「羊毛(ウール)の掛け布団ってあんまり聞かないけどいいんだろうか」と疑問に感じてはいないでしょうか?
掛け布団といえば羽毛のイメージが強いかと思います。
が、羊毛の機能性も捨てたものではありません。いやむしろ、生活環境によっては羊毛の掛け布団がもっとも快適に感じられるケースがあります。
そこで本日は「羊毛(ウール)掛け布団の特徴とは、他素材との比較」についてご紹介いたします。
Contents
1. 羊毛掛け布団の寝心地・特徴を他素材と比較
まず最初に、羊毛布団が他の素材のものと比べてどうなのか、以下の5つのポイントで評価しました。
- 保温性(温かさ)
- 吸湿性(汗を吸い取る力)
- 放湿性(吸った汗の乾きやすさ)
- ドレープ性(体へのフィットのし易さ)
- 価格
素材 | 画像 | 保温性 | 吸湿性 | 放湿性 | ドレープ性 | 価格目安 |
羽毛 (ダウン) | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ | △ | |
羽根 (フェザー) | ◯ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | |
ポリ エステル | ◯ | △ | – | △ | ◎ | |
綿 (コットン) | ◯ | ◎ | △ | ◯ | ◯ | |
真綿 (絹/シルク) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | |
羊毛 (ウール) | ◯ | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
なお、この評価はそれぞれの素材の布団の中でも一般的なものの評価であり、品質の高いものであれば◯が◎になることもありますし、逆に低品質なものだと◯が△になることがあります。
それでは次に、これらのポイントについて他素材との比較をしながら解説していきます。
1−1. 羊毛掛け布団の保温性は万全ではないものの十分良し
◎◯△だけで評価しているため同じ◯同士の優劣が分かりにくいかと思います。
保温性についてランキング形式で表すと以下のようになります(もちろん品質や状態、羽毛・羽根ならダウン率により個体差はありますが)。
- 羽毛 > 羊毛 > 羽根 ≧ ポリエステル > 木綿 > 真綿
羊毛掛け布団は12月くらいの冬の始まりの時期であれば、問題なくあたたかくお使いいただけます。しかし、2月頃の寒さの厳しい真冬となると、やや保温性に物足りなさを感じられるかもしれません(羊毛は嵩高にやや欠けるため)。
もちろん、羊毛わたの充填量を多くすれば2月の寒さにも対応するくらいの掛け布団は作ろうと思えば作れますが、そうなると掛け布団にしては重くなり過ぎますし、値段もかなり高くなってしまいます(5kgを超えるような重さになってしまいます)。
そのような兼ね合いから、羊毛布団は真冬にはどうしても暖かさに若干欠けてしまうので、コットンフランネルなどの暖かな生地の布団カバーと組み合わせて使うことをおすすめします。
1−2. 羊毛掛け布団の吸湿性・放湿性はトップクラス
羊毛素材の良さはなんといってもその吸放湿性にあります。
綿の2倍、ポリエステルの40倍も優れると言われるその吸湿性は、まるで除湿機かのごとく布団内の湿気を取り除きます。人は蒸れずには眠れません。眠りを深めるために体温を下げなければいけないからです。そのために、寝汗を約200mlかくからです。
この約200mlの汗や蒸気として放出されている汗を羊毛が適切に吸い取るので、眠るときに正しく体温を下げることができて快適に深い眠りに落ちていけるのです。適切な温湿度環境で寝ると、自然にコロッと眠りに落ちていける感覚を味わうことができます。
しかも、放湿性が高いのでベタつきも羊毛の良いところです。
例えば、木綿布団だとこうはいきません。木綿もなかなかな吸湿性を持っていますが放湿性が悪く乾きにくいので、どうしてもしっとりした肌感になってしまいます。あまり快適ではありませんし、冬だと冷たく感じられます。これは木綿布団の大きな欠点でもあります。
1−3. ドレープ性はそこそこ良しだが扱いに気をつけること
羊毛掛け布団の体へのフィット感は特段良くもなければ悪くもないといったところです。
ただ、羊毛はダマになりやすいので取扱いに気をつけなければいけません。どういうことかと言うと、羊の毛はチリチリと縮れている特性(この縮れを専門的にはクリンプと呼びます)があるため、羊毛同士が擦れることがあるとお互いに絡み合ってしまいダマになってしまうのです。
大きなダマが増えてしまうとデコボコしてフィット感が悪くなってしまいます。寝心地が悪くなるのはいうまでもありません。
※羊毛と化繊(ポリエステル)がミックスされた布団について
羊毛50%ポリエステル50%というように羊毛と化繊がブレンドされた掛け布団もあります。
これはブレンド内容によってはおすすめできます。というのも、軽くてドレープ性の高いポリエステル素材とブレンドされているとなると、両者の性質をあわせ持つこととなるので吸放湿性がありつつふわっと体にフィットする寝心地になるからです。
コストダウンのためにミックスされているものは大方、側生地までポリエステルが使われています。このようなものはまずおすすめできません。というのも、側生地がポリエステルとなると、羊毛の長所である吸放湿性が殺されてしまうことになるからです。羊毛布団を選ぶのなら側生地に綿やレーヨン系などの吸水性・吸湿性のある素材が使われているものを選ぶようにしましょう。
※洗える羊毛と洗えない羊毛の違いについて
羊毛をズームアップして見てみると、その表面には魚のウロコのようなもの(専門的にはスケールと呼びます)が存在します。
このウロコが閉じたり開いたりして湿度を調整するのです。湿度が低いときはウロコが閉じたままで、湿度が高くなるとウロコが開いて湿気を発散するのです。この奇跡的な機能により、羊はあんなにたくさんの毛に覆われているにもかかわらず、涼しげな表情をしていられるのです。
ただ、このウロコがあることによって羊毛同士が絡みやすくなってしまうため、洗濯が出来ないというデメリットがあります。もうおわかりかと思いますが、洗濯可能な羊毛とはこのウロコがコーティングを塗られたり、溶剤で溶かされたりして滑らかに無くされているのです。どちらかがいいとは一概には言えません。あなた自身で「吸放湿性」と「洗濯性」を天秤にかけて判断するようにしましょう。
2. 羊毛掛け布団の取り扱いによくある疑問
羊毛は天然繊維だからこそ取扱いに注意が必要です。
2−1. 日々のお手入れはどうすれば良いのか
月に1,2度を目安に日陰干しをしましょう。羊毛は放湿性に優れているので手軽です。天日干しをすると側生地が傷んでしまうのでお控えください。どうしても日光が当たってしまう場合は、シーツやカバーなどの生地で覆って直射日光を避けましょう。
2−2. ダニは出やすいのか
湿気を逃しやすいため木綿布団ほどではありません。
しかし、動物性繊維ですし側生地も羽毛布団と異なり高密度織りでないため、お手入れを怠ってしまうとダニが発生してしまう恐れが大いにあります。こまめなお手入れは欠かさず行いましょう。
2−3. 洗濯はどうすれば良いのか
羊毛掛け布団は洗濯不可能なものがほとんどです。
クリーニングに出すようにしましょう。稀に羊毛布団を洗うことのできるコインランドリーがあるみたいなので、行きつけのお店が対応しているか確認してみるのも良いでしょう。あなたがお持ちの羊毛布団が洗えるかどうか品質表示の洗濯絵表示を確認ください。
旧絵表示 | 洗濯絵表示 | 洗濯方法 |
洗濯機で洗濯できる | 洗濯機で洗濯処理ができる |
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弱い洗濯機洗い | 洗濯機で弱い |
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洗濯機で非常に弱い | ||
弱い手洗い | 手洗いができる |
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洗濯不可 | 洗濯不可 |
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洗濯絵表示 | 乾燥方法 |
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2−4. 使わないときの収納・保管方法はどうすればいいのか
まずは収納前に羊毛掛け布団をしっかりと日陰干しして乾燥させます。そして、不織布袋に入れて保管しましょう(布団の購入時に入れてあるバッグのことです。通気性に優れています)。その際、防虫剤や乾燥剤を一緒に入れておけると安心です。
2−5. 打ち直しは出来るのか
ほとんどの布団屋さんは、羽毛もしくは木綿(コットン)の布団のみ打ち直し対応しています。とはいえ、かなり稀ですが、羊毛の打ち直しを行っている布団屋さんがあります。下記のページで値段を含めて紹介しているので参考にしてください。
関連記事2−6. 寿命は何年くらいか
寿命は5年前後です。どうしてもダマになったりなどの問題でそこまで長期的に使うことはできません。とはいえ、高品質な羽毛布団の寿命は10年前後ですが、それ以外の掛け布団の耐用年数は5年前後なので別段短いというわけでもありません。
最後に
羊毛の掛け布団がどんな寝心地なのか、他素材との比較でより深くご理解いただけていれば幸いです。
なお、以下のページで最高の掛け布団を選ぶために考えるべきポイント(素材の特徴、保温性、吸湿性、)とおすすめの掛け布団について解説しています。是非あわせてご参考にしてください。
関連記事
羽毛 > 羊毛 > 羽根 ≧ ポリエステル > 木綿 > 真綿
この根拠は何ですか?
シルクが最下位というのがあり得ないと思うのですが。
タカ様
コメントいただきありがとうございます。
一般論になってしまって恐縮ですが、
真綿は素材単位での保温性は他素材と比べて劣ることはないのですが、
高価な素材であるため充填量が少なめであることから、
布団単位としては保温性が他素材に比べて低くなりがちなため、
このような並びとなっています。
加賀照虎