洋服や寝具などを選んでいる時、やけに滑らかで触り心地の良いものを見つけ、ついついどんな素材が気になって品質表示を見たら、「指定外繊維(テンセル)」と記載されていて、「テンセルって何?」と思ったことはないでしょうか?
このような質問をよくいただくので、本日は「テンセル™(Tencel™)の素材感と特徴、そしてなぜ私どもが寝具製品にテンセル™を採用するのか」をご紹介します。
テンセル™の魅力を堪能すると共に、快適に眠れる寝具素材についてもご理解いただけます。
Contents
1. テンセル™の5つの素材感と特徴
テンセル™とは、ユーカリを主原料としたボタニカルな(植物性の)再生繊維で、オーストリアのレンチング社がテンセル™繊維の元(ステーブル)を世界中の紡績工場に提供し、テンセル™繊維は作られています。
誕生からまだ四半世紀ほどの新しい素材です。
素材 | イメージ | 柔らかさ | 滑らかさ | 吸湿性 | 放湿性 | 耐久性 | 洗濯性 | ||
天 然 繊 維 | 植 物 性 | 綿 (コットン) | ◯ | ◯ | ◎ | △ | ◯ | ◯ | |
麻 (リネン) | △ | △ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | |||
動 物 性 | 絹 (シルク) | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | △ | △ | ||
羊毛 (ウール) | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ | △ | △ | |||
化 学 繊 維 | 再 生 | レーヨン | ◎ | ◯ | ◎ | ◎ | △ | △ | |
合 成 | ポリ エステル | △ | ◯ | △ | – | ◯ | ◎ |
(再生繊維のためレーヨンと同じ分類になります)
①絹のような滑らかさ
テンセル™繊維の最大の特徴が、キメの細かい滑らかさです。
こちらの写真は、コットン繊維、ウール繊維、テンセル™繊維の拡大写真ですが、各繊維の表面の滑らかさが全く異なることが目で見てもハッキリと分かります。
テンセル™繊維を使った生地に触れれば、なめらかで柔らかな質感を実感していただけます。
②吸放湿性(モイスチャーコントロール)
また、吸放湿性の高さもテンセル™繊維の大きな特徴です。
他の繊維と比べるとテンセル™繊維がいかに水分を多く吸収できるかが分かります。高湿度の環境下でもテンセル™繊維の吸湿性は高く、コットンの約3倍、ウールの約2倍の吸湿量をほこります。
この抜群の吸湿性と素肌との相性の高さから、テンセル™はフェイスマスクの素材としても使われるほどです。
さらに、速乾性にも優れています。そのため、テンセル™を使った生地は汗の吸収が早く、その上、乾くのも早いため夏前後の汗ばむ季節にぴったりです。
③原料調達も製造方法もエコロジー
テンセル™は、計画植林されたユーカリの木を原料として使用しています。ユーカリは成長が早く栽培に水を大量に必要としないため、とてもエコロジーです。
また、製造工程で使われる溶剤も安全性が高いものですが、その溶剤もほぼ完全に(99.5~99.8%)リサイクルされています。
これらの環境への配慮が称され、2000年にレンチング社は欧州環境賞を受賞しています。
④優れた強度
テンセル™は、シルクのような滑らかな心地よさを持つと同時に、強度にも優れています。
しかも、乾燥時だけでなく、濡れた環境下でもその強度は変わらず高いままです。
そのため、上品な艶やかさと柔らかさを堪能しつつも、気後れすること無く普段使いをできるのが、テンセル™素材の素晴らしい点です。
⑤洗濯・乾燥などのお手入れ方法
テンセル™繊維の欠点といえば、水に濡れたときの摩擦に若干弱いことです。
濡れている状態で摩擦されると毛羽立ちやすく、テンセル™生地の美しい光沢感が霞んでしまいます。
なので、手洗いがベストですが、洗濯機洗いをするのなら、
- 洗濯ネットに入れて洗う
- 水流を弱め、洗濯時間を短めに設定する
- シワを伸ばしながら日陰で吊り干しをする
ことをおすすめします。
このようにしっかりとケアしながらご使用いただけば、滑らかで美しいままテンセル™製品をより長くお使いいただけます。
なお、テンセル™️の新しいプロモーション動画が公開されたので、よければご覧になってみてください。とても美しい仕上がりです。
2. 私どもが寝具素材に採用する3つの理由
私どももマットレスや枕の側生地、シーツ、カバーなどの素材として採用しているテンセル™。ここではなぜ寝具素材に相応しいのか、もう一歩踏み込んだ内容をご紹介いたします。
①素肌(特に顔)への刺激を抑えるため
眠る時に寝具の生地がガサガサとした摩擦感のある肌触りだと、心地よく眠れません。
シルクのように滑らかなテンセル™で織り上げた生地は低刺激で、肌への馴染みやすさが抜群です。
肌が敏感な人にとっては、寝具素材に無くてはならないポイントだと思います。
②寝汗を素早くたっぶり吸収するため
ヒトの眠りのメカニズムを紐解くと、睡眠中により脳機能を休息させ回復させるために、体温を1.5℃も下げることが知られています。
睡眠中の体温がスムーズに低下するために、コップ一杯分(約200ml)もの汗をかきます。
そのため、テンセル™繊維のような吸放湿性に優れた素材の寝具だと、熱発散が滞りなく進み快眠できるのです。
③衛生面に優れるため
また、優れた吸湿性のため細菌が増殖しにくい点も、寝具素材として喜ばしいです。レンチング社の公式ページによると、
テンセル™で細菌の増殖が大きく減ることは試験でも実証されています。一方合成繊維の場合は、同じ条件で細菌が最大で2,000倍も増えることが明らかになっています。
寝汗による湿り気でただでさえ雑菌の繁殖が気になる睡眠環境なので、衛生性の高さは大きな評価ポイントです。
もちろん、テンセル™に頼りっきりではダメで、寝室と寝具のこまめな換気は必要です。
繊維の領域を超えたテンセル™の衛生性
レンチング社の研究開発によりテンセル™を繊維ではなく粉にし、テンセルパウダー®として他の素材にテンセル™のボタニックな特徴を組み込む施策も進められています。
その一つに、テンセルパウダー®を分子の段階でポリウレタンフォームに結合させたセルプール®があります。
このウレタンを使用したマットレスは、既存のマットレスを遥かに凌駕する衛生性が実現されています。レンチング社の公式ページによると、
マットレス(テンセル™パウダーを配合したポリウレタンフォーム)で行われた実験では、置かれたダニの大部分が死滅したことが確認されました。一方従来の製品では、ダニは6週間で17倍に増加しました。テンセル™の水分調整力が、ダニの数を大幅に減少させたのです。
薬品を一切使用することなく、吸放湿性の力でダニを退治できるのです。
亜熱帯化している日本の寝具環境では、ダニに悩まされる人はとても多くいます。
セルプール®ウレタン(詳細はこちら)のようなテンセル™の備わった寝具は、ただ快適なだけでなく衛生的な眠りを求める人にぴったりです。
まとめ
シルクのように滑らかで、ウール・コットンよりも吸水性が良く、なおかつ衛生性にも優れているエコな素材、テンセル™。
是非あなたの寝具・洋服にテンセル™素材を使用したものを取り入れ、素肌が喜ぶかのような使用感を堪能してください。