睡眠

高齢者の睡眠の特徴は?良くするための6つのコツ

  • 眠ろうとしてもすぐに眠りに入れない
  • お天道様より早く起きるようになった

これらは高齢者の睡眠によくある特徴です。高齢者の睡眠とはそういうものです。しかし、そういうものだと言われたって、ぐっすり眠りたいですよね。若い頃のように寝坊するくらいとまではいかなくても、スッと眠りに入って朝まで眠りたいと思います。

そこで本日は「高齢者の睡眠の特徴、良くするための6つのコツ」についてご紹介します。

※睡眠の質を上げるための方法をこちらのページ「睡眠の質を高めるための方法(総まとめ編)」でまとめています。ぜひあわせて参考にしてください。
著者情報
加賀 照虎

加賀照虎(上級睡眠健康指導士)

上級睡眠健康指導士(第235号)。2,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を発信中。NHK「あさイチ」にてストレートネックを治す方法を紹介。
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1. 高齢者の睡眠4つの特徴

まずは歳を重ねることで睡眠にどのような変化が起こるか知り、ご自身の体がどのように変わっていっているのかを知りましょう。

1−1. 高齢者の睡眠は浅くなる

加齢にともなって睡眠は浅くなっていきます。

子供と成人、高齢者の「一夜の睡眠の深さの変化と経過グラフ」を比較したチャートをご覧ください。

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一夜の睡眠の深さの変化と経過(子供・成人・高齢者)

いわゆる深い睡眠(ノンレム睡眠の第3~4段階)とレム睡眠が、子供、成人、高齢者となるにしたがってどんどん減っていっているのが分かると思います。これは睡眠が浅くなっていることを表しています。

そして、高齢者の睡眠には多くの分断があります。これは睡眠が浅いために、夜間・早朝に目覚めることを表しています。全ての人に当てはまる訳ではありませんが、睡眠が浅くなることとそれによる夜間・早朝の目覚めは高齢者の眠りのもっとも代表的な特徴です。

1−2. 高齢者の睡眠時間は短くなる

人の睡眠時間は加齢により短くなります。

生まれたときの睡眠時間が最長でそれからどんどん短くなっていき、年齢が70歳にもなると平均睡眠時間が6時間を切るほどにまで短くなります。

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人の睡眠時間は加齢により短くなる

これは自然の摂理のようなものです。

脳と体にとって必要な睡眠時間が減っていているのです。私は現在31歳ですが、どう頑張っても1時間の昼寝と12時間の夜間の睡眠を取ることは出来ません。年相応の睡眠時間があるのです(もちろんその質を高めるための方法はあるので2章をご覧ください)。

1−3. 高齢者は早寝早起きになりがち(睡眠相前進)

睡眠が浅くなることと睡眠時間が短くなることが相まって、高齢者は早寝早起きになりがちです。

生活リズムが前進していくのもある程度は自然なことです。しかし、人によっては極端な早寝早起きになってしまうことがあります。人付き合いなどに困難が生じるほどだと睡眠相前進症候群という睡眠障害とされます。

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高齢者の睡眠相は前進しがち

もちろん、生活リズムの前進についても簡単に対策をすることが出来ます。生活に支障が出ているのなら改善していきましょう。

1−4. 高齢者は夜間頻尿になりやすい

歳を重ねると内臓機能の低下と抗利尿ホルモンの分泌量の低下により夜間頻尿になります。これも自然の摂理でして、データによると70代以上の高齢者はほぼ半数の人が1晩に2度以上トイレに行くと報告されています。

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夜間にトイレに行く回数(年齢・男女別)
  • せっかく眠っていたのに尿意に眠りから起こされた
  • トイレに行っている内に目が覚めてしまった
  • 夜間暗いなかトイレに行くと足元が危ない

などなど夜間頻尿も自然なこととはいえ極力抑えたいですよね。夜間頻尿については2−6で詳しく対策を説明します。


2. 高齢者の睡眠を良くするための6つの習慣

残念ながら1章でご紹介したような「高齢化による睡眠の変化」は避けられません。まずはそのことを受け止めなければなりません。

とはいえ、高齢者の中にもスッと眠りに入れて、しかも、ぐっすり朝まで眠れる人がいることも事実です。そのような高齢者は活動的で生活にメリハリがあったり、自然と睡眠に良い生活習慣を行っているものです。そこで、年配の方でも簡単に実践できる睡眠を良くするための習慣についてご紹介していきます。

2−1. あなたの睡眠と他者・平均・理想の睡眠を比べない

我々日本人、なにごとも他と比べてしまいがちです。

しかし他との比較が良い結果をもたらすかは疑問です。少なくとも睡眠においては他との比較は不要です。悪影響があるからです。 私ども睡眠健康指導士のみならず医療・保健現場に従事されている方がよりどころにしている「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」のなかに「睡眠障害対処12の指針」というものがあるのですが、その第一指針が「睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分」なのです。

歳によっても、人によっても、はたまた季節によっても睡眠は変わります。まずは比較をやめるところからスタートしましょう。

2−2. 長時間の昼寝・夕寝をしない

長時間昼寝をしたり夕方に仮眠を取ると、寝付きが悪くしたり夜間の睡眠が浅くなる原因になります。

専門的には昼寝により「睡眠圧が下がってしまう」と言います。睡眠圧とは起きている時間が長いほど、その後の眠りが深くなることを圧力にたとえた現象です。仮眠は下記2点を守って行いましょう。

  1. 仮眠は20分以内にする。
  2. 就寝の9時間前までに仮眠を済ます。

仮眠が20分以上になると疲れを取りすぎてしまったり、眠りが深くなっていって起きにくくなります。また、夕方などのように就寝の数時間前に仮眠をすると睡眠圧が下がってしまい夜寝つきにくくなります。睡眠は夜間がメインです。昼寝・仮眠はあくまで補充にしましょう。なお、適度な仮眠は認知症のリスクを下げると言われています。生活に上手く仮眠を取り入れてみましょう。

また、適度な仮眠は認知症のリスクを五分の一に下げますが、一時間を大きく超えるような昼寝は、逆に認知症のリスクを倍にすることがわかっています。

(引用:『ぐっすり眠れる3つの習慣』 田中 秀樹 著)

2−3. 早朝に目覚めたら光を浴びないようにする

起床時刻が早すぎると就寝時刻を早めてしまい、就寝時刻が早いと起床時刻が早まってしまう、、、という睡眠層が前進していく負のサイクルがあります。

朝早すぎる時刻に目が覚めてしまったら、外に出ずにカーテンを閉めたまま部屋にいるようにしましょう。

というのも、朝浴びた光が夜眠るためのホルモンに影響しているからです。流れを簡単に説明すると、「トリプトファン(食事から摂取している)」→「朝光を浴びる」→「日中にトリプトファンがセロトニンを産生する」→「夜間にセロトニンがメラトニンを合成する」となっています。

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午前に浴びた光が夜間に睡眠ホルモン「メラトニン」に変わる

ここでポイントとなるのが光を浴びてからメラトニンが合成されるまでの時間です。一般的に朝光を浴びてから14~16時間後にメラトニンの分泌量が増えてきます。そのためもし、深夜3時に目が覚めてしまい部屋を明るくして1日をスタートさせ早朝5時ごろには散歩に出かける、なんて生活をされているとするとメラトニンが合成される時刻は18~21時頃になってしまいます。

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朝に光を浴びてから14~16時間後に体内のメラトニンの分泌量が増える

そのため、早朝はなるべく部屋を明るくしない、散歩に行くならサングラスをかけるなどの対策をしましょう。そうすることでメラトニンが合成される時刻を遅らせられます。その結果、就寝時刻が早まることを防ぎ、過度な早寝早起きを少しずつ改善させることが期待できます。

2−4. 日中は光を積極的に浴びる

早朝とは逆に日中は積極的に光を浴びるようにしましょう。そうすることで睡眠ホルモン「メラトニン」がしっかり合成されるので夜間にぐっすり眠ることが期待できます。

私が学会で江戸川大学の福田教授から聞いたところでは、ある老人ホームでは夜中になるとおじいちゃんおばあちゃんが「眠れない」「夜中に目が覚めた」とウロウロ徘徊することがずっと問題になっていたそうな。日中の運動量が少ないご老人だと眠りが短く浅くなるのでしょうがない部分もあるのですが、福田教授が目をつけたのが光。光環境を整えてご老人たちの眠りを改善しようと取り組みました。具体的には、日中にご老人が集まるスペースの屋根をガラス張りにしたり鏡を置いたりして採光量を増やしたのですが、かなり効き目があったようで夜になるとご老人が皆さんバタバタと眠るようになったそうです。

また、もしあなたが過度な早寝早起きに悩んでいるのなら夕方に積極的に光を浴びることをおすすめします。そうすることでメラトニンが合成されるタイミングを遅らせることが出来るので早すぎる時刻に眠くなる対策になります。

2−5. 運動を日課にする

高齢者が運動を生活に取り入れると睡眠の質がかなり改善されることが報告されています。

不眠で悩む高齢者を対象に、昼食後の30分の昼寝および夕方(体温の最高期)の軽運動(福寿運動)の習慣づけ指導(睡眠健康教室)を4週間、週3回、短期集中的に行うと、覚醒の質が向上し、夕方から就床前にかけての居眠りの減少がみられ、夜間睡眠や精神健康や脳機能が改善することが報告されている。また、睡眠改善に伴い、日中の覚醒度や注意力、柔軟性やバランス感覚、脚筋力も改善していた。

(引用:『睡眠からみた認知症診療ハンドブック』 宮崎総一郎 浦上 克哉 編集)

夜間の眠りの質や日中の覚醒度が高まるだけにとどまらず、注意力、柔軟性、筋力が向上したことで生活の質まで高まったとのことです。かなりの効果です。

なお、一日の生体リズム(概日リズム・サーカディアンリズム)の内、深部体温がもっとも高くなるとされる夕方に運動を行うと体への負担が少なく効果的とされています。そのため、上記の実験も夕方に行われています。

過度な早寝早起きにお悩みなら夕方に早歩きで散歩してみると良いですね。

2−6. 飲食を正しく制限する

飲食習慣を見直すだけで睡眠の質を改善できるケースもあります。下記の点、実践してみてください。

  • 寝酒は極力控える
    アルコールの作用により寝入りやすくなりますが、睡眠が浅くなるので控えるようにしましょう。また、アルコールには利尿作用があるので夜間頻尿にお悩みの方はなおのこと控えることをおすすめします。
  • カフェインは夕方以降摂取しない
    カフェインは覚醒作用があるため寝入りに悪影響を及ぼします。人によっては6時間も作用し続けるので夕方以降の摂取は控えることをおすすめします。なお、カフェインはコーヒーだけでなくお茶やココアなどにも含まれているので気をつけましょう。
  • 塩分は少なめを心掛ける
    体内の塩分濃度が高くなることでそれを中和しようと水分摂取量が増えてしまい、結果的に排尿が多くなります。健康のために減塩生活をおすすめします。

なお、夜間頻尿対策のために水分摂取量を少なめにされる方がいらっしゃいますが、水分不足にはならないよう気をつけましょう。特に夏場に水分不足だと熱中症になる危険があるので水分摂取量を調整されるならほどほどにしましょう。


最後に

繰り返しになりますが、加齢による睡眠の質の低下は避けられません。

理想を追い求めすぎない範囲であなたが出来ることをこなしていくようにしましょう。ご紹介の内容で、将来、あなたが「過去の自分と比較してよく眠れるようになった!」と思っていただければ幸いです。

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