介護をしている親の体に褥創(床ずれ)を発見した時、「何が原因で褥創が発生してしまったんだろう」と心配になると思います。
褥創の対策には原因を取り除くことも大切です。そのためには、原因を突きとめることが先決です。
そこで本日は「褥創の原因とメカニズム」についてご紹介します。
Contents
1. 褥創の最大原因と発生メカニズム
褥創の最大の原因は「外力」です。
そして、外力が褥創を発生させるメカニズムは以下の通りです。
– 外力(圧迫とズレ力)を受けた体の接地面の部位(主に腰やお尻など)の血行が悪くなり、その周辺の皮膚組織が死んで(壊死)いき深い褥創となる。
栄養不足や過度の湿潤&乾燥などは二次的要因です。外力こそが褥創の最大の(根本的な)原因です。
1−1. 外力(圧迫とズレ力)が生じる具体例
それでは次に、褥創の一次的な原因となる外力について、より具体的にご説明していきます。
外力(圧迫とズレ力)の具体例としては、以下の6つが代表的です。
- ベッドで寝たきり
- 寝返りが出来ない
- 長時間の車椅子生活
- 体圧分散性の悪いマットレス
- 電動ベッドの操作時
- 杜撰な介護
1〜4の要因については分かりやすいと思います。寝たきりや座りっぱなしの状態、その上、寝返りが出来ないと体の同じ部位に圧力がかかり続けることになります。また、体圧分散性の悪いマットレスや布団だと、圧迫が強まります。
マットレスの詳細はこちらのページ『エアマットは褥創(床ずれ)予防に不向き?各マットレスの比較』をご参考にしてください。
5〜6はズレ力を起こす要因です。電動ベッドを動かす時、被介護者の体位変換をする時、衣服を脱着させる時など皮膚にズレ力がかからないよう気をつけましょう。
1−2. 褥創の発生&進行を促す二次的原因
一次的な原因ではないにしても、以下の要素があると褥創の発生&進行を促してしまいます。
- 栄養不足
- 過度の湿潤状態
- むくみ(浮腫)
- 不衛生状態(ステージⅡ以降)
それぞれ個別にご説明していきます。
①栄養不足
栄養不足だと以下の理由のため褥創を悪化させてしまいます。
- 皮膚組織が弱りやすい
- 弱った皮膚が回復しにくい
- むくみ(浮腫)の遠因となる
- 免疫力が低下し感染リスクが高まる
そのため、食事による栄養補給はとても大切なのですが、具体的には以下の栄養素が必要とされています。
蛋白質とカロリー補給に加え、抗酸化作用のある亜鉛、アスコルビン酸、アルギニン、L-カルノシン、n-3系脂肪酸、コラーゲン加水分解物なども疾病を考慮した上で摂取する。
(引用:「褥瘡予防・治療ガイドブック」 一般社団法人 日本褥瘡学会 編集)
他にもビタミンや脂肪分も必要です。しかし例えば、腎臓に疾病があり負担をかけてはならない場合、タンパク質の摂取が過剰にならないように気をつけるなどの配慮は必要です。
②過度の湿潤状態
皮膚が湿潤状態だとズレによりかかる力が増大しますし、雑菌が繁殖しやすくなります。
- 被介護者が多汗な体質
- 寝具・パジャマがムレやすい
- 尿・便失禁のケアが疎か
具体的にこのような状態だと、褥創を発生&悪化させやすくなります。
寝具の見直しとこまめなスキンケアが大切です。
③むくみ(浮腫)
体がむくんでいる状態だと外圧に弱くなるだけでなく、そもそも血流が悪くなっている状態なので褥創を起こしやすくなります。
栄養不足、様々な疾患、薬理作用などがむくみに繋がります。
その中でも、「疾病→入院→寝たきり・むくみ→褥創」という流れは、褥創発生によく見られます。
具体的には糖尿病は血行障害を併発しやすいことから、褥創リスクの高い疾患として考えられています。
④不衛生状態(ステージⅡ以降)
過剰な滲出液や失禁などにより褥創周辺部が不衛生だと、雑菌・真菌が繁殖しやすくなり感染による悪化リスクが高まります。
毎日の体の清拭、褥創の洗浄、カバードレッシング材での外部汚染からの保護などを怠らないようにしましょう。
まとめ
褥創の原因についておさらいすると、
褥創の直接的な発生原因は、外力(圧迫とズレ力) であり、
褥創の二次的な発生&抑制原因は、栄養不足、過度の湿潤状態、むくみ(浮腫)、不衛生状態の4つです。
あなたの介護生活の一助になれれば幸いです。
また、こちらのページ『褥瘡(床ずれ)とは?分類、原因、予防法、よくある疑問と禁忌』で褥瘡に関して総括しているので併せてご参考にしてください。