悪い姿勢、加齢、運動での損傷など、頚椎を痛める原因は多くあります。
見過ごされがちですが、使用中の枕も大きな原因になります。
むしろ、首に優しい枕を使うことで、眠りながら症状の改善を期待することも可能です。
そこで本日は、「頚椎を悪くする枕に共通する3つの要素」と「不適切な枕の改良法」をご紹介します。
現状、眠りながら首を痛めている方でも、眠りながら首をケアできるようになります。
Contents
1. 枕で頚椎を悪くすると起こる症状
頚椎(ケイツイ)とは、とても大事な骨です。
頭を支え、動かすと同時に、ヒトが活動する上で大切な神経の保護も担っています。
重い頭を支え、その運動を担う役目に加え、生命維持に欠かせない働きをしている脳幹の下部や、手の複雑な働きをコントロールする脊髄を保護する役目も果たしている。
(引用:『腰痛、肩こり、手足のしびれ 「背骨」がかかわる症状の診断・治療ガイドブック』 伊藤達雄・戸山芳昭監修)
猫背などの悪い姿勢や、運動による損傷、加齢変化、また不適切な枕の使用でも、頚椎の形状を損なったり、圧迫してしまったり、損傷させてしまいます。
この生命維持にとても大切な神経を通す頚椎を悪くしてしまうと、以下のような症状が起こります。
- 首や肩が凝る
- 首や肩、背中が張るように痛い
- 頭痛
- 手のしびれ
- 手指が思うように動かしづらい(※重度の症状です。思い当たる節があれば、早急に整形外科を受診してください)
症状は首や肩の凝りでは収まりません。頚椎の内部に神経が通っているために、症状が全身に広がることがあります。
つまり、首は絶対に大切に扱わなければいけないのです。
日中、良い姿勢を保つことは非常に大切です。睡眠時間は6~7時間と長いです。眠っている間も極力、首に負担をかけてはいけません。
もしあなたが2章で紹介するような枕を使っていたら、早急に対策が必要です。
2. 頚椎を悪くする枕に共通する3の要素
たった3つのポイントですが、最も大事な点です。あなたが使用中の枕に違和感を持っているようであれば、共通する点があるはずです。
①枕の中材が硬すぎる
最も問題となる点が、枕の硬さです。
なぜなら、枕が硬すぎると、頚椎や内部の神経が圧迫されるからです。
頚椎が一晩中、約6kgの重い頭と硬い枕に挟まれることを想像すると負担がとても大きいことが分かると思います。
そのため、以下のような硬い素材を使用した枕を使っている方は注意が必要です。
ポリエチレンパイプ
パイプの素材によって硬さが変わります。ソフトパイプは触ってみると、とても柔らかく感じると思います。しかし、ソフトタイプでも枕として使ってみると、意外と首元に圧迫を感じます。パイプという形状のため全てのパイプが首に対して弾性のある向きにならないためです。
そば殻
硬い枕の素材の代表格でもあるそば殻です。ゴリゴリとした硬さが好みの方もいらっしゃると思いますが、中材の量が必要以上に多いと、硬すぎる使用感になってしまいます。また他にも、木のチップなども同じく硬すぎることがあるので、頚椎に不調を感じる方にはあまりおすすめできません。
フェザー(羽根)
フェザー素材に柔らかいイメージを持たれている方もいるかと思いますが、フェザーを「骨付きの羽根」と認識すると硬いものだと想像しやすいと思います。
また、フェザーの比率が多い羽根枕は後頭部・首へのフィット感が若干欠けることもあり、これにより頚椎へのサポート性が悪くなることがあります。それでももしあなたが羽根素材が好みであれば、ダウン80%フェザー20%くらいの比率の羽毛枕で寝られることをおすすめします。
②高すぎる・低すぎる
2つ目に重要な問題が枕の高さです。
枕が高すぎる場合も低すぎる場合も同様に、頚椎の自然な形状が損なわれるために好ましくありません。
枕が高すぎると頚椎の形状を損なう
高い枕で寝ることが習慣になっていると気付きにくいのですが、寝姿勢を横から見ると、このようになっているのです。
頚椎のカタチが自然な形状とは程遠いと分かると思います。
この姿勢を一晩中続けていると考えると、たかが枕の高さと言えど、頚椎の形状を損ない、神経にまで悪影響を及ぼす可能性があるとご理解いただけると思います。
枕が低すぎると頚椎へのサポートが不十分になることも
低すぎる枕も同様です。頚椎の形状が不自然になります。
さらに、枕と首の間にスキマが生まれやすくなります。
このスキマは「サポートがない」ということを意味します。
言葉を変えるとブリッジ状態になっています。
そのため、サポートがない部位を支えるために他の部位にとてもつもない負担がかかります。これにより脊椎に大きな負担がかかり痛めることになります。
③頭が寝返られない
首や頭の位置を固定し過ぎる枕は、眠っている間、無意識的に頭が寝返られないために頚椎に悪い影響を与えることがあります。
つまり、頚椎がいくら良い形状を保っていられる枕だとしても、一晩中、同じ部位に負担がかかると圧迫感が生まれます。
例えば、至極の座り心地の高級シートに座っていても、1時間に数回はお尻の位置を変えたりし、座り直したりすると思います。たとえ座り心地が抜群に良くても、7時間も同じ姿勢で座っていたら、お尻の筋が痛くなり、最悪骨までも痛めることになります。
寝姿勢も同じなのです。このため、頭が寝返られないと頚椎を痛める可能性がある、ということなのです。
3. 不適切な枕の改良法
もしあなたが上記のような枕を使っている場合のために、すぐにできる枕の改良法をご紹介します。
硬すぎる枕には柔らかいタオルを敷く
枕が硬すぎる場合の改良法は、「柔らかいタオルを枕の上に敷く」ことです。弾性に優れた枕のような優しいサポート感はありませんが、ある程度の改善ができます。
注意点は、枕が高くなりすぎないことです。タオルを敷く分、枕が高くなります。枕内部の詰め物を取り出して、高さを調整しましょう(適切な高さに関しては後述)。
高すぎる・低すぎる枕は適切な高さに調整をする
体格などの個体差により適切な高さが変わるため、絶対的に正しい枕の高さというものは存在しません。 そのため、枕の高さ・低さが適切かどうか判断するときは、寝転んだときの「肩口から頭の傾斜と顔面の傾き」を参考にします。
枕の正しい高さとは
理想的な寝姿勢では、以下のようになります。
- 「肩口から頭が10~15度の傾斜」
この角度だと、頸椎の自然なカーブ形状を保つことができます。そのため、肩と首の筋を強張らせることなくリラックスしたまま快適に眠ることができます。 - 「顔面が0~5度の傾き」
顔が若干うつ向く程度(5度)傾いていると、気道の通りが最も良くなり、睡眠中の呼吸がとてもラクになります。しかし太り気味だったりアゴの下に脂肪がついている場合は、顔が床と水平(0度)の方が呼吸がしやすく眠りやすい、との報告があります。なので0~5度であなたが眠りやすい傾斜を見つけましょう。
※理想的な寝姿勢がとれているかのチェック方法 ①小指を喉元に、人差し指をアゴの下にあてます。人差し指が小指より指1本分高い位置にあると、「肩口から頭の傾斜」が15度前後になっています。②仰向け時の目線が、真上よりも若干足元に向かっていれば、顔の傾きが5度前後になっています。 |
この姿勢で寝ていただければ、頚椎が自然な形状のまま眠れます。枕が高すぎたり、低すぎたりしてこのような姿勢がとれない場合は以下のように改良しましょう。
高すぎる枕への改良法
あなたの枕の中材が取り出せる場合、中材を少しづつ取り出して調整しましょう。
中身が取り出せない構造の枕の場合は、イラストのようにあなたの体の下にタオルを敷くなりして枕を相対的に低くする方法もあります。
とはいえ、寝返りがしにくくなることもあるので、できれば枕を買い換えることをおすすめします。
低すぎる枕への改良法
枕の中材が別途単品で販売されている場合、取り寄せてあなた自身で中材の量を調整して枕を高くしてみましょう。
これができない場合は、枕の上下どちらかにタオルを敷くなどして、高さを調整しましょう。
頭が寝返られない枕は買い換える
とても大変です。
例えば、高反発ウレタンフォーム素材で形成された枕であれば、頭の寝返りの邪魔になる凸の部分をカットすることもできますが、失敗する可能性があり寝心地が余計に悪くなることもあるので、あまりオススメできません。
このような場合は、買い換えることをオススメします。
まとめ
頚椎を悪くしてしまう枕に共通するポイントを振り返ると、
- 枕が硬すぎること
- 枕が高すぎる・低すぎること
- 頭が寝返られないこと
これら3点です。これらのポイントを押さえた上で、あなた好みの素材の枕を選べられれば、快眠一直線です。また、以下のページで13種類の枕素材の比較とおすすめの枕を紹介しているのであわせて参考にしてみてください。
関連記事なお、枕に関するページを以下にまとめましたので、気になるトピックがあればあわせてご参考にしてください。
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