「なんとしてでも夜尿症を改善させたい」とお考えではないでしょうか?
しかし、願うだけでは何も変わりません。やはり、夜尿症の治し方の中で大事なのは、薬ではなく、自宅でコツコツと行動療法を行うことです。
そこで本日は、「夜尿症改善のための行動療法とはどういうものか」具体的に分かりやすくご紹介します。
Contents
1. 夜尿症治療の要|行動療法とは
夜尿症は薬だけの力で簡単に治るものではありません。
自宅で生活習慣の改善・訓練を行うことこそが最も大事だと報告されています。
どんなに専門的な病院を受診しても、生活指導をしないで治療した場合には、薬の効果は少ないとみてください。生活指導の重要性は、夜尿症の治療にとって約7割をしめていると思ってください。逆に、薬物療法の効果は3割程度ということになります。
(引用:『新おねしょなんかこわくない』帆足英一 著)
夜尿症治療のために病院を受診すると、「夜尿の頻度」「夜尿の1晩における回数」「昼間のお漏らしの有無」「生活習慣」「病歴」「両親の夜尿歴」などの問診や検査があります。
そしてその結果を元に、夜尿症のタイプ別に行動療法(生活指導、排尿訓練、排便習慣)の指示がなされます。
この行動療法を地道にコツコツと自宅で続けることが、夜尿症改善のためにとても重要なのです。
「具体的に何をどうするの?」と気になると思いますので、以下に分かりやすく解説していきます。
2. 行動療法7つの具体的例
とはいえ、やみくもに行動療法を行っても効率的ではありません。
夜尿症には3つのタイプがあるのですが、あなたの症状のタイプを判断し、適切な方法を実践することが大切です。
- 多尿型:何らかの原因により膀胱に容量以上の尿が貯まってしまって夜尿をしてしまいます。
- 膀胱型:尿量は通常なのですが、膀胱に貯められる尿の容量が少なく、尿が溢れて夜尿してしまいます。
- 混合型:上記の2つの原因が重なって、夜尿してしまいます。
あなたの症状がどのタイプか判断するには、こちらのページ『3つのタイプ別|夜尿症の原因と見分け方』をご参考にしてください。
それでは次に、タイプ別に有効とされる方法について詳しく紹介していきます。
2−1. 多尿型に有効とされる方法
まずは多尿型のための方法です。混合型の場合、多尿型と膀胱型のどちらの対策も実践するとよいです。
①水分摂取量のコントロール
夜尿症の専門医である帆足英一氏によると、1日の水分摂取量は以下のように設定し、出来るだけ日中に多めに水分を摂取し、夕方以降は控えることを推奨しています(摂取量は子供のケース)。
- 朝食:350~400c
- 昼食:350~400c
- 午後:100c
- 夕食:100c
飲み物だけでなく、食べ物の水分量もこの数値に含まれています。
「午後の水分摂取をここまで減らすだけで効果あるの?」と思われるかもしれませんが、治りが早くなると報告されています。
しかし、朝・昼にたくさん飲んで、夕方からの水分をひかえるといった水分摂取の日内リズムを意識すると、抗利尿ホルモンが夜間睡眠中にたくさん出るようになり、夜尿が早くなおっていきます。
(引用:『新おねしょなんかこわくない』帆足英一 著)
単純に水分量が少ないから夜尿にしにくくなるだけでなく、抗利尿ホルモン(尿の濃度を高めて量を減らすホルモン)の分泌が増えるようにもなると言われています。
もちろん、夕方以降のスポーツなどで汗を多くかく場合、その分失われた水分を補給する必要があります。
脱水症や熱中症にならない程度にコントロールしましょう。
②塩分・たんぱく質の過剰摂取に気をつける
さらに同時に、飲食物の塩分とたんぱく質の量を抑えることも大切です。
塩分とたんぱく質を摂取しすぎると、体内で薄めようとする働きで喉が乾き、体が水分を欲するようになるためです。具体的な内容を言うと、以下のようになります。
- 濃い味付けは禁止。薄味を心がける。
- 味噌汁やラーメンスープなどの塩分の多い汁物は控える。
- 牛乳は1日400mlまで。プロテインは量を調整して朝に摂取。
濃い味付けに慣れていた人が薄味生活をはじめると、「食事中に水を飲む量が減った」と自分の変化に驚かれると思います。
特に夕食の内容に意識して試してみてください。
③夕食の時間帯を早めにする
就寝の3~4時間前に夕食が摂れることを目指しましょう。
もし夕食の時間帯があまりに遅いと、食事の水分が夜間尿量を増やす原因になります。お米の7割は水分と言われますが、野菜にも多くの水分が含まれています。
レタスの水分ですが、95.9%となっています。もやし、ほうれん草、大根の水分も90%を越えます。トウモロコシは、75%くらいです。イモ類は、60から80%くらいです。
(引用:一般社団法人 日本植物生理学会HP)
このように考えると、食事から多くの水分を摂取していることに納得していただけると思います。
食事から摂取した水分を排尿してから就寝できるよう、夕食が遅くなりすぎないように1日の予定を組み立てましょう。
※塩分を控えて改善した例
「たったそれだけで夜尿が改善するの?」と疑われているかもしれません。
具体例として、夜尿症の専門医である赤司俊二氏が、膀胱容量は正常にもかかわらず夜間尿量が多い患児に対して、塩分の摂取を制限した例をご紹介します。
ほぼ毎日、起床前を中心に夜尿をしていた患児ですが、塩分の摂取を控えるという家庭での行動療法をコツコツと行い、4ヶ月後には夜尿が治っています。
もちろん、この患児の夜間多尿の原因に、塩分量が大きく関係していたからこその結果でもあります。根本的な原因をきちんと見極めるためにも、専門医に診てもらうことは重要です。
2−2. 膀胱型に有効とされる方法
膀胱の貯めが少ない場合は、膀胱容量を増やす訓練を行いましょう。
食事を管理するよりも成果を感じられるのに時間がかかりますが、コツコツと継続することが大切です。
④排尿我慢訓練
膀胱が未発達のために貯められる尿量が少ない場合、おしっこを我慢することで膀胱を大きくしていくトレーニングがあります。
具体的には以下のように行います。
- 自宅で時間に余裕がある時に水を200~400ml飲む。
- 尿意を感じてもすぐにトイレに行かない。
- ある程度我慢をしてから排尿をする。
- 排尿時、尿量を測り、膀胱容量をチェックする。
開始当初、我慢せずに排尿すると100mlも尿量がないと思いますが、徐々に尿量が増やせられるようにしましょう。子供の場合、以下の数値を目安にするよう言われています。
- 小学校1年生:150cc以上
- 小学校2年生:200cc以上
- 小学校3年生:250cc以上
大人の方は、250mlを目標にすると良いです。
くれぐれも成果を焦りすぎて我慢しすぎないようにしましょう。膀胱炎になる恐れがあります。コツコツと地道に努力しましょう。
⑤尿道・膀胱括約筋の強化トレーニング
また、尿の貯めが悪いと、日中に我慢がしきれずにちょっとした尿漏れをしてしまうことがあると思います。
そのような場合に有効とされる訓練に、尿道と膀胱括約筋のトレーニングがあります。
これらの筋肉が意識できていなかったり、衰えていると、尿が我慢しにくく漏らしやすくなります。
まず筋トレの前に、これらの筋肉を意識できるようになる必要があるのですが、その方法として排尿中に尿を止めることがあげられます。尿を意識的に止める動作をすることで「あ、この筋肉のことか」とお分かりいただけると思います。
そして、その筋肉を鍛える方法として、肛門を締める運動があります。肛門を締める動作をすることで、尿道と膀胱括約筋にも力が入ると思います。このトレーニングを1日10回を目安に行いましょう。
2−3. その他取りたい対策
その他、夜尿症の症状を少しでも和らげるためにおすすめの対策です。
⑥冷えへの対策
寒い時期になると夜尿の頻度が増えることはないでしょうか。冷えの影響で、尿量が増えたり、膀胱機能が不安定になることがあると報告されています。
もし夜尿の傾向に心当たりがある場合、防寒対策をしっかりと行い体を冷やさないように心がけましょう。また、炭酸入浴剤を入れた風呂への入浴が効果的とも報告されています。
入浴剤を用いるならば、炭酸浴剤(たとえば、花王のバブなど)が夜尿の頻度を約3割少なくすることがわかっています。
(引用:『新おねしょなんかこわくない』帆足英一 著)
お風呂で汗をかきすぎると喉が乾いてしまいます。入浴後に水をがぶ飲みしないように気をつけましょう。
⑦おねしょ対策グッズの活用
おねしょパンツ、防水シーツ、パッドなどの夜尿対策グッズを取り揃えるのも大切です。
夜尿してしまった後の事後処理でイライラしてしまったり、落ち込んでしまうのは精神的によくありません。
備えあれば憂いなし、です。以下のページで快適に使える防水シーツの選び方(素材、生地、防水範囲の違いなど)をご説明しているのであわせてご参考にしてください。
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最後に
以上、自宅で行うべき行動療法についてご理解いただけたと思います。
しかし、もしあなたが以下の2点に当てはまらない場合は、まずは医療機関を受診することをおすすめします。
- 夜尿症状が非常に軽度
- 夜尿症状のタイプを完全に把握している
症状が軽度でない場合は病気などが原因となっていることも考えられますし、症状のタイプを完全に把握していないと適切な行動療法を適度に行えるか不安だからです。
また、行動療法と併せて夜尿アラームや治療薬についても知りたいとお考えであれば、こちらのページ『【図解】夜尿症の原因から治療までの体系的知識』で総括しているので併せてご参考にしてください。