳細をご紹介します。
抗利尿ホルモンの分泌が不十分
抗利尿ホルモンとは何かと簡単に言うと、睡眠中の尿をコントロールするホルモンです。
約7時間もの長い間、尿意に邪魔されずに眠り続けるために、尿の量を減らすのがこの抗利尿ホルモンの役割です。通常、朝一番の尿は濃い色をしていますが、これは抗利尿ホルモンにより尿が濃縮されているからなのです。
しかし、抗利尿ホルモンの分泌が不十分だと、眠っている間にもうすい尿がたくさん生成されてしまいます。そして、膀胱で貯められる以上の尿が生成されてしまうことで、夜尿をしてしまうのです。
改善のために飲食量のコントロールや、子供の場合は排尿訓練などを行いつつ、補助として薬物が使用されることがあります。
塩分・たんぱく質の過剰摂取
塩分やたんぱく質の摂取が過剰な場合、抗利尿ホルモンの分泌が正常でも多尿型の夜尿になることがあります。
これは人間の体の仕組みが関係しており、塩やたんぱく質が必要以上に摂取された際、どうにかして体内の濃度を薄めようとします。その作用として、「水分を多く補給して尿として体外に出す」ことになるのです。
それが眠っている時、気付かずに行われてしまうと、夜尿になってしまうのです。
夕方以降の飲食量・内容の見直しで改善が見込めます。
1−2. 膀胱型の原因
膀胱型、つまり、膀胱にためられる尿が少ないケースですが、この原因は主に以下の2つが考えられます。
- 膀胱が十分に発達していない
- 副交感神経の作用が強い
次に、それぞれの詳細をご紹介します。
膀胱が十分に発達していない
小学校低学年の児童に多いですが、膀胱が未発達のため貯められる尿の容量が少ないことがあります。
歩き始める時期、言葉を話し始める時期に個人差があるように、膀胱の成長スピードにも個人差があります。当然といえば当然です。
貯められる尿量が少ないため、尿が溢れて漏らしてしまうのです。
排尿トレーニングや成長により自然に治っていくことが期待できます。
副交感神経の作用が強い
通常、膀胱の中に尿がたまるにつれて、どんどん膀胱の圧が上がっていきます。そして、圧が一定を超えると、尿意を催して排尿することになります。
しかし、副交感神経が敏感なために、膀胱に貯められている尿が少ないにもかかわらず尿意が生じて排尿に至ってしまうことがあります。
この場合、夜尿だけでなく、昼間尿失禁があるかどうかでも原因が分かれます。
- 夜尿も昼間尿失禁もある
- 昼間尿失禁はなく夜尿だけ
夜尿も昼間尿失禁もある
この場合、昼間の漏らしが治った後、夜尿が改善していくのが一般的です。そして、昼間尿失禁の症状の程度は「漏らす時間帯」によって目安があります。
昼間尿失禁が午前中から見られる場合は重症で、治るのに数年以上は必要です。午後から見られるのは中等症で、治るのに一〜二年、夕方以後に見られるのは軽症で、一年以内に治ると考えてください。
(引用:「夜尿症 -その正しい理解のために-」 赤司俊二 著)
しかし、昼間尿失禁が小学校高学年や大人に見られる場合は、病気の可能性が疑われるので病院を受診することをおすすめします。
昼間尿失禁はなく夜尿だけ
昼間の失禁はなく夜尿だけする場合、昼間は尿を十分貯められるにもかかわらず、夜間は尿を貯められず夜尿に至っていると考えられます。
なぜ起床時と睡眠時で貯められる尿量が変わるのかについてはメカニズムが解明されていないため、このケースの治りが難しいと言われています。
この型の夜尿は、一般的な膀胱の貯めを増やす排尿訓練や薬では効果が不安定で、治りが悪い夜尿症(難治性)の代表的なものといえます。
(引用:「夜尿症 -その正しい理解のために-」 赤司俊二 著)
しかし、治りが難しいとはいえ、まずは専門医を受診しましょう。夜尿の状況を説明し、適切な判断をもらいましょう。
1−3. どちらの原因も併せて持つ混合型
混合型の場合、多尿型の原因と、膀胱型の原因のどちらも該当します。
抗利尿ホルモンの分泌リズムが整っていなかったり、膀胱が未発達なことから起こることが多く、小学校低学年の児童に多く見られると報告されています。
それぞれの原因が重なりあっているので、該当する原因を個別に対策していく必要があります。
1−4. その他の原因
また、上記の代表的な原因以外にも、夜尿になってしまう原因はあります。どちらかと言うと大人に多く該当しますが、子供でも該当します。
- ストレスによる自律神経の乱れ
- 加齢による排尿をコントロールする筋肉の衰え
- 損傷により排尿機能の障害
- 睡眠障害(主に睡眠時無呼吸症候群)による排尿リズムの乱れ
- 過度のアルコールの摂取による利尿作用と筋肉の弛緩
- 極度の便秘による膀胱の圧迫
30~40代の壮年期に多い原因がストレスです。ストレスといえば頭痛、腹痛、うつがよく挙げられますが、ストレスによって夜尿症になってしまっている人もいるのです。例えば学校嫌いな子供の場合、夏休み中に治ったかのように見えた夜尿が、夏休み明けにまた始まってしまうというのはよくある話です。
これらの場合、「筋肉の衰え」→「夜尿症」と因果関係がはっきりしているので、専門医に具体的な対策を仰いで取り組むことで改善させることが期待できます。
OSASの発症に関して、成人では肥満が、小児ではアデノイドや扁桃の肥大がよくみられます。アデノイドや扁桃の摘出を受けると夜尿症の7割近くが改善し、昼間遺尿症も著明に軽快したと報告されています。
(引用:「睡眠学Ⅱ」宮崎総一郎、山田尚登、大川匡子 編著)
OSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)が原因となっている夜尿症であっても、OSASの治療を行うことで夜尿症に改善が見られたと報告されています。
1−5. 病気が夜尿症の原因のことも
病気が原因で夜尿症となっていることも全体から見ればほんの一部ですが、決して無視できない存在です。
昼間尿失禁がなかなか治らない、急に夜尿症になったが思い当たるフシがない、などの場合はためらうことなく病院へ診察にいきましょう。
問診や診断、尿・血液検査の後、もし病気の可能性が疑われる場合は、以下のような検査が行われることがあります。
病気が原因となっているとしたら、本当に早め早めの発見・治療が大切です。
そのためにも、病院への診察はなるべく早く行くことをおすすめします。
2. 夜尿症のタイプの見分け方
ここまで読んで、「どの夜尿タイプなのか分からない」と思われてはいないでしょうか?
そこで次に、夜尿症のタイプを見分ける方法をご紹介します。「多尿型と膀胱型のどちらにも該当する」という場合は、混合型とお考えください。
2−1. 多尿型の場合
多尿型の特徴として、以下の目安があります。
- 朝一番の尿の色が薄い
- 夜尿の臭いが少ない
- 昼間の水分摂取量が多い
- 昼間の排尿回数が少ない
2−2. 膀胱型の場合
膀胱型の特徴として、以下の目安があります。
- 昼間の尿失禁がある
- 昼間の尿失禁の治りが遅かった
- 昼間の排尿回数が多い
- おしっこの我慢ができない
- 朝一番の尿の色が濃い
2−3. どちらにも該当しない場合
実のところ、「多尿型」「膀胱型」「混合型」の他に、「正常型」というタイプも存在します。
尿の量も、膀胱の容量もほぼ一般的なで、正常に見えるにもかかわらず、夜尿をしてしまうタイプです。「それって大変なのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
正常型の大部分は、今までお話しした多尿型、膀胱型、混合型が改善し、もうすぐ治る、という状態になっているものです。
(引用:「夜尿症 -その正しい理解のために-」 赤司俊二 著)
なので、あまり心配せずに、焦らず経過を見るようにしましょう。
最後に
夜尿症の原因についてお分かりいただけていれば幸いです。
また、あなた自身で夜尿症のタイプを見分けるのは多少難しいかもしれないので、専門機関で問診・診断を受けてハッキリと夜尿症を理解することをおすすめします。
専門機関での治療の流れや治療薬の概要などをこちらのページ『【図解】夜尿症の原因から治療までの体系的知識』で総括しているので併せてご参考にしてください。